2020/5/13

「部活の大会は冬が向いている?」〜「9月入学」の利点と問題点B    教育・学校・教師


 学校の年間暦を5カ月後ろ倒しにして「9月入学」に合わせて見ると、
 いろいろなことが分かってくる。
 現在は熱中症対策に大変な力の注がれている
 全国中学校体育大会(全中)やインターハイ、夏の甲子園野球が12月になる、
 それって、案外いいのかもしれない。

というお話。
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(「中学校の入学式」フォトACより)

【中学生の三種の神器】
 子どもにとって、中学校というのは部活をやって文化祭をやって修学旅行に行くところです。決して勉強をしたり自己実現を図ったりする場ではありません。“子どもにとっては”の話ですが。

 なぜそんなふうに言えるのかというと、彼ら自身が語っているからです。
 卒業文集を見れば分かりますが、生徒の文章の9割以上はその話題で終わっています。稀に他の宿泊行事のことを書いたり生徒会での活躍を書いたりする子もいますが少数です。勉強ができてよかった、知らないことが分かるようになって良かったなどと書く子はひとりもいません。

 まるっきり学習が中心になってこないことに苛立つ大人もいるかもしれませんが、
「学校は勉強をするところで、仲間と切磋琢磨して自己を磨く場だ」
と定義するなら、彼らは文化祭や修学旅行、部活動を通して学び、切磋琢磨しているのだからそれでいいとも言えます。教科だけが勉強ではありません。

 一方、教師の方も“特別活動”とひとくくりにされるこうした教育活動を、異常に重要視する傾向があります。それはこれらの活動を通して子どもたちが大きく成長する姿を、何度も見てきたからです。特別活動の価値を確信しているのです。
 子どもの成長は右肩上がりの長い上り坂ではなく、不規則な階段です。長い停滞と飛躍の繰り返しなのです。そして大きな飛躍の直前には、修学旅行だとか文化祭だとか、部活動の試合だとかいった大きな行事が、必ず控えているのです。

 したがって学校が「9月入学」になったとしても、生徒も好んで取り組み、教師も価値を認めるこの三つ、少なくとも生徒会活動の総決算としての文化祭と部活動の決算である各種大会は残しておかなくてはなりません。
 それを前提として、5カ月間うしろ倒しにした年間暦(中学校版)をつくり、修学旅行や文化祭、部活動がうまく納まっていくかどうかを確認します。


【運動部の大会は冬場が最適?】
 一般的な中学校の、9月始まりの年暦はこんなふうになります。
9月 入学式 1学期始業式 家庭訪問 1年生を迎える会 避難訓練 交通安全教室 生徒総会 PTA総会・参観日 身体測定・各種検診・検査(内科・歯科・視力・聴力・エックス線撮影)
10月 PTA作業 地域ボランティア(地区清掃) 巡回音楽会・劇場 各種検診・検査(耳鼻科・心臓・血液) 参観日 中間テスト 修学旅行
11月 地域ボランティア(資源回収) 各種検診・検査(眼科・結核) 不審者対応訓練 運動部市内大会 歯科検診 期末テスト 防災訓練 
12月 参観日 運動部県大会 1学期終業式 冬休み
1月 冬休み 2学期始業式 総合テスト スキー教室 全中(全国中学校体育大会)
2月 資源回収 中間テスト 市音楽鑑賞
3月 視力検査 新人戦市内大会 麻疹・風疹予防接種 文化祭   
4月 総合テスト 中2職場体験 参観日 歯科検診 公開授業研究会 新人戦県大会 生徒会選挙 総合テスト 1・2年生宿泊学習 2学期終業式
5月 3学期始業式 中3保護者懇談会 保護者懇談会 生徒総会 生徒会引き継ぎ 公立高校前期入試
6月 模擬テスト 参観日 期末テスト・総合テスト 中学校入学説明会 公立高校後期入試 3年生を送る会 終了式 卒業証書授与式 公立高校後期合格発表
7月 夏休み
8月 夏休み

 見ての通り運動部の市内大会は11月、県大会が12月、全国大会は1月という寒い時期になります。水泳部の大会などはとてもできそうにありませんが、それを言ったらこれまでの日程でスキー部やスケート部は他の部と一緒に大会に出場することができなかったのです。同じように水泳だけ特別な日程を組めばいいだけのことです。ボート部やワンゲル部も似た扱いになるかもしれません。

 多少の例外を除いて、「9月入学」の年間暦を肯定的に見ようとすると、確かに寒いことは寒いですが、暑いよりはいいのかもしれません。とにかく熱中症の心配をしなくて済みますから。
 屋内スポーツはどれもこれも夏よりマシです。空調の使えないバドミントンや卓球はむしろ冬の方がありがたいくらいです。あとの種目は暖房を入れてやればいい。屋外競技もこれといって大きな問題があるわけでもなさそうです。
 こうなると全中(全国中学校体育大会)ばかりでなく、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)も全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)も、1月のこの時期にやった方がいいような気がしてきます。「9月入学」は案外、部活の面でもいいのかもしれない――そんなふうに思われてきます。

 しかしそれは違います。
 今の季節(5月)に考えるとそうなってしまいますが、11月にこの計画を見直せば必ずわかるのです。
「こんなに暗い中を朝部活に出かけ、こんなに暗くなってから一人で帰ってくるのか?」


【運動部の生徒は3年生になると引退】
 すべての学校のグランドに照明をつけなくてはならない初期投資も大変ですが維持費も大変です。しかしそれ以上に大変なのは女子部員の登下校の安全確保です。もちろんひとりで行かせるなんてことはできません。一朝事故が起これば取り返しがつきません。

 小平奈緒さんや浅田真央さんのご家族はそんな状況に何年も耐え、朝晩の送り迎えを欠かさなかったのです。寒いスケート場で何時間も待ち続けた日々が、何日もあったに違いありません。しかしそれも小平奈緒や浅田真央の家族だからできたという考え方もできます。なにしろ才能がとびぬけていましたから。
 普通の、凡庸な、選手にすらなれないかもしれない我が子のために、寒い冬の朝晩、毎日送り迎えするのです。それが続けられる親が何人いるか――。

 もちろん実際にはかなりの保護者が頑張ってくれるはずですが、翻って、そうした努力、不安に耐える日々を送らなければならないのは、ひとえに日本に優秀な研究者や留学生を招き、エリートを海外に送り出す「9月入学」を維持するためだと言われたら、それでも頑張り切れるものなのか、そうしたことを要求していいものなのか――。

 結局、全中・インターハイ・甲子園野球の日程は元に戻らさざるを得ないでしょう。
 6月市内大会、7月県大会、8月全国大会です。一カ月くらいは繰り上げてもいいかとも思いましたが、宿泊を伴う全国大会を梅雨の時期に実施するのはやはり困難でしょう。

 5月〜6月は入試の時期ですから、参加できるのは1〜2年生と進学しない(もしくは進路が決まっている)3年生だけということになります。高校生の場合、大学のスポーツ推薦やプロに進むことが決まっている選手は出場できますが進学校の3年生は出られなくなりますから、そのぶん不利となります。中学校3年生は基本的に出られなくなるでしょう。

 中学校の場合、基本的に運動部は3年生になったら引退。2年生は新入の1年生と一緒に全国大会のない新人戦を10月〜11月に行って冬を迎えることになります。
 進学をしても運動を続けようという気持ちのある生徒にとって。1年の空白は大変かもしれません。

(この稿、続く)

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