表参道 北青山3丁目。
地元で「紀ノ国屋が入ってるアオビル」と呼ばれているビルの裏に小さな店がある。
お洒落なビルや邸宅にはさまれて建つ年季の入った一軒家。その一階。
屋号は 表参道市場「伝」。
自然食品の店?ん〜まぁあえて分類すればそういう事になるのかなぁ?
店主がこれ!と思った物を売っているホントに小さな店で、品揃えも極端に少ない。
野菜、お豆、調味料、なんやらかんやら。
どれもこれも、一つ一つ丁寧に選ばれた品が、丁寧に置いてある。
もともといわゆる自然食品店と呼ばれるお店は、セレクトショップ的な要素があるけれど、ここはもう、ブティックとか画廊に近い感じだな。
2階にちょっとしたスペースがあって、時々いろんな催しをやっていたりして、それがサロンの役割になっている。
うん、やはり食料品店というよりは、何かアートギャラリーのように、発信する要素が強い。
目の前の紀ノ国屋とは明らかに意味合いが違う。
その紀ノ国屋のたまご売り場には、高級スーパーだけに、平飼いの「高級」たまごが並んでいる。
おなじみの大手養鶏場がやっている平飼いたまごが数種類。
同じ平飼いたまごだけどケージ飼いの養鶏場がやっているたまごとうちのとでは、少し意味合いが違う。
いつも書いている事だけど、うちは小さな農場だ。
飼えるだけの鶏を飼い、そのたまごを箱に詰めて宅配便で出荷する。生産量はとても少ない。
生産量に重きを置くと、あまり意味がない農場だ。
ただ、農夫が、悩んだり、怒ったり、笑ったり、にわとりが飛んだりはねたり、産んだり産まなかったり、そういう生き物・家畜やそれを生業とする農業の現実感を伝えられる農場が必要だと思い、現場に出続けている。
そういう意味で紀ノ国屋のたまごとはやはりちょっと意味合いが違うのだろう。
女性店主と話しこんでいる間、ご近所のお客様が次々お店に入ってきてはおしゃべりをしていく。
通りすがりの顔なじみが店主に小さく手を振っていく。
「ここって、案外住宅街なんですよ。」
店のど真ん中にソファがデンと置いてある。デンとど真ん中。
でもそこは、入ってくるお客さんの手荷物置き場になったり、腰掛けて話したり。
何かと重宝している。
なるほどね・・・・そんなお店だ。
しばらくすると大きな両手鍋を持った女の人が入ってききた。
おいしい水菜が入荷して、それ買っていったお客様がスープにしたからみんなで試食するそうだ。
「いっしょに食べていってください。」
はじめて、約束もなしに飛び込みで営業に行ったお店でスープをすする。
あはは、そんなのははじめてだな。
有機であるとか無農薬であるとか、結果としてはそうなのだろうけど、ここではおいしい食材を手がかりに人と人がつながっていくような気がする。
青山通りの一筋裏にそんなお店がある。
全然知らなかったな。
ちょっと秘密にしときたい気分になる。
けど、行ってみてください。
-------------------------
農業や生き物の営みを伝える「メディア」としてたまごを捉えているうちには、ありがたいお店です。
ご縁をいただきまして、うちのたまごを取り扱いいただくことになりました。
どうぞよろしくお願いします。
「伝」
港区北青山 3−10−15
TEL 03-6427-9458
不定休
http://www.tokyoorganiclife.com/s/?id=omotesando-den