2016/8/27

「芸能人の値段」C  教育・学校・教師


 高畑裕太が芸能界に与えた経済的損失は数千万円から1億円と言われていましたが一日経って数億円という数字も出てきました。
 私の息子のアキュラは容疑者とほぼ同年齢ですが、交通事故や器物損壊によって直接的に数億円の被害を与えることはできても、その存在が社会から隔離される(留置所や拘置所に入る、社会的活動が禁じられる)ことによって失われる価値は1万円にもならないでしょう。普通の22歳は他人に迷惑をかけるにしてもその程度です。しかし高畑裕太は“普通の22歳”ではありませんでした。
 今後請求されるかも知れない数億円の損失は、裕太一人ではとても担いきれるものではありません。当然高畑家として背負っていくべき負債となりますが、困ったことに母親も今後は今と同じペースで仕事を続けていくことはできないでしょう。大変な未来です。
 芸能人として高額の収入を獲得し、周囲からちやほやされる代償として彼が背負っていたのはそういうものでした。もちろん彼は気づいていなかったでしょうが。

 子どもがウカウカと派手な世界を目指さないように、今回の事件は一緒に注目しておくのもよいかもしれません。ただし金で解決することは大した問題ではないとも言えます。ここ一年余りの間に、そう思い知らされる事件がいくつかありました。

 ひとつは5月の末に東京都小金井市で起きたアイドル刺傷事件です。これについては5月26日・27日に「距離の問題」という表題で記事にしました。厄介なことに芸能人(アイドル)との距離がファンの恣意に任されるようになったというお話です。
 ファンがその気になれば京都と東京という地理的距離も、アイドルと一般人という関係性の距離も、簡単に飛び越えることができます。
「腕時計をプレゼントする意味を知っていますか?」
と訊ねられたアイドルは、問いに正しく答えなければなりません。なぜなら二人は一心同体で分からないはずはないからです(と彼は考える)。それにもかかわらず答えないというのは分からないフリをしているだけ。それは誠意に対する重大な裏切りで、裏切り者は償わなくてはならない――と、そんなふうに彼は畳みかけてきます。

 かつて成功した芸能人はスターと呼ばれました。それは文字通り天空に輝く星で私たちには手の届かないものでした。しかし今やそれは地上に降りてきて私たちの隣にいる――そうした擬制を取っています。取らざるをえないからです。
街に出ると四方八方から見知らぬ人々が声をかけ、何のためらいもなく近づいてくる――芸能界に生きるというのは今日そういう意味であること、子どもたちも知っておく必要があります。

 ところで今月初め、歌舞伎俳優の市川海老蔵がある女性週刊誌を名指しで、何度目かの自粛要請をしました。それによって図らずも記事の内容にお墨付きを与えてしまったともいえます。しかし本当は、認めたくない深刻なものでした。
 私が子どものころは政界や芸能界の大物が、自分に都合の悪い記事の載る週刊誌を買い占めたといった噂がたびたび流されました。あるいは特定の誰かに見られたくない週刊誌を、家族が必死に身近な場所から回収しまくったといった話もありました。しかし今日そんな試みをする人はいません。
 週刊誌など、買い占めたり回収したりしても意味がないからです。記事の内容はあっという間にネットに引用され、拡散してしまうからです。その情報を“隠したい誰か”が見てしまいます。
 
 市川家について言えば入院中の麻央さんに関するありとあらゆる情報がネット内にあり、それを麻央さんがいつでも見ることができるのです。嘘もまことも、隠しておきたいこともそうでないことも、一切合切がそこにある――市川家の側に立って考えればこれほど恐ろしいことはありません。
 現在のところ上のお嬢さんが5歳、下の勸玄君は3歳ですから問題となりませんが、数年先には相手が子どもでも真実を伝えなればならなくなります。そうしないと偽情報に踊らされてしまうからです。
 けれど家庭内には子どもが知らなくても良いことはいくらでもあります。知らせることがその子のためにならないことだってたくさんあるのです。それも隠し通せない。

 ネットが登場してから、芸能人であることがほんとうに危険な時代になりました。簡単にアイドルを夢見るというわけにはいきません。そのことも子どもに教えてあげなくてはなりません。

 私のところは娘も息子も大学は軽音楽部でバンドに参加していました。ですから少し心配でしたが、幸いなことに二人ともその道に進むことはありませんでした。ほんとうに親孝行な子たちです(「芸能界を目指すほどの容姿にも能力にも恵まれなかった、私の子だから」という事実は別にしておきます)。


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