先月の渋谷。キッチンスタジオのイベントでもたくさんご質問をいただいた。
そのときは、たまごの黄身の色についての質問が多かったなぁ。
雑誌ダンチュウでたまごの特集をやっていたので会場へ持っていったら、ちょうどいいテキストになった。
さすがに集まったお客様は、食材についてよく知ってる。
「たまごの黄身の色ってけっこういろいろありますよね。」
そうですね。おっしゃるとおりです。
たまごの黄身の色は、ニワトリの体の中で作られるわけではない。
エサの「黄色」がお腹に入って、消化されて、血液でめぐって、たまごになるときに黄身の黄色になる。
(その黄色は黄身に使われる以外は体に蓄積されるから、オンドリやたまごを産んでいないメンドリの足や皮膚は黄色っぽい。)
その黄色。
基本的にに天然の素材だけでエサを作ると、黄色が出る主な材料はトウモロコシと乾燥牧草(アルファルファ)ということになる。
ところが、うちもそうなのですが、天然素材だけで飼っているニワトリのたまごを、例えば市場に持っていくと、黄身の色がよくないという理由で加工用の値段になってしまう。
何故だか、昔から、エサに食紅などを混ぜて、たまごの黄身に「色づけ」をする。
現在は、いろんなタイプのいろんな色の着色原料があり、それを使う。
http://air.ap.teacup.com/satofarm/259.html
それを使えば自在に、黄色、オレンジ色、朱色の色づけが出来る。
大量に生産して大量に流通させるには、やはり同じ「製品」でないとやりにくいのでしょう。
大量にプリンやお菓子やマヨネーズや、その他いろいろを作る食品工場でも同じ。
均一なたまごを得るために、着色原料をエサに混ぜることになる。
エサメーカーも試験室でどの色のたまごだと、どういう焼き上がりのプリンになって・・なんて研究をしている。
小売店で売られる家庭用の生食たまごも、黄身の色でお客さんを引きつけようとしている。
「おいしそうに見える」研究開発に熱心だ。
うち?うちはなぁ・・
ケージ飼いだとカゴに入って目の前を自動給餌機のエサをどの鶏も同じだけ食べるようになっているから、同じ色のたまごになるけれど、うちのように平飼いだと、あっちでちょんちょんこっちでちょんちょん、動き回ってついばんで、(黄色が出る)トウモロコシばかり食べるようなヤツが出るから、少し色にばらつきが出る。
それに、季節によってエサの配合も変わるから、季節によって変わる。
それがナチュラルだと思っているんだけどぉ・・無頓着っていえばそうかも。
使っていただいているパン屋さんやレストランさんには、そのこと、ご理解をいただいて。
「発展途上国のたまごの黄身って白い、って聞いたんですけど・・。」
なんてスタッフの女性に聞かれた。それ、微妙に合ってるからおかしい。
「あぁ、それ、正確に言うと、アジアの稲作地帯の、庭先で飼われているようなニワトリのたまごの黄身は白っぽい、っていうことだと思いますよ。」
アメリカなどで生産され、世界各地へ輸出される飼料用トウモロコシとは無縁のアジアの農村では、あまったくず米などがエサになるから「黄色」が少ない。
実験実践が始まったばかりの日本の飼料米で作ったたまごも同じ理由で白っぽい。
その地域地域で個性的な食材がある、ってことの当たり前さと楽しさと。
黄身の色と栄養価や味には、直接の関連性はないんだよね。
「おいしいたまごの選び方」。まずは黄身の色のお話から。
また書きます。どうぞおつきあいください。