さすがに8月もお盆を過ぎて10日。
虫の声がにぎやかになってくる。
秋の入口。
バカンスのシーズンはこのあたりも車がいっぱいで、見たことのない県外のナンバープレートを見つけてナンバーの種類が増えている事を知る。
そんな季節には、たま〜に
「佐藤さんですか?ここ佐藤ファームさんですか?!」
と言いながら農場に入ってくるお客さんがいる。
「ネットで見たんですけど場所がわかんなくて〜!」
いやまったくすみません。
ちっちゃい農場ですし、丸太組んだだけの鶏小屋が畑に建ってるだけなんで。
ナビに出ないんですよね。
あちこちぐるぐるさせてしまったようで、安堵の表情で入ってこられる。
それから、出荷作業に追われてなければ少しお話して、数に余裕があれば卵をお分けして。
見送った後に思うのはいつも
「こんなんでよかったのかな?」
ホントにね。
農業とか家畜とかの「面白み」って、
ず〜〜〜っといっしょにいて
面白くもなんともない時間をず〜〜〜っと過ごして
あるときある瞬間、「はっ!」って起こったり見えたりわかったりするのが面白かったりするだけだからさぁ・・・
農場に来ていただいても、さえないオヤジがいるだけなんだよなぁ。
わざわざお越しになって・・こんなんでよかったのかな?
いつも思ってることなんだけど。
都市で生活してて、農業の現場に思いをめぐらすのは難しい。
かつて産地直送志向があった有機農産物流通業界でも、この頃は、買う側のニーズに合わせて安全性や機能性についての情報が多くなり、おのずと、生産現場の話は省かれているように思う。
オーガニック野菜は食べてるけど、その野菜がどうやって育つのかは知らないっていう傾向はあいかわらずな感じがする。
ま、みんな忙しくて時間がないからなんだろうけど、食糧の生産現場の事は知っておいて欲しいと思う。
食糧の生産現場ってのは
食糧の生産現場なんだけど
っていうことは
同時に
食糧が生産出来ない現場とも
同意義でつながってるんだよね。
うちなんかでも、たらふくトウモロコシを鶏に食べさせないと卵を産んでくれないんだけど、
トウモロコシの粉さえ食べられない国や地域があることも、いつも、それこそ餌を買うたび使うたびに思うんだよね。
だから
うちの卵を買ってくださるお客さんやブログを見てくれる人にとって
身近に感じられる農場・農業の現場・食糧生産の現場をせめて1つでも持っていて欲しいと思って
身近に感じてもらえるようにやってきたつもり。
(ケージ飼いの養鶏工場じゃ、そもそも何も起こらないからね。)
だから
それを感じて、わざわざ休日に、わざわざ探して、来てくださる方が、とてもありがたい。
農場のすぐ近所まで休日にちょくちょくお越しになるお客さま兼ネットのお友達がいる。
その方もなかなかうちにたどり着けない。
「呪文をとなえるとたどり着ける。」
なんてふざけあう。
でももしかしたら
たどり着けないほうが、いいのかもしれないとも思う。
お客さんのテーブルの上にある卵は、うちの農場の卵で、佐藤ジョージっていうさえない農夫が、毎朝暗いうちに出て行って、納屋で作った餌を、バケツに入れて、「早く早く!」とうるさい鶏たちがいる鶏小屋のドアを開けて食べさせている。
一日にどのぐらいの餌を食べて、どうやって1日過ごして、夜になるとどうやって寝て、森から忍び寄るケモノはどうやって鶏小屋にちょっかいを出して、うちの犬はどうするのか?
テーブルの上の卵の「物語」を伝えて、そこから世界の食糧事情まで想像をふくらませてもらうには
このさえない農場のさえない鶏オヤジはかえって邪魔な気がするからね。
「佐藤ファームってどこですか?」
南アルプスの方にあります。お近くにお越しになって呪文を唱えてみてください。運が良ければたどりつけます・・・
(なんて言ってると怒られますね。GoogleMapで「名水公園べるが」を検索していただいて航空写真にしてみてください。南側を流れているのが尾白川。川の南側を少し東に行ったところにある鶏小屋がうち。軽トラが停まっているからこの写真撮った時は農場にいたんだな。どこかの屋根の下にさえないオヤジいます。
画像は鶏小屋の軒下に巣を作り始めたスズメバチ。次回のブログはこの巣の除去に失敗して診療所に担ぎ込まれる鶏オヤジの話かもしれません。)
