ふと立ち寄った書店で「新京成電鉄・駅と電車の半世紀」という本を見つけた。A4版で、各駅ごとに今と昔の写真が掲載されていた。私は1963年の春に、福岡県から新京成の二和向台駅前に引っ越してきた。当時の駅は単線にホームのある棒線駅で、掘っ立て小屋のような駅舎(1坪もない)が建っているだけの駅だった。
駅前の踏切はもちろん第4種踏切で警報機も遮断器もない。鉄道連隊の演習線を利用して開業した鉄道だと後年知ったが、見慣れていた西鉄大牟田線とは格段の差で、湾鉄(宮地岳線→現貝塚線)の単車走行をほうふつさせる田舎電車であった。
その新京成はいまや8両編成となり、インバータ制御の電車が走る。隔世の感がある。この本を見ていると当時の記憶が甦り、懐かしい画像も多い。私が初めて接した新京成電鉄は、松戸方は五香まで複線化が完了し、今度は前原−高根公団間の複線化工事が最盛期に入っていたころだった。交換駅は薬円台、高根公団、三咲。続いて高根公団−鎌ヶ谷大仏間の複線化にも着手。二和向台駅は相対式ホームとなり、タブレット閉塞が解消しただけでも近代的な印象を受けた。父が出かける朝7時過ぎの電車は小型車モハ45型の4連運転で、新京成唯一の虎の子の感があった。京成から続々と転属してくる17m車のモハ100型などの電車は塗装変更が間に合わず、青電のままで使われていた。
そんなこんなを思い出させてくれた一冊であった。
白土貞夫編著「新京成電鉄」彩流社(1,500円)

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