「大阪朝鮮高校ラグビー部を描いたドキュメンタリー『60万回のトライ』ついに公開!」
映画の話
昨年の5月16日付日記で紹介したドキュメンタリー映画『
60万回のトライ』が遂に完成し、今日は日暮里駅前のサニーホールで東京プレミア上映会が行なわれるというので参加した。
監督の朴思柔(パク・サユ)さん(ソウル生まれの韓国人女性で、もともとは2002年に韓国のニュース専門局のレポーターとして来日)がこの作品を撮るにいたったきっかけや、主題の大阪朝鮮高校が置かれた現状、そして同校のラグビー部がどれだけ強いかという話は前記した昨年5月の日記を参照してもらったほうが手っ取り早いので省略するが、ただし一つだけ修正すると、前記記事では「選手たちはみな在日朝鮮人である」と書いたが、今回見た映画で説明されていたところによると、大阪朝高の生徒の約6割は韓国籍で、少数ながら日本国籍の生徒もいるという。
また、作中では来日した韓国の高校生チームとの、同年代・同じ民族どうしの「
少女時代」がどうしたこうしたといった気さくな若者会話(もちろん韓国・朝鮮語)の場面も描かれている。ただ一方で、同時に来日したオーストラリアの選手に「I'm Korean」と言ったら横にいた韓国チームの選手に「No,He is Japanese」と言われたとか苦笑しながら言っていたシーンもあったけど。
以前に会った際にサユさんも言ってたが「在日コリアン」については韓国でもほとんど関心が持たれておらず、サユさん自身も来日して、自分が実際にそうした在日社会に接するまでは全く知らなかったという。しかも何しろ「分断国家」という現実があるため、サユさんも大阪の韓国領事館に呼び出されて「総連系と接触しただろう!」と問い詰められたという話も取材した際に聞いた。
それはともかく今回の東京上映会だが、先駆けて先月行なわれた大阪上映会が超満員になってしまったとのことで、今回は上映開始(13:30)前の正午から整理券を配るとの事前連絡が。それでも寝ぼすけの私が会場時刻の13:00に行ったら、ロビー前は以下の写真のような大混雑で、渡された整理券番号は117。そして定員500名の日暮里サニーホールは超満員に。
映画の中身については今後の劇場公開で観る人たちのためになるべく伏せるとして、しかし昨年の集会時に観たラッシュ映像から想像した以上に素晴らしいものだった。
時節柄、このテーマだと「プロパガンダ映画」みたいに受け取られちゃうのかも、という事前の不安はあったが、実際に見た人ならわかる通り、むしろ青春映画として見事にまとまった作品になっていた(それこそ「プロパガンダだ」という連中には「見てどう? たとえば登場人物や学校が日本国内の過疎化に悩む地域の高校のラグビー部の話だとして違和感あった?」と聞いてやればよい)。
おそらくこのあたりはプロデューサーの岡本有佳さん(編集者で雑誌『前夜』元編集長)や永田浩三さん(元NHKプロデューサー・現在は武蔵大学社会学部教授)を始め、編集を手がけた村本勝さん(映画『アレクセイと泉』担当)や音楽の大友良英さん(大ヒットしたNHK連ドラ『あまちゃん』担当)のほか、様々なネットワークを通じて集まってきた方々の力も大きかったのだろう。ちなみに昨年のラッシュ上映会後の二次会の飲み屋で、会計の際にお釣りの2000円をそのまま現金で手渡した私も一応エンドロールに名前が載ってました(^ ^;
上映終了後は岡本さんや永田さん、そして監督のサユさんがトークしながら自身でビデオカメラを手にとって回し続けるという気合の入れよう。「私は今はこうしてますけど、終わったら数日間寝込むと思います」というサユさん(実際、異国にいながら乳がんを患い、京都のウトロで在日コリアンの方々から面倒を見られたことへの恩返しのつもりで今回の作品を作ったという)だったが、終了後に挨拶しに行ったら言葉通りすっかり脱力して目も空ろながら、それでも「カムサハムニダ(ありがとう)」と答えてくれた。
あと、作品の最後には大阪朝高のラグビー部員たちのその後が紹介され、上映後には今や卒業してすっかり大人になった彼らと、朝高ラグビー部監督の呉英吉(オ・ヨンギル)さんも壇上に登場した。
卒業した彼らは、ある者は焼肉店の店員になった。またある者たちは大学進学後もラグビーを続け、大学選手権で優勝した帝京大の選手となったり、U20の「日本代表」となり、2019年に日本で行なわれるラグビーW杯の日本代表を射程に捉えている。
そう、ラグビーのW杯はサッカーなどと違って「国籍」ではなく、その選手が所属する各国のラグビー協会ごとに代表選手が選ばれるのだ。
『60万回のトライ』の「60万」とは、日本に居住するコリアンの概数を指している。けれども――クサい言い方になるけど、60万回もの「トライ」があれば、その向こう側には「ノーサイド」が待ち受けているのだ(そこで「韓国・朝鮮人に60万回も?」とかいうバカには「んじゃ1億2000万人の日本人のトライはどうなるんだよ?」とでも言っときゃいい。韓国・朝鮮人がイギリス発祥のスポーツの「日本代表」になるのがケシカランと言いつつ「国技」たる大相撲でモンゴル出身の力士に横綱・大関陣を長期間認めている国なんだから、今さら何を寝言いってんだって話だよね。
スポーツその他で「仲良く喧嘩」しながらもノーサイド後には一緒に(例えばスポーツをやらない人でも新大久保の韓国料理屋や新宿思い出横丁の一膳飯屋ででも)ビールでも飲める仲であったほうがいいじゃない? ま、それが納得できない連中が苦し紛れにあちこちで醜悪なヘイトデモとかやってんだろうけどね。
ともあれ『60万回のトライ』は東京だと3月15日から渋谷オーディトリウムで上映されるそうなので、ネトウヨ諸君はぜひ観に来て、それまでの言動を悔い改めてください。もし劇場前とかでおかしなことをやるようだったら、話が大きくなった末に大勢のカウンターや私も駆けつけるだろうから、なるべく大人しく観なさいね。ではでは(^-^)

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