実相寺昭雄の新作「姑獲鳥の夏」を観る。真夏の平日、昼間の新宿ミラノ座って状況に安堵感をおぼえる。
京極夏彦の原作は、ミステリとしては詐欺に近い、筋だけ取り出すとしょーもないお話である。しかし張り巡らされた伏線や複雑な人物相関で、何となく凄い感じに思わせる力技が原作の持ち味なのであり、ダイジェスト映画にしてしまうと、しょーもないお話だな、という印象しか残らないのが悲しい。
実相寺作品の常として、大作になればなる程エゴが萎縮して詰まらなくなるのだが、今回もそんな感じ。カメラや照明も普段よりトリッキーで無いし、何よりエロ抜きなのがつらい。全年齢向けの映画だから仕方無いのかも知れないが、しょーもないお話だな、と思っていても、いつもの実相寺ばりにエログロな性描写が有れば、まだ観れたんじゃないかと思う。
ネットの掲示板を見ると、原作ファンは何よりも配役に問題有りと怒り心頭のようだけれど、原作ファンで無くてもこの配役には疑問が残る。実相寺組からの参加はチョイ役の堀内正美くらいで、あとはテレビドラマに出てるような有名俳優ばかり。ちっとも哀愁が感じられない永瀬正敏や、小劇場演技丸出しの松尾スズキが見てられなかった。
そこで、70年代ATG時代の実相寺組キャストでの配役を妄想すると、これが実に良さそうに思える。京極堂はもちろん岸田森で、関口君は田村亮、いや篠田三郎か。涼子は桜井浩子だし、お父さんは東野英心で行こう。それが観たい。