2020/1/23

「日本人を日本人にするための教育」〜特別活動の話C  教育・学校・教師


 特別活動を核心とする日本型の教育は、
 今まさに外国に向けて発信し、外国に輸出されようとしている。
 ところが一方で、
 本国日本では、その空洞化が始まろうとしているのだ。

という話。
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(「子供54運動会」PhotoACより)

【日本人を日本人にするための教育】
 訪日外国人観光客は2年連続で3000万人を超え、今年は4000万人に届こうという勢いです。リピーター率も6割ほどと高く、それも徐々に増えつつあります。

 要因はいくつもありますが、日本は安全・安心の国であり、人々は親切で優しく、食事も衛生的。町にごみが散乱していていることもなく、買い物で騙されることもない。駅や入場口ではきちんと列をつくり整然と動く、人と人が争うこともない。そんな姿が高く評価されているとも言われています。日本に来て過ごすと、気持ちがいいのです。

 日本人のそうした美質が世界に一気に、大量に発信されたのは2011年の東日本大震災のときでした。
 未曽有の災害に見舞われて恐怖と悲しみのどん底にいる最中でも、日本人は秩序を守ることや感謝の気持ちを忘れず、他人のものに手をつけることもない。自分のことは後回しにして、静かに、力強く、献身的に状況に立ち向かう、その姿に世界の賞賛が集まったのです。

 そのことは私たち自身の日本人を見る目を変えました。
 日本と日本人の悪口を言うのが知識人・文化人の仕事だったのが、いちおう自国民には敬意を払っておく、そんな雰囲気になってきたのです。

 こうして2011年は私たちが自分たち自身を見直す機会にもなったのですが、話題がそこに及ぶとき、繰り返されたのが、
「日本人に刷り込まれたDNAが・・・」
といった言い方です。私はこれに激しく反発し、抵抗します。

 DNAが原因なら海外に生まれ育った日本人でも全く同じことができるはずです。逆に、日本で生まれ育った人でも、外国人のDNAしか持ち合わせない人は何もできず、ハーフの人たちは半分しかできないか全部できる人と全くできない人に二分されるはずです。
 そんなバカなこと、あるはずがありません。

 日本人の美しい行いや居住まいは、何が美しく何が正しいのか、たくさん学び、たくさん練習したからです。放っておいてできることではありません。

 どこで学び、練習したのか――もちろん学校です。私たちが教えたのです。

 親が丁寧にきちんと教える家庭も少なくありません。しかし組織的に、計画的に、実践的に行ったのは学校を置いて他にありません。
 私たちが学校の特別活動の時間を使って、たっぷり時間とエネルギーをかけて行ってきたのが、このような「日本人を日本人にするための教育」なのです。


【日本型教育の核心と空洞化】
 日本人の優れた性質はDNAなどではなく、学校教育のおかげかもしれない――その点にまず気づいたのは、外国の研究者や教育関係者たちでした。

 2011年以降、彼らは日本型の教育の秘密を探ろうと大量に訪れてきましたが、この国に十分な受け入れ態勢がなく、一部はほとんど成果をえることなく本国へ戻ってしまいました。
 政府がようやくその価値に気づいて積極的に発信し始めたのは、2016年に「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」が創設されてからのことです。

 日本の教育のどこが特別なのか――文科省が考えた日本型教育のあり方は、日本の教育紹介パンフレット(英語)の中にあります。タイトルは驚いたことに「Basic Education in Japan -知(chi)・徳(toku)・体(tai)- [PDF]」。本当に日本語で「知・徳・体」と書いてあるのです。

 その1ページ目が下の画像で、絵の左上では日本の教育が「知(確かな学力)・徳(豊かな心)・体(健康な体)」を目指して行われること。その右でPISAの高い成績を、さらに右に行って高い高校進学率、低いドロップアウト率などが示されています。
 左下の黒板には、教育の質を確保するために国が基準(学習指導要領)を定めていること、民間が制作し国が検定した教科書を無償で配布していることが書かれ、その右で三段に積み重なっているのは地域・地方公共団体・国の役割についての記述です。
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 英語版しかないので私の場合いちいちGoogle翻訳に頼らざるを得ないのですが、左上の「Competencies for living(生きる力)」に対応する動画(これも英語版「日本の教育の紹介動画」)には日本の先生が大勢出てきて、日本語で話してくれるのでそちらで見るといいでしょう。


 見ればわかる通り、動画の中で「豊かな心」について語った女性の先生の言う「朝の会・帰りの会、給食、掃除、それ以外の係の当番(活動)」「運動会」「音楽会」「卒業の会」はすべて特別活動の内容です。
 最後の、「なぜ教師は、子どもたちに健康な身体と豊かな人間性、そして学力を身につける必要があるのですか?」という問いに答える教頭先生の話には、日本の教育が目指すところが余すことなく語られています。

 文科省のサイトにあるもう一本の動画(「日本の小学生の一日」)はパンフレット全般にかかわるものです。こちらの方は9カ国語に対応していますから、タイ語やインドネシア語の方が堪能な人はそちらを参照するといいでしょう。
 日本の子どもの高い就学率や高い学力を紹介し、
「ひどい災害に直面した日本人の冷静さと規律ある行動は、多くの国で高く評価されています。どのような教育が日本人にそのような特徴と能力を育てることができたのでしょう」
から始まる日本の小学生の一日は、ここでもやはり特別活動のオンパレードです。

 給食当番、委員会活動、クラブ活動、運動会、学芸会、音楽会、ボランティア活動――「Nicchoku(日直)」も日本語のまま出て来ます。


 見てきたとおり、文科省の「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」は「生きる力(確かな学力、豊かな心、健康な体)を中核として、特別活動の重要性を、世界にグイグイと訴えています。
 それこそ日本型教育の核心なのです。

 ところがその一方で、国内的には教員の働き方改革を理由に、行事の精選・縮小を訴え、特別活動の幅を狭めようとしています。
 日本型教育を世界に勧めて、国内ではなくしていく。まさに教育の空洞化、ドーナツ化を発生させようとしているのです。
 これって裏切りではありませんか?

(この稿、続く)

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