2016/11/9

「アメリカ大統領選挙の憂鬱」A〜子どもに説明できない  政治・社会


 この文章を書いている日本時間8日夕刻にはまだ投票すら始まっていませんが、アメリカ大統領選挙の帰趨を考えると心の底から憂鬱になります。
 24時間後の9日夕方にはすでに新大統領が決まっていて、その名がドナルド・トランプだっら本当に気が重い。今でも日本のテレビで一週間以上バラク・オバマの顔を見ないということはありませんから、トランプが当選すれば来年以降、私はあの金髪の大男の不愉快な顔を毎週見ることになります。それはやりきれないことです。

 なぜトランプではいけないのか。
 ここ一か月余り、日本の“識者”の中にも公然とトランプ支持を打ち出す人が出ていますが(お前らはヒラリーのズルさ汚さが分かっていない、バカ者どもが!)、私はとりあえず、あんな下品で厚顔無恥な男が世界のリーダーになるのがいやなのです。
"Make America Great Again"と言いながら具体的な政策は一切明かさない(たぶん“ない”)、人種差別・女性差別発言を繰り返し、人の悪口を言うことに終始するような男――。
 彼が当選したら、そんな男がアメリカ大統領であることを、子どもたちに説明させることがかなり難しいと思うのです。

 もちろん過去にも現在にも、内外に人格的に首を傾げるような政治リーダーはかなりいました。しかしベルルスコーニのイタリアもドゥテルテのフィリピンも世界を動かすような大国でありません。ましてや横山ノックの大阪も青島幸男の東京も、世界レベルで言えば大した影響力はありませんでした。しかしアメリカは違う。

 例えばアメリカ大統領が「日本の核武装も認める」と言えば国内に活気づく勢力はいくらでもいます。北朝鮮が着々と核大国の道を歩み、韓国にも核武装論が動き始める、それを抑えるはずの中国が北の核を黙認する状況で、アメリカの後押しを受ければあっという間に日本も核大国です(原料となるプルトニウムならいくらでもあります)。それだけの影響力のあるアメリカ大統領を、「やらせてみたら面白いかもしれない」といった程度の理由で選んでいいものか?

 トランプのあの極端な言動は選挙向けのものであって、いざ政権を取れば共和党から大量の人材が政府に入っていく、それに“二つの心臓”と言って合衆国はホワイトハウスと議会の両方が一致しないと何もできない、したがってトランプも大統領になればその言動もおのずと常識的な範囲に収まるはずだ――そういう説明もあります。
 しかし現在トランプがしゃべっていることはすべて公約となります。いかな現実主義のアメリカでも「公約の半分も守らなくていい」というわけではないでしょう。そしてトランプの言っていることは“話半分”でもたいへんなことです。

 政治の世界を侮ってはいけないことは、今から八十数年前、ドイツで背が低くて髪が薄い、そのくせ大仰な仕草と内容の演説で人を煽り立てるちょび髭の男が、政権を取った後どうしたか、それを思い出せばすぐに分かります。
 彼が選挙を通じて政権を取ったとき、ドイツ国民のかなりの人々と世界のほとんどが「結局ヤツは大したことはしないだろう、できはしない」と踏んだのです。
 彼は根っからの人種差別主義者で共産党嫌いでしたが、首相になったとき約束したのは、国際協調とワイマール憲法の遵守、そして共産党との共存でした。それらは全部のちに嘘だとわかります。
 しかしそれでも分かったのは“のち”のことだったのです。最初からウソが見え透いていたわけではありません。

 ところがトランプは選挙運動中に発言したことでも平気で「言っていない」と覆します。それが支持者には“剛毅”と映ります。
「地球温暖化はでっち上げだ」とか科学的根拠のないことも平気で言います。しかしそれも支持者にとっては見事に“看破”したことになります
 女性問題で次々と事実が出てきても「私ほど女性を尊敬している人間はいない」と平気で言い矛盾とも恥とも思っていません。支持者はそこにユーモアを感じます。
「メキシコ国境に壁をつくる」と言い「日本や韓国が金を払わないのなら米軍を引き上げる」と言い、「イスラム教徒は国内に入れない」と言いい――、それが可能なのか、それで世界に冠たるアメリカが成り立っていくのかと思うのですが、支持者にとっては「やっとホンネを言ってくれる大統領候補が出てきた」という話になります。

 さて、私はこれに続けて「やっとホンネを言ってくれる大統領候補が出てきた」ということと、ポリティカル・コネクトス(political correctness)についてまとめておこうと思いました。 
 今トランプ陣営ではやっている言葉が、
「ポリティカル・コネクトス( political correctness)にはウンザリだ」
 というものだと聞いたからです。しかし時間がなくなりました。

 私はこの続きを明日の夕方、書くつもりです。そのときそれを「トランプ新大統領誕生!」という歓喜の声の中で暗澹たる気持ちで書くのか、あるいは「ヒラリー新大統領誕生!」という歓声の中で、少しほっとしながら、しかしやはり明るくなれないまま書くのか――今は本当に憂鬱な気持ちでその様子を思い描いているのです。

                                 (この稿、続く)

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