「この時季、はなだしたまごも少ないんですねぇ。」
農場に立ち寄ってくれた A ちゃんのママ。
農業や養鶏に特別興味がある人じゃないけれど、農場開放日には A ちゃんといつも来てくれる。
だからそれだけで何となくニワトリの事がわかるようになるんだな。(やっぱり農場は身近になくっちゃ。)
採卵養鶏をやっていると、出荷できないたまごがある。
大きすぎるたまご、小さすぎるたまご、カラの格好が悪いもの、色が白くあせてしまったもの。
そんなのが、毎日の産卵の何パーセントかで出る。
産卵期間の終わり頃だったり、ヒヨコの頃かかった病気の後遺症だったり、強い風やキツネなんかのストレスだったり、そんないろんな原因でうまくたまごを作れなくて、いろんな「はねだしたまご」を産む。
冬至まであと少し。一年で最もたまごを産まないこの時季は、まずそういう何かの理由を抱えたにわとりからたまごを産むのを止めてしまう。
そりゃそうだ。
こんなに寒くて北風も吹いているのに、たまごなんか産んでる場合じゃない、自分の体を守らなきゃ。
だから、はねだしを産むようなちょっと弱いニワトリから産むのを休む。
鶏小屋の北側には風よけの板を張ったけれど、基本的には開けっ放し。
夏は夏、冬は冬の環境で飼っているのだから、あたりまえちゃー当たり前なんだけど・・
その産まない時季がたまごの需要期だったりするんだよな。
ペラペラと養鶏雑誌をめくっていると、「朝採りたまご」で当日スーパーに納品するために午前2時から電照を開始するウィンドレス(窓なし)鶏舎の農場が紹介されていた。
ウィンドレス鶏舎は、環境をコントロールしやすい鶏舎だから、朝を早くして早い時間にタマゴを産ませるなんてことが出来る。
どんどん作ってどんどん出荷する24時間稼動の大きなパン工場をちょっと連想した。
夜中に朝ご飯を食べているにわとりがいる。
雨があがった朝。
にわとりが鳴いてまわりが明るくなってくると、まわりの山がすぐそこまで雪で白かった。
風がビューっと吹いて枯葉を舞い上げ、南の空の低いところをかすめるようにぼんやりした太陽が通過してすぐに沈む。
「産んでくれよー。」
とオヤジがにわとりに頼み込んでいる養鶏場もある。