なまいきと書かれた通信簿うわの空の国へ行けっていわれた 盛田志保子
そんな直截的なこと「通信簿」に書くかなと前半を読むと思うが、「なまいき」は直截的というよりも悪口で、なおのこと「通信簿」にはふさわしくないフレーズだ。筆が滑ったのだろうか。後半を読むと、そういや、ときどき先生というのは、うまいこと言ってる風でまったく意味不明な思いつきで叱ってきたなと思い出す。「そんなに○○なら、○○の国へ行け」っていう叱り方の定型があったような気もするが、「うわの空の国へ行け」って微妙に日本語になっていない。でも、先生の意図と無関係に「うわの空の国」ってなんかよさげな感じがして、行けるものなら行ってみたい。「うわの空」かつ「なまいき」って子はそんなにいないと思うが、叱られているのに「「うわの空の国」イイ!」みたいな顔をしているようなぼんやりさんだったら「なまいき」ととられるかもしれない。きっと、この歌は許しの歌だ。正しさを教えながら、うかつで、感情的で誤りだらけの大人たちを許しながら、「うわの空の国」で「なまいき」によろしくやっていくのだ。
(盛田志保子『木曜日』BookPark、2003年)

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