「上州名物、かかあ天下と空っ風」
の、まさにその時期、そのお膝元・赤城山麓を往く“上電”こと
上毛電鉄。
JR両毛線の桐生駅から徒歩で5分ほど離れた古風な「西桐生」駅から、京王井の頭線の中古の2両編成の電車に乗り込む。西へ約1時間、約25km離れた前橋市内の「中央前橋」駅まで、澄み切った北の空に赤城山の連なりを終始眺めながら、単調な郊外の平野をゴトンゴトンと揺られる旅路。数分おきに停まる駅では、開いたドアから容赦のない「赤城おろし」が吹き込んできて、思わず身を縮める。
あと、この路線で面白いのは車内に「自転車持込可」としていること。沿線の中高校生やオバチャンたちが駅までチャリンコでやってきては、そのままホームから車内に乗り込み、下車の際には運転席後ろの運賃箱に整理券と小銭を投げ込みながら何気なく降りてゆく。
終点の中央前橋は、20年ほど前に初めて訪ねた際には古色蒼然たる雰囲気の駅だったが、今では駅舎もすっかり新しいものに建て替えられていた。もっとも、駅の周辺は車の通行量は多いものの人影はまばら。駅名の通り前橋市の中心部に近い立地にあるのだが、正月明けのためか、はたまた御他聞に漏れずの市街地空洞化によるものなのか。ともあれ、素寒貧とした広い通りを夕暮れ時、ふきすさぶ寒風に襟をすぼめつつ一人、帰路のJR駅まで歩いた。


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