ジャーナリスト山根一眞氏が、「週間ポスト」誌にて長年連載の「メタルカラーの時代」の単行本の第7巻、「メタルカラー烈伝 温暖化クライシス」小学館刊。
http://www.yamane-office.co.jp/
山根一眞氏のサイト↑。
枕になりそうな分厚い本で、値段もいい。2006年の11月に出ていることに気付かなかった。
「メタルカラー」とは何かというと、事務職を意味する白い襟:ホワイトカラーに対し、創造的工業技術者の呼称として「金属の襟:Metal Collar」の持ち主という意味を込め、山根氏が命名したもの。
一般に、ホワイトカラーに対して工場労働者がブルーカラーと呼ばれるのだが、これは極めて狭量な呼び方であって、もちろん工場労働者を含む現場の技術従事者達にはもっとふさわしい呼び方があるはずだ、ってことである。
そして「メタルカラーの時代」 1〜7巻は、現場で素晴らしい仕事を成している人々への熱きインタビュー集である。
昔からこれが好きで、調べてみると第1巻が出版されたのは1993年、私が就職してすぐの頃だ。ずいぶん経ったもんである。
ぶっちゃけて言えば、エンジニアを代表とする現場の人々の自慢話なのだが(笑)、山根氏が心から面白い!凄い!と思った事を成した人々を探しだして話を聞き、その中でまた凄い仕事をしている人のエピソードが出てくると次にその人へ話を聞きに行ったりしていて、実に面白く、実に感動的な苦労話が凝縮されている。
はっきり言って、泣ける。熱い本である。何度も涙腺が緩む。
今回の第7巻、最初の章は平成16年の新潟県中越大地震において、土砂崩れに巻き込まれた母子3人の救助活動を行った、東京消防庁のハイパーレスキュー隊の隊員3人の話。これも感動的なのだが、この3人のインタビューの中にこんなやりとりがある。
−ワゴン車の埋没箇所の上方にせり出していた差し渡し15メートルほどの巨大な岩が余震で崩落の恐れがあったんです。『落下すればワゴン車のほうに転がってくるだろう』という助言もありましてね。そうなれば活動中の隊員を直撃し二次災害は必至。隊員の命を預かる私としては、まずそれが気がかりでした。
−『転がってくるだろう』との助言はどなたが?
−国土交通省の土木研究所から来ていた、斜面災害のプロの方たちでした。実に的確にアドバイスしてくれた。
−我々は『先生』と呼んでました。何を聞いても迷わずスパッと答えが返ってくる。判断は冴えわたってましたよ。何百、何千もの土砂崩れや時すべりを見てきたに違いないと思いました。現場直前で大きな余震を食らい、萎縮していた我々が一歩を踏み出せたのは、先生が、『私も現場に行きますから』といってくれたことも大きい。
(以上引用)
その『先生』が、国土交通省土木研究所の地盤工学の専門家、三木博史さんと藤澤和範さん。この二人を探しだして行ったインタビューが、本書の2章にある。
カッコイイ!!!!!泣ける!!!!!
エンジニアの仕事というのは例えば、検討→予測解析→計画→試験→データ解析→判断、ってな感じになるので、こういう作業は大抵が机の上か、コンピュータの前でやることになり、そこではじっくりと考える時間があって、瞬時の判断が必要になることは滅多にない。
とは言え、数少ない瞬時の判断力が必要な現場仕事をしていた時期が私にはあって、あれは実に手応えのある仕事だった。
俺が現場で仕事をしていたとき、このお二人と同じくらいに、現場の皆から信頼されるエンジニアで居れたかな、と思い起こす。後悔もたくさんある。それでも、俺もあのときは精一杯頑張ったつもり。それは誇りに思ってる。今のところは。
第7巻の中では、私の直接の知人がインタビューされていて驚き。いい仕事してるねぇ。
「温暖化クライシス」という副題は、本書では環境問題へ取り組む人々が多くとりあげられているため。ここにも燃える話がたくさんある。
この本のタイトル、『列伝』ではなく、『烈伝』である。まさに、『烈』の字にふさわしい仕事の数々。日本の現場にはこんな人達がいてくれるのだ!と元気が出てくる本である。自信を持ってお勧め!

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