2022/1/17

「コロナが生徒を分断したのか」〜東大前刺傷事件、高校の分析から@  教育・学校・教師


 東大前刺傷事件の容疑者の在籍校が、謝罪コメントを出した
 コロナ禍で学校の発するメッセージが生徒に届かなくなった
 三密回避が生徒を分断し ひとりひとりが孤立した
 しかしその分析でいいのだろうか

という話。
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(写真:フォトAC)

【容疑者の在籍校、謝罪コメントを出す】
 先週土曜日(15日)、大学入学共通テストの会場だった東京大学前で受験生ら3人が切りつけられた事件に関して、殺人未遂容疑で逮捕された少年の通う名古屋市内の高校が謝罪コメントを公表したそうです。

 本校在籍生徒が事件に関わり、受験生の皆さん、保護者・学校関係者の皆さんにご心配をおかけしたことについて、学校としておわびします。
 本校は、もとより勉学だけが高校生活のすべてではないというメッセージを、授業の場のみならず、さまざまな自主活動を通じて、発信してきました。また本校の長い歴史のなかで、そのような校風を培ってきました。
 ところが、昨今のコロナ禍のなかで、学校行事の大部分が中止となったこともあり、学校からメッセージが届かず、正反対の受け止めをしている生徒がいることがわかりました。これは私たち教職員にとっても反省すべき点です。
 「密」をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません。今回の事件も、事件に関わった本校生徒の身勝手な言動は、孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされたものと思われます。
 今後の私たちの課題は、そのような生徒にどのように手を差し伸べていくかということであり、それが根本的な再発防止策であると考えます。



【愛知県随一の進学校】
 容疑者少年の在籍する高校は、偏差値72とも73ともいわれる愛知県随一の進学校で、21年度で東大30名、京大31名というとんでもない進学実績を誇っています。特に医学部進学については14年連続で全国1位と言いますからただ者ではありません。

 しかしガチガチの受験中心主義校かというとそうでもなく、数学、化学、物理学等々のオリンピックの常連校であり、部活動は文科系理科系ともに盛んにおこなわれている、自由と独立の気風に溢れる高校のようです。
 行事も豊富かつ独創的で、OBや学外の人材を招いて行う公開講座(年2回、各40講座ほど)があったり臨海学校が行われたり。2003年の学園祭で行われた演劇はその後、独立した行事となり、評判を聞いたテレビ局がドラマにしたほどです(TBS『ハイスクール歌劇団☆男組』2012年)。

 仏教系ということもあって体質の古い面もあるようで、生徒の間には昔で言うバンカラの気風が濃く残っており、卒業生には先日亡くなった海部俊樹元総理をはじめとして、高須克弥、黒川紀章、梅原猛、林修などがいると言えば、何となく雰囲気もわかろうというものです。
 今回の謝罪コメントにも、
 本校は、もとより勉学だけが高校生活のすべてではないというメッセージを、授業の場のみならず、さまざまな自主活動を通じて、発信してきました。また本校の長い歴史のなかで、そのような校風を培ってきました。
とあります。


【コロナが生徒を分断したのか】
 ではなぜ、そんな暖かな校風の学校から今回のような犯罪を起こす生徒が出てきたのか――それについても謝罪コメントは語っています。

 昨今のコロナ禍のなかで、学校行事の大部分が中止となったこともあり、学校からメッセージが届かず、正反対の受け止めをしている生徒がいることがわかりました。

 つまり学校行事を始めとするさまざまな自主活動を通して、生徒たちに届けていた「勉学だけが高校のすべてではない」というメッセージが届かなくなり、「有名大学進学だけが高校だ」といった極端な受け止めをする生徒が出てきてしまったというのです。そしてそれに学校が気づかなかった――。
 
 さらに、
「密」をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません。
と語り、ソーシャル・ディスタンスが心のディスタンスを生み出した結果でもある、とも言っています。

 しかしこの分析、当たっているように見えて、少しずれているようにも思うのです。なぜなら「勉学だけが高校のすべてではない」はウソではないものの、それは一枚のコインのおもてに書かれた文字であって、裏面には別のことが書いてあったはずだからです。それは、
「厳しい受験戦争を勝ち抜くためには、勉強以外の、学校行事を始めとするさまざまな自主活動に参加しなくてはならない」
という言葉です。
 
(この稿、続く)

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