2021/7/15

「食事が旨くなった・時間は自由に使える・保障された読書」〜老いC  人生


 退職したら思わぬ発見があった。
 仕事を辞めると食事が旨くなること、
 「時間をうまく使う」という概念がなくなること、
 おもしろい本がどこにあるのか、鮮やかに分かること、

という話。
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(写真:フォトAC)


【食事が旨くなった】
 妻はもともと家庭科の教師で、年じゅう作り置きをしていることもあって、15分もあれば1汁5菜を揃えられるような料理上手です。しかし私が退職するまで、特に美味しいと思って食べたことはありません。味わって食べるということがなかったからです。

 学校は労働基準法における休憩時間のうち、およそ20分〜30分間を昼食時にあてるのが普通です。しかしこの時間にきちんと休憩をとっている教員は稀です。給食指導の時間と重なっているからです。
 給食の時間は、
「食品ロスを出さずに、児童生徒に必要な栄養およびカロリーを摂らせることを、強制なしに行う」
というとんでもなく難しい課題を、毎日解決しなくてはならない場ですから休んでいるわけにはいかないのです。
 しかも学級担任や教科担任にとっては、提出させた日記や宿題に目を通してひとこと書いたり記録を取ったりする時間でもあります。必然的に食べる速度は速くなり、5分〜10分程度で食べ終わって仕事に励むのが一般的なのです。

 その速さは家庭にも持ち込まれます。先ほど「妻は15分もあれば1汁5菜を揃えられる」と書きましたが、そのくらいの速さで用意して、それに見合う速さで食べ、片づけないと、持ち帰りの仕事ができません。家に帰ってからも戦争状態です。

 いつだったか職員旅行でフランス料理のフルコースを体験したとき、料理の出てくる速度があまりにも遅すぎて全員でうんざりしたことがありました。個室のため食事の進展が見えなかったからでしょう。店は一般的な速度で次の皿を出してきたのだと思いますが、日常的に10分以内で食べている人に、45分もかけて食事を運んでも退屈するだけなのです(もちろんこちらが悪い)。

 その悪習が退職とともに改まりました。年寄りはゆっくり20回以上は噛んで食べなくてはならないと言われて励行すると、食事というのはおいしいものですね。食べているのは同じ料理なのに、以前は味わうことをせず、ただ栄養とカロリーを摂取していただけなのです、30年以上も。

 齢をとると舌がバカになってものが不味くなると言いますが、今のところは逆です。教員に限らず、食事がいい加減になっているサラリーマンはいくらでもいるでしょう。その人たちに言っておきます。齢を取ると食事が旨くなる場合があるのです。


【時間は全部自分のもの】
 24時間すべてが自分のもので、どう使ってもよいという状況が不向きな人もいます。私もかつては自分がそうだと思い込んでいました。
 例えば受験生だった時、あるいは大学生になってからの長期休み、さらには次も決めずにさっさと仕事を辞めて実際には教職浪人となったとき、私は自分の自己管理能力の低さに呆れ、絶望したものです。ホトホト他人から使われる人間だと思い知らされた体験でした。

 ところが今になってわかることは、自分はダメだなあと思ったそれぞれの時期には、やるべきこと、果たさなくてはならない目標があったのです。それができなかったから「ダメだなあ」ということになったので、「なにがなんでもやらなければならない」ことがなければ、時間はどう使ってもかまわないのです。
 うっかり3時間も昼寝をしてしまったとしても、困るのは「夜寝られないかもしれない」、その程度のことです。あり余る時間を自由に使って後悔がありません。


【保障された読書】
 自分を振り返る時間がたっぷりあります。
 思い出にふけるのもいいでしょうが、私がやっているのはむかし読んだ本の再読です。

 読書というのもなかなかムダの多い作業で、必ずしも常に良書と出会うわけにはいきません。特に仕事関係で読んだ本の中には、買ったこと、ムダにした時間を悔いる場合が少なくなかったのです。
 しかし今や必要に迫られて読書することはありません。読みたいものだけを読めばいい。しかもどこに良書があるかはよく分かっているのです。

 幸い私は記憶力に大きな問題を抱えていますから、「あの本はすごくおもしろかった」と覚えていても中身までしっかり記憶しているものはほとんどありません。したがって自分の書棚に向かって良書と分かっている書籍を、引き出して読めばとても新鮮ですばらしい読書体験ができるのは間違いないのです。
 こうして私は、日々の確実な読書生活を保障されるわけです。

(この稿、明日、最終)
 
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