北風が何回か吹いて、枯葉が全部落ちてしまうと、農場から枯れ木越しに八ヶ岳の形がわかるようになり、遠くに蓼科が見える。
田んぼに落ちていた穂がトラクターですき込まれて食べるものがすっかり無くなると、農場の前の熊笹の藪に、あちこちから腹をすかせた雀が集まってくる。
その藪の横が、耕作放棄された栗林や桑畑だから、何かしらまだ食べるものが残っているのだろう。
おとといの夕方、その藪でちょっとした騒ぎ。
何の種類かはわからないけれど、小型の猛禽が雀に襲い掛かり仕留めて飛んでいった。
初めて見た。
一瞬だった。見事だった。
それから約一日。農場のまわりから雀の姿が見えなくなった。
鳥インフルエンザが流行していて、家畜保健所からもその対策について連日連絡があったりもするので、その雀たちがちょっと気になっていたのだけれど、どんな対策よりその猛禽一羽でカタがつくのかと感心する。
まったく人の営みなんて自然の営みに比べれば小さなもんだなぁ。
農業なんて自然の営みのカスリを取ってるようなもんだなぁ。
思いをめぐらせて仕事に戻ろうと足下に目を移すと、落ち葉の中でタンポポが咲いていた。
「随分不器用なやつだなぁ。もっといい季節に咲けばいいのに。」
と思ったけれど、いやそれはそれで違うな。
こいつには今が一番いいタイミングなんだろうな。
北風が何回か吹いて、枯葉が全部落ちてしまうと、白州は何もなくなる。何も。
(寒くなってきましたが、皆さん元気にお過ごしください。)
