「遅まきながらの『レイバーフェスタ2020』報告(その2)」
日記・雑記
んで
前回に続く「
レイバーフェスタ2020」報告。
『
フィーネ 2-2-A-219』に登場する堀川文夫さん・貴子さん御夫妻は、浪江の家でずっと飼っていた愛犬(避難生活中にガンで死去)を主人公にした絵本を出版しており、この日の会場でも販売しているとのことだった。「さっそく買わなきゃな」と思いつつ、次の恒例企画「3分ビデオ」一斉上映との合間の休憩時間にロビーへ出ると、先刻の堀川夫妻トークの司会だった堀切さとみさん(映画監督)、そして松原明さん(レイバーネット日本共同代表)に声をかけられたのだが、そこで松原さんより「これから始まる『3分ビデオ』上映作品の中から『岩本太郎賞』を選んで出してほしい」と言われる。
そんな無茶ぶりな(゜ロ゜;)。山本太郎賞ならともかく岩本太郎賞なんて貰っても誰も喜ばんぞ、早いとこ言ってくれればウチに大量の売れ残ってる俺の本を今日持ってきたのに……などと頭を抱えながらも、商品は「そのロビーで売られているものの中から選んでくれれば」とのことでもあったので、んじゃとばかりに前記の堀川御夫妻の絵本『手紙 お母さんへ』を2冊購入。うち1冊を賞品にするとともに、名前は岩本賞でも実態は「堀川賞」として、さっき見た『フィーネ』にあやかった選考基準で1本を表彰しようとその場で即決。

(左が堀川さん御夫妻による絵本『手紙』。右は中筋純さんが実行委員会代表を務める来春開催「
もやい展2021TOKYO」のリーフレット)
で、今回の3分ビデオとして上映されたのは
1.Jアラート(湯本雅典)
2.軽食なかや(津田修一)
3.黒目川の自然を守ろう(田沼久男)
4.宮古軍事に住民はNOと言った(見雪恵美)
5.追悼 木下昌明さん(松原明)
6.ロスジェネが竹中平蔵を訴える(増山麗奈)
7.ブロイラーの50日(北穂さゆり)
8.帰還者0(堀切さとみ)
9.オリンピック終息宣言2021(イケガミアツコ)
――以上の9本。すでに顔なじみの皆さんが時事的な話題や、それぞれ自身が取り組んできたテーマを継続取材のうえまとめた作品が多く、さらには上映後に壇上で木下さんの遺影を抱えた松原さんが思わず涙声で故人への思いを語った場面にも胸に来るものがあるなど、最後の最後、実は表彰の場面で壇上にあがる瞬間まで結構迷っていたのである。が、それでも結局最後に私が選んだのは、観た瞬間に「これだ」と思っていた1本、都内の練馬区東長崎に残る昔ながらの大衆食堂を描いた、津田さんの「軽食なかや」ーー。
と、発表した瞬間に「ああ、同じだ!」と背中から声がするではないか。振り返るとそこには先刻の『フィーネ 2-2-A-219』作者の中筋さんが立っていた。というのも、今回は上記9本の中から「岩本太郎賞」と「中筋純賞」を1本ずつ選ぶことになっていて、後から発表する順番になっていた中筋さんもこの作品を選んでいたのだ。そんなわけでまさかの(と言ったら失礼になってしまうかもしれないが)「軽食なかや」ダブル受賞!w(゜o゜)w
参ったな、他の作者の人たちから恨まれるかなと気が引けた次第だが、とはいえ『フィーネ』作者の中筋さんと選んだ作品が同じだったことには個人的には何だかとても嬉しいものがあった。
と言うのも、やはりこのーー特にコロナ禍で世の中が何か分断されたまま多くの方が亡くなっていったり、多くのものが失われていったりする状況の中で、せめてやっぱり「思い出」だけは大事にしてよ、と願う年の瀬でもあったからだ。人が人であり続けられるのは、そこで自分が生きてきた「思い出」があり、なおかつそうした「思い出」の共有こそが、コミュニティを成り立たせる大事な要素なんだ、その思い出を支える物事が寿命を終えて死に絶えたり、あるいは全く不意に外から襲ってきた脅威によって失われてしまったのであれば、こうした「レイバーフェスタ」のようなみんなで手作りのイベントの中でこそ、それを長く伝えていってもらえたらーーとの思いを込めたつもりだ。
「レイバーネット」メンバーの重鎮で、昨年まで3分ビデオの「木下昌明賞」を選んでいた映画批評家の木下さんは、今回のレイバーフェスタ開催を待てずに今月6日、82歳で旅立っていった。去年の今頃、「3分ビデオ」コーナー前の休憩時間にロビーで語り合ったのが、私自身は個人的に最後の出会いになってしまった(コロナ禍がなければ夏の「レイバー映画祭」でも会えたかもしれないのに、だ)。
そんな木下さんの思い出を「レイバーフェスタ」はこれからもメンバーの皆さんみんなで大事に共有しながら、新たな「いま」そして「思い出」を伝えていってくれることだろう。今回は、そのささやかなお手伝いがはたしてできたかどうか心もとないが、私自身は思いがけず今回はまた一つ、後々までの一つの大事な思い出を戴けたと思っています(^-^)。

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