戸惑いを覚えるものは幸いである

2010/2/20 | 投稿者: losthouse

オフィス街にただ一軒の牛丼屋。ランチタイムの店内は満席である。

それでも、次から次へと入店して来る男たち。券売機で食券を買い、それを握り締めたまま、カウンタの背後にずらりと列をつくる。先にカウンタで牛丼にありついている他の誰かが、食べ終えて椅子を空けるのを待っているのだ。

そんなカウンタで悠然とビールを飲む、労務者風の男がひとり。顔は真っ赤に上気していて、男の前にはビールの空き缶が既に三本も並んでいる。

男がつまみとして注文していた牛皿は、もう食べ終えてしまっているのだが、牛丼屋のテーブルには必ず無料で置いてある紅生姜が、いまは大量にその皿の上に乗せられていて、男は箸で紅生姜を器用に一本ずつ掴み、くちゃくちゃと噛みしめては、ビールで流し込んでいる。

ぶはー、と酒臭い息を吐き、男がやおら席を立ったので、背後に居たスーツ姿の若者が、自分の番かと思って空いた椅子に座ろうとすると、男は「あ、まだよ。まだ!」と言って若者を制してから、ゆっくりと歩いて入口の券売機へ行き、ビールの食券をもう一枚買って戻って来るのだった。「ぐへへ」とか笑いながら。

そういうひとにわたしはなりたい。








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