2021/10/20

「過剰労働の元凶は本来業務にある」〜私の“教員の働き方改革”案B  教育・学校・教師


 教員に過剰労働を強いる元凶は部活動と雑用(事務業務)にある、
 そのことは国際的な調査や教員からの聞き取りからも明らかだ。
 ――私たちは長いことそう信じ込まされてきた。
 しかし違う。私たちを圧迫している元凶は、本来業務の中にあるのだ。

という話。 
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(写真:フォトAC)

【教師を追いつめてきたものは何か】
 もう20年も前のことですが、ある会合で保護者から、
「日本の先生たちは、授業は少なくても雑用が多いみたいで、ほんとうに大変ですねぇ」
とねぎらわれたことがあります。当時それに関するOECD(経済協力開発機構:通称金持ち国クラブ)の調査結果が出て、メディアで話題になっていたのです。ただ、そのころでさえ「授業はすくないのに」には大きな違和感がありました。

 ここでは最新のデータ(「OECD国際教員指導県境調査《TALIS》2018」)を使って、その当時の認識を確認したいと思います。

 TALISの報告書から中学校教員(フルタイム勤務者)の勤務時間を見ると、全教員の平均勤務時間は週56・0時間で調査対象48カ国の中で最長、2位のカザフスタンが48・8時間ですからその1・15倍も働いていることになります。これを先進国G7の国々と比較すると、アメリカの1・21倍、カナダの1・19倍、イギリスの1・19倍、フランスの1・50倍、そしてイタリアの実に1・87倍にもなるのです(ドイツは不参加のようで数値がありません。しかし半日学校の国ですからさらに少ないのかもしれません)。
 しかしそれにもかかわらず授業時間の週平均は18時間で、対象国の中では39位、下から数えて10番目にしかならないのです。いったい日本の教師はsの差の38時間を何に時間を使っているのでしょう?

 その答えも「TALIS2018」の中にあります。
 ページを開いて(p.11)教師たちが時間を費やす項目を見ると、すぐに目を引くのが「一般的な事務業務(教師として行う連絡事務、書類作成その他の事務業務を含む)」の5・6時間(1位)、「課外活動の指導」7・5時間(1位、ちなみに2位の南アフリカは3・3時間)、「その他の業務」2・8時間(2位)の三つです。
 そこから日本の教師は事務作業と部活動のために長時間労働を強いられていると認識が生れ、この部分にのみ焦点が当てられるようになります。しかしそこには大きなまやかしが潜んでいたのです。


【過剰労働の元凶は本来業務にある】
 通常、国際的に教育環境を比較する場合は、計算に含める教科を揃えます。それぞれの国にある特異な教科については、最初から除外するわけです。

 日本の場合は「宗教と道徳」という枠で「特別の教科道徳」は含めますが、「総合的な学習の時間」と「特別活動」は除外対象です。
 学級当番や班活動といった「学級活動」、委員会活動や対外活動を含む「生徒会活動」、入学式や卒業式といった「儀式的行事」およびその練習、演劇鑑賞・音楽会などの「文化的行事」、体育祭や健康診断といった「健康安全・体育的行事」、遠足や修学旅行などの「遠足・集団宿泊的行事」、ボランティア活動や農業体験・職業体験といった「勤労生産・奉仕的行事」、そういったものが丸ごとごっそり外されるのです。
 これらが全部なくなった学校について考えてみてください。かなりすっきりとして教師の負担も少なくなります。諸外国はそうなのです。

 世界一長い勤務時間と下から数えた方が早いほど少ない授業時間の間を埋めるのは、実は総合的な学習の時間と特別活動なのです。これだと部活のない小学校の教師も苦しい訳がわかります。

 事務業務も、その大変さは特別活動や総合的な学習の時間に負うところが少なくありません。
 生徒総会実施計画だの卒業式計画だの、あるいは体育祭計画、遠足計画、修学旅行計画、下見計画、性教育月間実施計画、人権教育実施計画、平和教育実施計画、読書週間実施計画、避難訓練実施計画、等々、等々、特別活動に関する計画及び書類作成は山ほどです。

 キャリア教育、ITC教育、食育、命の安全教育、環境教育、ボランティア教育、薬物乱用防止教育――、それらにも計画と関係機関への連絡・調整、実施、反省が必要になり、そのための書類作成や対応に時間がとられます。
 思いつくままに書き連ねましたが、いま記述したキャリア教育以降はすべて平成になってから導入されたものです。昭和の教員より現代の教員の方が大変なのは明らかです。

 つまり――このことは強く言い記憶に残さなくてはいけないのですが――平成以降の教員の過剰労働は、部活動のせいでも、モンスターペアレンツのせいでも、生徒指導のせいでも、保護者の学歴が教員を凌駕したせいでもなく、
日本の、日本らしい、日本の子どものための、日本人を育てる教育が、重く、苦しくなってきた
のです。

 もし業務削減によって教員の過剰労働を削減しようとしたら、どうにも動かしようのない部活動ではなく、巷間言われるようなアンケートや調査への対応といったこまごまとした事務仕事でもなく、まさに本業の本丸、総合的な学習の時間と特別活動での大幅削減が必要なのです。

 しかしできるのか?

(この稿、続く)

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