2018/9/26

「50年目の恩返し」〜情けは人のためならず  いいこと


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(ウイリアム・マクタガート「春」)

 ウェブサイトをあちこちめぐり歩くことを昔はネット・サーフィンとか言いましたが、今は何というのでしょう? いずれにしろ私はそういうことをしないのですが、ニュースや解説記事、時事問題に関するコラムなどはよく読みます。

 そして時々心から“この話いいなあ”と思って記録に残したり紹介したい気持ちになるのですが、記事をまとめるのが苦手というか面倒くさくて、たいていはWordにコピペで張り付け、ドキュメント・ファイルに投げ込んで終わりになってしまいます。
 いつかまた見るだろうと思いながら、結局読み直すことなどないのですが、今日は記事ネタがないのと、何かとても心優しい気分になれたのでもう一度引き出して、ひとつ紹介しておこうと思います。

 それは日本経済新聞と日経BPが共同運営する「NIKKEI STYLE」というサイトにあった「人見知り少女が折れない官僚へ〜村木氏育んだ土佐中高 村木厚子・元厚生労働事務次官が語る」という記事です。


【村木厚子さんのこと】
 村木厚子さんと言えば厚生労働省の課長時代に大きなえん罪事件に巻き込まれ、嫌疑が晴れたのちは復職して最後は事務次官にまで上り詰めた有名な女性です。厚労省の女性事務次官は16年ぶり二人目という快挙でした。

 「NIKKEI STYLE」の記事全体は彼女の卒業した私立土佐中学校・土佐高校の自由な校風、個性的な教師、そして同級生たちの間で、極度に人見知りな少女(村木さん)が静かにゆっくりと人間関係の基礎を育んでいく様子を描いたものですが、その後編「家事の基礎も習得 自立促した土佐中高の楽しい授業 村木厚子・元厚生労働事務次官が語る(下)」に私の心が動かされた美しい逸話があったのです。
 それは次のようなものです。


【50年前のできごと】
 私立土佐中学校高校時代の村木厚子さんはまったく冴えない人見知りの少女で、
 席替えで初めて隣の席になった子にあいさつができない。「明日学校に行ったら『おはよう』って言ってみよう」と家を出て、けっきょく言えずに終わる。そうこうするうちに次の席替えになっちゃう。
 そんな子でした。
 同級生に「西村(村木氏の旧姓)さん、声たてて笑うことあるんだ」と言われたこともあります。いかに発語していなかったのか。重症ですよね。

 席替えは担任の教師が強制的に決めてしまうので隣の席が空くということはなかったのですが、一度だけ「今日は自由に決めていい」ということがあって村木さんは困ってしまいます。
 女子が少なかったので、女の子同士で隣に座ってはいけない、とのこと。そうなると、隣に座ってくれる男の子を見つけなきゃいけないですよね。私は誰とも口はきかないし、みんな苦手だったから、もう自分はどうなるのかな、と思って。

 そしてここからがいいのです。
 その時、私の隣に座ってくれた男の子がいました。小村君くんという子なんですけど、勉強はすごく良くできるし、バドミントン部だったかな? スポーツも万能の、学級委員長でした。彼が私の隣に座ったのをみて「あ、学級委員長が責任取ってくれたのね」と思いました。
 私はこのしれっとした言い方がとても気に入りました。

 責任を取ったとしても小村君はそんなに重苦しく、勇気を奮ってイヤイヤ座ったわけではない。村木少女(ほんとうは当時は西村)も学級長に責任で隣に座ってもらって卑屈な気持ちになったわけではない、ほっとはしたがものすごく感謝をしたわけでもない――前後の文章のせいもあるかもしれませんがそんなふうに思えるのです。
 ある程度あたりまえのことが起こった――。校風も仲間の雰囲気も、きっとそうなんでしょうね。


【50年後のこと】
 それから50年後、厚労省を退官した村木さんはあちこちから引き合いのある中で、母校の土佐高校からも理事を頼まれます。そのとき言われた言葉が、
「実は次の校長は小村君だ。小村君を助けてやってくれ」

 そうです。村木さんの隣に座ってくれた小村君は大学を卒業したあと母校の教師となり、その時は教頭職にあったのです。
 村木さんは、
 もう絶対断れないですよね。校是が「報恩感謝」なのですが、50年近く前のご恩をようやくここで返せるんだ、と思いました。ほんとに世の中ってよくできていますよね。

「情けは人のためならず」と言いますが、ほんとに世の中よくできています。恩を施せば必ずいつか返ってきますし、恩を覚えていれば必ず返す機会は巡ってくるということです。

 今の私には影響の与えられる子どもは孫のハーヴくらいしかいませんが、50年後に返してもらえるような善きことを、隣の冴えない女の子に自然にしてあげられる子に育ってもらいたいものです。

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