一日の最高気温がマイナス2℃だと、さすがに何も出来ない。
一日中水道やホースの水抜きをしていなきゃならないし、そもそもそういう環境で平気でいられる家畜などあまりいない。
吹雪になった午後、餌やりのバケツを持って鶏小屋を歩く。
「今日はもういいから、たくさん食べて明日産んでくれ。」
少し前、うちの鶏糞を使っている新規就農の野菜農家が農場にやって来た。
用事を済ませ、春の鶏糞の打ち合わせをして、それから立ち話。
「今、ちょっと作業小屋を作ってて・・今年、納豆作ってみようと思うんですよ。」
「あぁ、そういえば前言ってたね。」
このあたりの野菜農家は冬場、何も作れない。
地面が完全に凍ってしまい、つるはしさえ入らない状態になるんだから、そりゃそうだ。関東平野以南の農家と違い、半年しか作物が作れない。
それで何とか冬場の農業収入を得ようと可能性をさぐる。
「まったく。子育て中だったりすると大変だよな。出てくもんは都会のサラリーマンといっしょだもんなぁー。」
「いや、ホントに。」
「でも、この仕事辞めたくねーしなぁ。しがみつきたいよなぁ。」
「そうですね。僕も今年10年目なんですけど、辞めたくないですから。やめたくないですよねぇー。」
「アハハ! だよな! まったく、ちくしょー!」
こんなとこで、好きな事好きなようにやりちらかしてるから、新規就農の平飼い養鶏家や野菜農家なんて、どうせろくな死に方しないんだろ。
そこらの野良で力尽きて、キツネやタヌキに頭かじられて、カラスにつつかれて、虫がわいて、骨になって、その骨をアナグマがひきずっていって・・・。
そんなんだな、きっと。
でね、最期にちょっとだけ思うんだよ。
あん時なぁ・・・必死だったよなぁ・・・ムキになってたよなぁ・・・ってね。
そんなんだな、きっと。
あの頃の僕らはきっと〜♪全力で中年だった〜〜〜♬♪
(スキマスイッチ「全力少年」 なんちゃって、ですけどね。ちゃんとした画像じゃないですが、今日はこんな寒い日でした。)
