2019/12/2

「教師の時間外勤務が劇的に減るらしい」〜教員の働き方改革で教師がいなくなる@  教育・学校・教師


 通知表記入の季節 
 今後は「特別な教科=道徳」の記述評価
 小学校ではプログラミングや英語の評価
 で、教員の仕事は増える一方なのに
 なぜか教員の時間外労働は劇的に減るらしい

という夢(悪夢)のような話。
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(「夕暮れの街」PhotoACより)

【12月23日は書き入れ時】
 月が替わってカレンダーをめくったら12月23日が黒字でびっくりしました。小さな赤字で「平成天皇の誕生日」と書かれています。
 今頃そんなことに気づくのはいかにも世間から置いて行かれた年金老人らしい愚かさですが、世の中の、特に先生方の中には、23日の天皇誕生日がなくなって困っておられる方もおられるでしょう。

 というのは一部の地域は旧天皇誕生日を冬休みの初日と定めており、その目安がなくなるのはちょっと面倒かもしれないからです。今年は22日が日曜日ですからそこから始めてもいいのですが、23日が水曜日だったり木曜日だったりするとどうしてその日が冬休みの起点なのか、説明できるようにしておかなくてはなりません。まさかクリスマス準備のためとは言えません。

 私の住んでいる地域は旧天皇誕生日よりずっと遅くを冬休みの起点としていますので、その点では困らないのですが、23日が休日でなくなると天を仰いで嘆く先生方がおられるのを私は知っています。彼らはこう叫ぶのです。
「23日が休みでなくなったら、いつ通知票を書けばいいんだァ!?」
 そうです。この日は一部の先生にとっては通知票の、まさに「書き入れ時」なのです。


【激増する通知票作業】

 平成の31年間、天皇誕生日は私たちにとって「一日中頑張って通知票を完成する日」でした。逆に言えば“この日があるから普段は通知票を放っておいて他の仕事ができる”、そういうありがたい日だったのです。

 もっとも私個人はそうでありませんでした。1学期末も3学期末も所見欄には原稿用紙4〜5枚分(1200字〜1600字)もの文章を書いてノリで張り付けるほど書くのが好きだった私も、2学期末だけは「懇談会で申し上げた通りです」というスタンプ()を押して終わりにしていたのです。どんなに一生懸命考えても「懇談会で申し上げた通り」だったからです。
*このスタンプは退職した先輩教諭からプレゼントされた「自作スタンプセット」の中に入っていたもので、箱の中に発見したときは飛び上がって喜んだものでした。

 もっともスタンプひとつで誤魔化すなどということは私の時代だからできたことで、これからの先生方には「特別な教科=道徳」の記述式評価欄があったりしますから怠けることはできません。
 世間一般の方はご存じないと思いますが、通知票は事故防止のために学年主任や副校長先生の目を通してから児童生徒に渡されるものですから(昔はそんなことはなかった)、30人の児童に3〜4の定型文を振り分けて使うというわけにはいかないのです。何を言われるかわかりませんから多少なりとも工夫して、30人の子どもそれぞれ別の記述っぽくしなくてはなりません。3学期分だと90種類以上の文章を書くわけです。

「先生たちは雑誌の文例集とかを見て書いているんでしょ?」
などと訳知り顔で言う人もいますが、あんなものは初任者が参考にするだけで下手に「総合所見欄文例400」などをあてにしたら、ひとりの生徒を思い浮かべて400通りの文章と対照し、ピッタリのものがあれば書き写し、なければ改めて考えるといった作業を30回以上もしなくてはならないのです。そんな面倒より最初から一人ひとり考えた方がよほど楽です。

 「総合所見」に「総合的な学習」の評価、「道徳」の評価、小学校では「プログラミング」や「英語」の評価――それだけで何十時間が費やされることやら。
「教員の働き方改革、片腹、痛いワ!」
と言いたくなるような話です。
 仕事はひたすら増やされてるじゃないか!


【「変形労働時間制」で教員の時間外勤務が飛躍的に削減される】
 うっかり(なのか?)仕事を増やしてしまったお詫びなのか、政府文科省は現在行われている国会に「変形労働時間制」を柱とする「教員の働き方改革法案」を上程しています。

 変形労働時間制というのは労働基準法に規定があり、民間企業は約6割が採用しているといわれる制度で、教職員向けに導入しようとしている1年単位の変形労働時間制は、原則として1日8時間以内としている労働時間を繁忙期に限り10時間を上限に延長し、その分を夏休み等に振り分けて休んでもらおうとするものです。

 1日につき上限10時間までとなっていますが、1週間で48時間を越えると別の制約が入ってきたりしますから、実際には繁忙期(学校の場合は学期中)は毎日1.5時間程度の延長となるはずです。
 この制度の最大のメリットは、統計上の教員の時間外労働が飛躍的に改善されることです。

 平成30年9月27日学校における働き方改革特別部会資料2−2によると、一般的な学校の勤務時間8時間30分。それに対して教員の在校時間は小学校教諭で11時間15分、中学校が12時間6分となっています。それぞれ2時間45分、3時間36分の超過勤務をしているわけです(無給)。
 ところが勤務時間を1時間30分延長して10時間とすると、時間外労働はそれぞれわずか1時間15分、2時間6分だけになってしまいます。一カ月に換算すると30時間以上削減されたことになります。
 これによって「過労死基準である月100時間以上働く教員は、小学校55.1%、中学校79.8%、高校46.4%」といった状況も大いに改善されることになります(数字上)。

 また、現在は夏休みといってもあれこれ仕事のある先生方も、学校が「変形労働時間制による閉庁日」ということになれば登校することもままなりませんから、ゆっくり休めることになります。メデタシ、メデタシ・・・。
 しかしどうでしょう?


【「変形労働時間制」が教師を追いつめる】
 メディアは「夏休みにほんとうに休めるのか」を問題にしていますが、真の問題はそこではないでしょう。
 夏休みがほんとうに休めたとしても、先生たちの心身がそれで休まるわけではないからです。

 人間は一カ月休めばあとの数カ月を死ぬほど働かせても大丈夫といったものではないのです。大切なのは繁忙期の先生方をどう守るかということで、長期休業中にゆっくり体を休めることではありません。そのうえ学校の実態を考えると、「変形労働時間制」がさらに教師を追いつめていくことは火を見るよりも明らかなのです。

(この稿、続く)

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