2012/9/24

教師なんてロクなものではない  教育・学校・教師


 まだ息子が1歳前後の頃のことです。
 週の終わりごろ、急な熱を出してまだ赤ん坊の息子は保育園から帰されてきました。しかたがないので妻が午後休みを取り、病院に行って風邪と下熱の薬を処方され帰ってきました。

 ところが土曜日の夕方になっても、熱は下がるどころか上がる一方で、不安になった妻はおそるおそる病院に電話します。ところが電話口に出た看護師は、もう診察時間が終わろうとしていたためでしょうか、冷たく、
「熱が出て心配なら薄着をさせて、オンブをして外をしばらく歩きなさい。そうすれば熱は下がる・・・」
 アメリカあたりでは熱が上がったら水風呂に入れるというやり方もあるようで一定の合理性もあるらしいのですが、当時の日本ではとてもやる気になれません。翌日曜日も熱は下がらず、息子の目は真っ赤です。

 月曜日、日中は私の母に頼み、夕方、早退した妻が再び同じ病院に行きました(夫婦でやりくりしていても、どうしても一方が続けて行くということも出てきてしまいます)。そして泣きながら帰ってきたのです。

 訊くと息子の顔を見るなり、医師は烈火のごとく怒りはじめたというのです。
「どうしてこんな子を放っておいた、なぜ早く連れて来なかった。子どもを殺す気か。だから教師はロクなものじゃない。本当に子どもが手遅れになくなるまで、病院に連れて来ない」

 急な高熱と両眼の充血はプール熱でなければ川崎病の兆候なのだそうです。プール熱だったらたいしたことはありませんが、川崎病はしばしば重篤な心臓疾患を後遺症として残します。

 もちろん川崎病かもしれないという切なさもありますが、妻は「連絡だってしなかったわけじゃない、看護師に突っぱねられてしまっただけだ、週明けの朝一番に来なかったのも息子のことを疎かに考えてのことではない、教員という仕事をしていればわが子のことだけを優先するわけにはいかないこともある、それを『殺す気か』と…」妻はそう言って嘆くのです。

 幸い薬が合って翌日には熱も下がり始め、結局プール熱ということで事なきを得たのですが、この「教員なんてロクなものじゃない、手遅れになるまで病院に来ない」という言葉は、いつまでも心に残りました。

 一昨日、一人の教員の死が新聞に報告されていました。まだ42歳の若さです。中学生と小学生の二人の女のお子さんがおられます。奥様も教員です。
 昨年の1月かその前年の12月、そのころから続いていた咳が次第にひどくなり、6月になって胸筋が痛み血痰まで吐くようになったので病院で診てもらったところ、すでに手術できないほど広がった肺がんだったのです。
 その後十日足らずで療休に入り今日まで闘病生活を続けてこられたのですが、ついにお亡くなりになりました。診断から1年3カ月目のことです。

 この方に限らず、病院に行けばいいのに先延ばしにして、結局手遅れになってしまった教員の例など、枚挙にいとまがありません。一昨年などは初診のその日に緊急入院となり、わずか一週間でがん死された先生さえいました。その日まで病院に行かなかったのです。

「教員なんてロクなものじゃない、手遅れになるまで病院に来ない」
 目の前に児童生徒がいて毎日の授業があれば、自分のことは後回しという現状が分からないわけではありません。しかし結局大きな迷惑をかけるくらいなら早い段階の小さな迷惑で済ませてもらえる方が、よほど子どもたちにとってもありがたいことであるはずです。

2



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