8月の東京を歩き回るのは何年ぶりだろう?
なんとなく、めぐり合わせで8月は来ていなかった。
暑いには暑いし、肉体的にはキツイのだけれど、懐かしい都会の真夏。
まだ行った事がないお店をどんどんまわる。
「こんにちは〜あのぉ〜私山梨でぇ〜にわとりを飼ってるぅ〜・・・」
どんどんまわっていると、あることが気になりはじめる。
「ん?・・・どういうことだ?」
こちらも限られた時間で、なるったけたくさん回りたいから、しかるべきお店だろうと、あたりをつけて行ってみるのだけれど。
そういう店に置いてあるたまごが「ちょっと変」なのである。
いわゆる自然食品店のはずなのに、フツーの白いケージ飼いのたまごがビニールパックに入れておいてあったり。(白いたまごが逆に新鮮に感じるわ)
「産卵期間中は薬剤の添加はしていません。無添加です。」と、ことさらに書いてある。(けど、そんなん日本全国どこの農場でもそういう法令があるからやってませんよ。)
「餌にとことんこだわった」と強調している紙パック入りのたまごは、牧歌的なイラストが入ってるけど、ケージ飼育のたまごだよな。(飼育方法や添加物や薬剤の使用にはこだわってないのね)。
料理人も絶賛というキャッチコピーの「地鶏のたまご」っていうたまごを売っている。けれど、それもケージ飼いのたまごだよ。(この場合に「地」は飼育方法には関係なく、たまごを産んでるにわとりの品種にかかるのね。それにしたって外来種の血が濃いだろうし、何のどこを指して「地」と言ってるんだろ?)
大手自然食品チェーン店には、一平方メートルあたり8羽で飼ってますという平飼いたまごが。
(つまり坪あたり25羽、畳一枚で12.5羽 太らすために密集させて飼育するブローラーで坪あたり50羽、うちで坪10羽)
そのたまごの農場の写真があるから良く見てみると、コンクリート床の大型農場でプラスチック製のすのこの上で飼われている。一坪あたりそれだけ鶏がいれば当然薬剤消毒もするだろうし、遺伝子組み換えの餌ではないと書いてあるが飼料添加物についての記述はない。(「自然卵」のイメージをまとった、ケージに入っていないというだけの大きな養鶏場の「平飼いたまご」)
別の自然食品チェーン店では紙パックに入った立派なたまごが立派な値段で売られているけれど、それはフツーのケージ飼いのたまご。(そのお店の「文脈」からすればその店の売り場の棚にあるのは平飼いたまごだよ。これはお客様が誤認しやすい。)
・・・・・こ、これは!・・・・・たまごが化けている!
たまごが化けている。
都合のいいように。
本来、自然食品店で売られるべきたまご
(飼料添加物を排除するために原料を自家配合したり、残留抗生物質などがないように無投薬飼育するためにヒヨコ自家育成をしたり、環境への負荷を減らすために農場の清掃を薬を使わなかったり、鶏の健康維持のために消毒殺菌殺虫が出来ないリスクを犯して土の上・土間で飼ったりという、大変な手間とコストとリスクがかかる「平飼いたまご」)
のイメージに取り付いて、まがいもののたまごが・・・・・・・・化けている。
おのれ化け物〜!
と化け物退治気分。
電車やバスを乗り継いで、どんどんまわる。
どんどんまわって、お話をさせていただく。
どんどん歩く。
結局。
この化けの皮をはがすのは、魔法でも神通力でもない。
たまごを買う、お客様自身の「目ぢから」「審美眼」だけだと思う。
どんな食品が巷にあふれ、自分は何を選び、何を食べるのか?
ラベルには何が書いてあって何が書いてなくて、それは実はどういう意味なのか?
そのために必要な情報を伝える農場と農夫。
それが必要なんだともう一度思い込み。
電車とバスをさらに乗り継ぐ。
・・・・・・・・・・・・
深夜、草木も眠る丑三つ時・・・・
歩き回りへとへとになり、汗だくになり力尽き、終電を逃した鶏飼いのオヤジが街をさまよう。
カプセル・・・終夜営業のサウナ・・・マンガ喫茶・・・
真夜中の都会を、加齢臭をまきちらしながら、山に帰れぬゾンビがさまよう・・・・