2019/12/5

「“読解力”は読書では伸びない」〜PISA2018の結果が公表された@  教育・学校・教師


 「教員の働き方改革法案」もあっけなく可決してしまい
 いよいよ教員は追いつめられる
 さらにPISA2018“読解力”惨敗を受けて
 「読書指導の徹底」なんて話が持ち出されかねない雰囲気
 しかしPISAの“読解力”って そういうものだったっけ?

という話。
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(「本を手にする子ども」PhotoACより)

【PISA2018結果発表! 読解力惨敗!】
 PISA(OECDによる国際学習到達度調査)の結果が公表されました。
 一昨日のNHK「ニュース9」で扱われたので翌朝の全国紙はこの話題で持ちきりかと思ったら案外小さな扱いでした。ただ一紙、産経新聞だけが連続して記事を配信しており、“さすがだな”と思いました。

 産経新聞は2003年のTIMSS(国際数学・理科教育調査)で日本が世界で第5位になった際、「東アジアで最下位」 と報じて学力問題に火をつけたメディアです。その時の世界1位から4位はシンガポール・台湾・香港・韓国でしたから「東アジアで最下位」は間違いないのですが、香港や韓国に負けたのがよほど悔しかったのでしょう。日本の学力低下には異常に神経質なメディアです。

 その産経新聞のWeb版を見ていくと、今回の成績の特徴は、
「科学的・数学的応用力はトップレベルを維持したものの読解力では15位と大きく順位を落としたこと(前回は8位、前々回は4位)」
 原因として考えられるのは、文科省によると、
「パソコンを使ったコンピューター形式のテスト形式に不慣れなこと」や、
「記述式の問題を苦手としていること」など。
 加えて産経新聞が、
「読書量の減少も影響していると考えられる」
 これらが挙げられています。しかし私には解せない。

 小中学生の「読書離れ」はむしろここ数年、改善に向かっていたはずです。「記述式の問題を苦手としていること」など、今に始まったことではありません。


【最近何が起こった?】
 記事にある通り、3年ごとに行われるPISAの読解力の順位は2000年の8位から14位→15位→8位→4位→8位→15位と乱高下しています。

 通常、統計にこうした大きな変化が出るときは、
@ 統計の基準あるいはデータ採取の方法が変わった。
A 被験者の側に大きな変化があった。
かのどちらかです。

 PISA側の要因として考えられるのは参加国・地域が増えたことですが、これだと順位は下がっても上がることはない。また「パソコンを使ったコンピューター形式のテスト形式に不慣れなこと」は前回もコンピュータ利用だったことを考えると今回の凋落をうまく説明できません。前回と同程度の順位でいいはずです。

 ではこの20年あまりの間に、こちら(日本)側で何か大きな変化があったのか――そこで思い出されるのが2011年の「『ゆとり教育』から『脱ゆとり教育』への転換」です。指導要領の改訂ですから大きな変化には違いありません。


【脱ゆとりとPISA】
 ところがこの「脱ゆとり」とPISAの関係は一筋縄ではいかないもので、「ゆとり教育で学力が下がった」と大騒ぎになった2003年は新指導要領実施2年目、つまり「ゆとり教育」は始まったばかりで、このときの順位低下はそれ以前の「詰め込み教育」の弊害ではないかと批判する人たちが出てきたのです。

 批判はけっこう大きな声でしたがいったん火のついた「反ゆとり」の流れは動かず、始まったばかりの「ゆとり教育」はわずか数年で、2011年の指導要領改訂に向けて全面的に見直しが図られることになったのです。
 これで「反ゆとり」の人々は勢いづきました。 

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 ところが、そのあとどうしたことか「反ゆとり指導要領」が施行される2年も前のPISA2009で、日本の成績はV字回復。新指導要領(反ゆとり)実施2年目のPISA2012では、なんと読解力4位にまで上り詰めてしまったのです。
 その後、読解力は8位《2015》、15位《2018》と二度続けて転落します。

「教育の成果が出るには時間がかかる」という原則からすると、「2002年の『ゆとり教育』の効果が出始めた4年目以降に順位がV字回復し、 2011年の『反ゆとり教育』の効果が出始めた4年目以降、急降下してしまった」
ということになります。


【PISAには「ゆとり」がよく似合う】
 PISAの順位を上げるのに「ゆとり教育」の方がよかったのではないかという見方は、テストの問題内容からもうかがえます。

 産経新聞によると今回のPISAの特徴的な問題は次のようなものでした。
 モアイ像で有名なチリの「ラパヌイ島(イースター島)」が題材の大問は、モアイ像を運搬する際に使われた植物や大木が島内から消滅した謎について書かれた書評やネット記事などから出題された。
 その中の小問の一つは、ある生物学者の「島民が木々を伐採した」という説と、他の科学者たちの「島への移住者が持ち込んだネズミが木々の種を食べ尽くした」とする趣旨の説を読み比べ、お互いが同意している共通点を選択肢から答えさせる内容だ。求められた情報を文中から探す能力が求められ、日本の正答率は45・2%だった。


 これって国語じゃないですよね。
「数学でも英語でも日本語の読み取りの能力は重要だ」という意味では国語の面もありますが、基本的に問われているのは「資料を使った問題解決能力」、つまり「ゆとり教育」が大旗を振って奨励した、あの「総合的な学習の時間」でつけようとしていた力です。
「PISAにはゆとりがよく似合う」のです。

 このままだと「ゆとり派大万歳」みたいな感じになるのですが、ふと立ち止まると、読解力の低下には、案外、別の理由があるのではないかと思えてきたりもするのです。

(この稿、続く)

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