参院奪取で意気上がる民主党の小沢代表が
「アフガン・イラクの対テロ戦争はアメリカが勝手に始めた国連未承認の戦争だから、協力する義理はない。テロ特措法延長反対だ。インド洋での自衛艦の給油も中止だ。コラ。」
と言ってたら、タイミングよく国連で感謝決議がされ、「ほらほら国連が日本の活動を認めたゼ。国連中心主義の民主党としてはもう反対する理由はないでしょ?」と、民主党が悪者という流れになっていますね。
しかし、コレは本当か?そもそも正面から小沢を説得せずに国連様に言ってもらおうという一種の外圧頼みのセコイ考えが気に入らないのでちょっと調べてみました。
1、国連の感謝決議はホントかよ?
19 September 2007
Resolution 1776 (2007)
Security Council extends authorization of international security assistance force in afghanistan as Russian Federation abstains from vote
・・中略・・
“
Expressing its appreciation for the leadership provided by the North Atlantic Treaty Organization (NATO), and for
the contributions of many nations to ISAF and
to the OEF coalition, including its maritime interdiction component,
・・中略・・
とあり、確かに9/19の安保理決議1776の前文に「海上封鎖活動を含むOEF連合の貢献に感謝を表明する」とあります。"OEF"というのは「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」の略で日本を含むアメリカ主体の有志連合でやっているアフガン戦争の作戦名とのことなので、つまり
「海上封鎖活動を含むアフガン戦争参加国の貢献に感謝を表明する」という意味になり、海上封鎖活動には日本の自衛艦の給油活動も含まれるから、日本の活動を国連が認めたということになるという話です。
ただ、それで話が終わればいいんですが、この文面が決議本文じゃなくて、前文に書いてあるのが問題となるようです。確かに国連憲章には下記の通り、加盟国は安保理の決定に従うとあるんですが、
Article 25,Functions and Powers,Chapter V - The Security Council,Charter of the United Nations
The Members of the United Nations agree to accept and carry out the decisions of the Security Council in accordance with the present Charter.
決議には常に前文でつらつら決議に至った理由やら希望やらがごちゃごちゃ書いてあるものなので、
決議本文は前文の下に箇条書きで書いてあんだろ?前文は国連加盟国が従うべき法的拘束力がある安保理決定ではない!きちんと日本の国名を明記して決議本文にインド洋で給油しろ!と明記してないかぎり受け入れられない!という解釈が十分成り立ち、結局のところそれぞれの国が好きに解釈しろヨというグレー文言。
まあ、安保理議長声明などはもっと拘束力が弱い(北朝鮮非難決議の時に中国が決議ではなく議長声明にしようとしたヤツですね)ので、それよりは安保理決議の前文の方がマシでしょうけど。
ただ、法的拘束力は怪しかろうが一応安保理決議なんだし、常識的に考えれば尊重しないとな・・になるんでしょうが、じゃあそもそもこれ何の決議なんだよってことになりますが、コレ、決議の下記の通り、
“1. Decides to extend the authorization of the International Security Assistance Force, as defined in resolutions 1386 (2001) and 1510 (2003), for a period of 12 months beyond 13 October 2007;
International Security Assistance Force(ISAF)の1年延長決議ですね。ISAFというのはNATO軍が主体となって国連決議に基づきアフガンに軍を派遣して治安維持をやってるやつで、アメリカ主体のアフガン戦争で派兵された日本を含む多国籍軍の「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」とは全く関係無い。
決議本文にもOEFは出てきますが、あくまでISAFの活動上必要であれば、アフガンにいる多国籍軍(OEF)のヤツらと協力せいと言ってるだけで、日本を含む多国籍軍(OEF)がいいとか、アフガン行けとかは一切触れてません。
つまり、全く関係ないNATO部隊の派兵延長という(恐らく誰も反対できない)決議の前文に無理に、日本を含む多国籍軍(OEF)に感謝、しかもわざわざ海上阻止活動乙の日本向けの文言を追加しているので(ロシアは、説明無しに文言追加すんな!と決議棄権)・・・怪しい感じになります。
感謝決議、
結論としてはホントだけどホントじゃない(解釈次第)
2、小沢代表が言ってる対テロ戦争はアメリカが勝手に始めた国連未承認の戦争というのはホントか?
