「『AMラジオが消える』のだとしたら、どうなる?」
メディアの話
facebookでシェアした話題についてのやりとりをするうち、こっちにも書きたくなってしまった(苦笑)。
「
ニッポン放送、FM活用検討 AMの難聴対策」
(朝日新聞 2013年3月12日20時42分)
私も1970〜80年代にAM(地元静岡のDJ番組や、ニッポン放送の「オールナイトニッポン」とか)を学生時代に聴いていた(そんなに熱心なリスナーではなかったが)世代なので、あのAMの音の質感が過去のものになると思うと寂しい気がしますね(ただ、東京都心はともかく、中野の拙宅あたりでは、むしろかつてのアナログテレビより受信状況は良かったんだけどな……)。
そういえば昨日(13日)付の朝日新聞の「記者有論」で、隈元信一さん(メディフェスの常連で、昨年の「くびき野」にもお見えになっていました)が「
AMラジオ 大都市圏のFM化を急げ」という記事を書かれていましたね(←もっともネットでは会員以外は記事冒頭しか読めませんが - -)。
隈元さんも、防災のことを考えるとFM化したほうがいい、携帯でも聴けるじゃないかとの主張。ただ一方で、民放ラジオが業界ぐるみで目指してきたデジタルラジオが結局破綻しつつある情勢に戸惑いを覚えるとしつつ、今後の各局がとるべき選択肢を提示しながら、
「どれを選んでも、総務省やキー局に頼らず、各局が自分の頭で判断するのは当然だ。『最後の護送船団』とまで言われた放送界が変わるなら、デジタル化を追求した十数年も無駄にはならないだろう」と、皮肉をまじえた提言で結んでいます。ちなみに、隈元さんが「戸惑いを覚える」と言っているのはこの話↓
「
ラジオ:デジタル化は個別に推進 民放連、統一行動を断念」
(毎日新聞 2013年03月12日02時30分)
もっとも、FBでも指摘していただいたのだけど、FM化によって都市部は受信状況が良くなるとして、逆に少し離れた郊外で受信しにくくなるという問題もあると思います。
というのは、以前に私もここ↓にこういう記事を書いたことがあるんですけど、
「
北海道で民放FM『違法中継(電波法違反)』による逮捕者が」
(『元祖岩本太郎ブログ』2008年3月9日付)
広大な北海道ともなると、民放局が自らの金で各地に中継局を建てて、カバーエリアを広げるのも大変である。ましてやテレビ局と兼営のAM局はともかく、単営のFM局にとっては経営的に大きな負担で、確か上の記事を書いた時点で「FMノースウェーブ」あたりの道内カバー率は8割弱だった。
(ただ、その後にテレビ東京系のテレビ北海道が道東に中継局を開局するなど、同局のカバー率は何とか9割台に乗ったらしい←と、ブログをお読みいただいた方から一昨年秋に情報提供いただいた。もっともラジオはというと「FMノースウェーブ」も経営難の影響で開局翌年に予定されていた道東での送信所や中継局の開局が遅れるなど、やっぱりこの辺は民間放送局の限界を露呈している模様)
とりわけ、札幌から数百キロ離れた道東や道北は深刻だ。
上の記事に書いた中標津町はその後、独自のコミュニティ局「
FMはな」を開局している。同町はかつて十勝沖地震で交通や放送などのインフラが途絶して孤立した苦い経験がある。また一方、近年では某大企業の工場が移転してきたため首都圏からの移住者も増え(町内の根室中標津空港には羽田からの直行便もある)、「FM局ぐらいないんですか?」という住民からのニーズも高まっていた。
というか、先日も道東の猛吹雪により車で外出中だった人たちが亡くなるとの惨事があったばかりではないか!
よく「北海道にはコミュニティFM局がたくさんありますね〜」と言われるが、あれは要するに東京の人間が考えるメディアというより「ライフライン」としての意味合いが大きいからだ。
なぜなら冬場に峠道を車で走っていて猛吹雪に遭う可能性が高い地元の人たちにとっては、札幌に本社を置いてすすき野のお店紹介をしている(しかも札幌から遠くなるほど聴こえなくなる)マスメディアなどよりも、地元の気象情報をラジオを通じて運行中の車に伝えてくれるコミュニティFM局のほうが貴重な命綱であったりするからだ。
……と北海道のこともあるけど、これを機にメーカーがAMラジオを作らなくなったとしたら……という点も考えていく必要があるような気がします。一時期「短波ラジオが国際的に2015年(だったかな?)までに廃止される」という話があった(後にこれは撤回)んだけど、そうなるとメーカーは当然というか対応の受信機を作らなくなってしまう。
あと、首都圏の話で恐縮ですが、ニッポン放送とかはともかく、それこそ
ラジオ日本なんかはいったいどうなるんだろう?(あそこは一応本社が横浜で都内向けの出力も押さえられてるし、これまで労働争議で凄絶に揉めてきて、組合潰しの役員の指示で「演歌以外かけるな」と言われて「今でもリクエストされても音源がないのでかけられない曲がある」と、10年くらい前に取材で会った当時の役員から聞いた覚えがあるんだけど、こういう局の「FM化」を読売や日テレはどうするんだ?)――って気もしますけど。
TFMの社長で、後に東京MX(ここも開局当初、上記の「ラジオ日本」で組合潰しをやった連中に牛耳られて迷走した)の社長も兼務した後藤亘さんは数年前、私も見ていたシンポジウムの檀上で「
民放ラジオがデジタルに移行したら、空いた周波数帯はコミュニティFMに開放したい」と大見得を切ったけど、結局デジタルラジオはこういうことになっちゃったからね。いったいこれからどうなるんでしょ?

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