2018/11/28

「ジャニーズ、AKBは世界を目指さない」〜世界の音楽市場  政治・社会


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 もう半世紀近く昔、私がまだ半分子どもだった頃、弟と一緒に神宮で開かれた薪能(夜間、薪の灯の中で行われる能楽)を見に行ったことがあります。
 幽玄な雰囲気の中で行われるはずの薪能ですが、困ったことにカメラ小僧(というのが当時いた)がたくさん来ていて、やたらフラッシュを焚いて写真を撮りまくり、雰囲気を乱そうとします。
 開演前から主催者が再三遠慮するように呼び掛けていたにも関わらず、コンパクトカメラで届きもしない光を放つ“小僧”のひとりに、ついに弟がキレて怒鳴り上げます。

「シャッターを焚くなって言われてるだろ!」

 落ち着いて「フラッシュを焚くな」と言えばよかったのに、「シャッター」と言ってしまったばかりに言われた方はポカンと口を開け、その向こうで中年の女性がプッと吹き出し、弟は顔面蒼白となり、私は知らんぷりするという一大珍事となってしまったのです。

 私だって頭にきて生徒を怒鳴りつけるとき、興奮のため、
「アパキャラ、ガラゲンナァ!」
とか自分でも分からないことを言って相手を怯えさせたこともありますが、「怒っているときこそ落ち着いて」と言ってもやはり無理でしょう。ただしそれでも、とんでもないマヌケはしたくないものです。


【怒る前にまず調べる】
 薪能での失態を思い出したのは、実は最近、ネットニュースを見ている中で「あれ?」と思うことがあったからです。

 それは今月9日、韓国のアイドルグループBTS(防弾少年団)が、「ミュージックステーション」(テレビ朝日)の出演を断られた事件にかかわるもので、「BUSINESS INSIDER JAPAN」の記事にあった日本人ファンの言葉です。

「もう日本市場なんて価値がなくなってきてるはずだから、BTSが来なくなったらどうしてくれるのか!とヒヤヒヤです。アイドルが政治的な主張をできない日本の方がおかしいですよ」

 韓国のアイドルが政治的な主張をするのは構いませんし、北朝鮮の人権問題について何らかの発言をしているとしたら聞いてみたい気もしますが、それは別として、私が引っかかったのは「もう日本市場なんて価値がなくなってきてるはずだから」の部分です。

 発言者は「BSTは世界で稼いでいるのだから日本の市場なんか無視できる。今回のことでもう二度と来なくなったら困る」という意味で発言したのだと思いますが、なかなかどうして、日本の音楽市場はそう簡単に無視できるものではないのです。


【世界の音楽市場】
 下のグラフを見てください。
クリックすると元のサイズで表示します

 これは一般社団法人 日本レコード協会「The Record」6月号より、数字をお借りして私がグラフにしたものですが、世界の音楽市場は日米の変則2トップの下に独英仏3枚のミッドフィルダーがつくといった非常にいびつな布陣なのです。

 この形はここ数年変わっておらず、イメージとすればアメリカの総売り上げの約半分が日本で、そのおよそ半分に独英仏(フランスはやや下がる)、さらにその独英仏の3分の1にカナダ・オーストラリア・韓国がついていて、あとは似たようなもの、と覚えておくと忘れません。
(2017年、韓国は頑張ってこの群れから一歩抜け出し、独英の4割近くになっています)

 驚くべきことにここのところずっと、売上高は日本とアメリカだけで世界の半分(50.05%)にも達しているのです。
 ここに韓流が日米を目指し、ジャニーズやAKBがアメリカに行かない理由があるのです。


【ジャニーズ、AKBは世界を目指さない】
 日本でもかつてのPUFFY(パフィー)やPerfume(パフューム)、最近ではBABYMETAL(ベビーメタル)と、アメリカで活躍する歌手やグループがないわけではありません.しかし全体としてはパッとしません。

 そこで私も以前は、“きゃりーぱみゅぱみゅ”や“ももいろクローバーz”がフランスのジャパンエキスポで喝采を浴びたと聞けばフランスを中心に荒稼ぎをすればいいものをとか、ジャニーズやAKBみたいなグループはアメリカには絶対いないからいわば隙間産業のように入り込んで大儲けすればいいものを、と思ったりしたものです。
 しかし上のグラフを見れば一目瞭然。市場規模が日本の三分の一しかないフランスに殴り込みをかけるのはばかげているし、アメリカに進出しなくても国内で十分稼げるのです。

 もちろん彼の国で大成功してマイケル・ジャクソンのようになれば収入も天文学的です。しかしそれは成功したらの話。日本における収入を犠牲にしてまで試す価値のあることではありません。国内でチマチマと、しかし莫大な収入を守っていればいいのです。
 それに外国暮らしは何かと気を遣います。


【韓流は日本を忘れない】
 韓国は違います。
 市場規模から見ると日本は韓国の5.5倍、アメリカは12倍もあるのです。試してみるだけの価値はあります。

 もちろん実力がなければだめですが、研究して努力してやってみて、その上でダメでも失うものは多くありません。
 ダメでもともと、すべてか無か、野心ある若者にはやりがいのある世界です。韓国からはこうして日本仕様・アメリカ仕様のグループ、音楽、ダンスが続々出てくるわけです。

 初めの方で紹介した、
「もう日本市場なんて価値がなくなってきてるはずだから、BTSが来なくなったらどうしてくれるのか!」
とヒヤヒヤされてるBTSの熱烈ファンさん、大丈夫です。
 道を歩いていてあちらに1万円札が落ちているからと言って目の前の5千円札を拾わずに行く人はいません。日本は十分に魅力的な市場です。

 政治的立場から敢えて訪問しないというなら別ですが、原爆Tシャツのことさえほとぼりが冷めれば、日本人の多くは「来るな」と言わないはずです。
 彼らの野心に応えてあげましょう。



 
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