家畜保健所(畜産の衛生指導をする県の機関)の若い職員と。
何の話からそうなったのか?山梨県内での馬肉の生産の話になって、
「県内にも馬の肥育やってるとこありますよ。」
なんて話になった。
廃用になったサラブレッドを太らせて、月に何頭か、食肉になるそうな。
さすがに処理場にはすんなり入って行かないそうだけど。
そりゃそうだ。
あれだけいろいろ出来る動物、高い知性がある。
その通路の先で何が起こるか、何か感じないはずがない。
「こんなソーセージ絶対食べない!」
学生時代、乗馬部にいた女の子が息をまいていた。
当時、馬肉入りのソーセージなんてものがあった。
俺だって犬の肉を食うことはあり得ない話。
宮崎で豚牛の口蹄疫が発生している。
ヨーロッパでもアジアでも、時々発生するやっかいな病気だ。
法定伝染病に指定されていて、発生すれば出荷を待たずに殺処分される。
ニワトリにもいくつか法定伝染病がある。
伝染性が強いものにはワクチンがあり、予防接種をする。
ところが「鳥インフルエンザ」については、ワクチンの使用が認められていない。
鳥インフルエンザは、人と家畜の共通の病気で、鳥インフルエンザウィルスが増えてしまうと、それだけ新型人インフルエンザに変化する可能性がふえるということになる。
畜産現場で鳥インフルエンザのワクチンを使用すると、野生株のウィルスの発見が困難となり、対応が遅れる可能性が高くなる。
(何年か前、関東で発生した弱毒性の鳥インフルエンザは、アジアにはない型のもので、精度の低い未許可のワクチンの使用が疑われた。)
新型人インフルエンザへの変化・流行があれば大きな人的被害が出るのはアジア・アフリカの貧困地域だ。
養鶏業界からはワクチンの使用を認めるように要求があるようだけれど、国際的な公衆衛生の観点からすると、発生した時点での速やかな全羽殺処分が効果的な対処方法だと思う。
もし、うちで発生したら。
ということはいつも考えている。
多分、女房と粛々と作業をし、次の方策を考えるのだろう。
人の都合で命を増やし、人の都合で食べたり処理したりする。
そこにこちらの感情など入り込む余地などないように思うし、それが食料になる生き物への礼儀でもあるようにも思う。
感情を押し殺し、諦観し、敬意を払う毎日。(ウィルスにさえも。)
家畜を飼うというのは、そういう仕事なのだと思う。