もう、めんどうだから結論。
ホントだけどホントじゃない(解釈次第だがクロに限りなく近い)
前述のアフガン侵攻した多国籍軍のアフガン派兵「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」、イラクに侵攻した多国籍軍のイラク派兵「イラク自由作戦(OIF:Operation Iraqi Freedom)」は、いずれも一切安保理決議に基づいてないです。アフガンや、イラクに派兵しろという安保理決議は無い。
例外は前述のNATO軍のアフガンでの治安活動での派兵(ISAF:International Security Assistance Force)のみで、resolutions 1386 (2001), 1510 (2003), 1707 (2006) and 1746 (2007) などの国連決議に基づきます。でも、アメリカは国連決議に基づいてると主張してるのはどういうことかというと、
12 September 2001
Resolution 1368 (2007)
Threats to international peace and security caused by terrorist acts
・・中略・・
Recognizing the inherent right of individual or collective sele-defence in accordance with the Chater.
・・中略・・
安保理決議1368の前文(また前文かよ・・)の上記部分「国連憲章に従った固有の個別的あるいは集団的自衛権を認識」だそうです。911で不当な攻撃を受けたから、自衛権を発動し、アフガンに侵攻した(ついでにイラクも)ということらしいです。決議文本文にはテロへの非難、今後必要な措置を取るよとはありますが、アフガンに派兵しろとは一言も無いです。
Article 51,Chapter VII - Action with Respect to Threats to the Peace, Breaches of the Peace and Acts of Aggression,Charter of the United Nations
Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security.
国連憲章51章には確かに上記の通り、攻撃を受けた国は安保理が必要な措置を取るまで自衛権(個別、集団的)を発動して良いとありますが、これを持って(しかも決議前文のみで)
911テロでアルカイダから攻撃を受けた、アフガンのタリバンがかくまって引き渡さないし、安保理の決議も通らないから、自衛権を発動して有志連合の多国籍軍にてアフガン侵攻すると強弁する所が恐ろしいですな。
3、ついでにテロ特措法について
で最後に延長うんぬんが問題となっているテロ特措法ですが、
平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法
(平成十三年十一月二日法律第百十三号)
名前が長いw。
第一条 この法律は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃(以下「テロ攻撃」という。)が国際連合安全保障理事会決議第千三百六十八号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえ、・・中略・・次に掲げる事項を定め、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
上記の通り、一応国連決議に基づき、日本も必要な措置を取るとありますが、根拠として挙げられている安保理決議をつらつらと見てみると、
安保理決議1368 01年9月:
2001年9月11日に発生した恐ろしいテロ攻撃は国際の平和と安全に対する脅威
安保理決議1333 00年12月:
タリバンに対してオサマ・ビン・ラディン氏の引き渡しを迫るべく、当初1999年10月に採択した対タリバン制裁措置を一層強化。
安保理決議1269 99年10月:
テロの行為、方法および実践を、正当化できない犯罪として断固として非難
安保理決議1267 99年10月:
国連憲章第7章の下、アフガニスタンのタリバンが11月14日までに、オサマ・ビン・ラディン氏を引渡さなければ、限定的な制裁措置を科す
さっきのアメリカの自衛権と同じ決議も混ざってますが、すべてテロへの非難決議で、加盟国は軍隊を派兵しろだとか日本がどうしろなんて一言も入ってないです。というか、国連に見切りをつけたアメリカと歩調を合わせて自衛隊出したんだから決議が無いのは当たり前ですなw。
とはいえ一応特措法で根拠とした決議がアフガン戦争のものなので、インド洋の給油はアフガン戦争「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」従事艦のみとし、アフガン戦争支援に限る、イラク戦争「イラク自由作戦(OIF:Operation Iraqi Freedom)」従事艦はダメという建前でやってますが、アメ海軍の艦は両方に参加してんだけど・・給油しちゃってる?アレアレ法律違反ですか?口裏合わせろよヤンキー!と火消しに忙しいようですが、
こう見てくると、
そもそものアフガン戦争もイラク戦争も、インチキな屁理屈こねない限り、国連決議の根拠は無いも同然。ココまで来たらイラク戦争も大量破壊兵器があるフリをしたフセインに脅されて、安保理決議前文の自衛権の行使をした対テロ措置と居直る位の気合を見せろw。どっちだっていいよw
とまあこんな感じで、国連決議一つとっても、いい加減でいくらでも解釈できるし、所詮は常任理事国5ヵ国のエゴの妥協の産物だから、国連中心主義とか言って必要以上に国連を崇めるのはどうかと。利用はしても冷静にほどほどに(分担金支払いも)

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