「日本酸素から販売されていた潜水具、eOBA(オーバ)」
高圧呼吸・ダイビング系
eOBAとは、enriched oxygen breathing apparatusの略で、“富酸素呼吸器”ってな感じの意味になるんだろうね。
軽い装備で長く潜る事が可能な製品を目指し、開発されたダイビングギアだ。
吐気を再利用(循環呼吸回路方式)するから、泡が出ないんだよ。
写真のようにマウスピースの前に小さなボンベが2本セットされ、長い蛇腹ホース(フレキシブルチューブ)が後方に伸びている。一体どんな仕組みになっているのかな。
上が圧力計で下は開閉バルブ
すっごく大雑把に説明するね。
@潜水開始前に、外気から大きく息を吸い込みます
(あなたの肺の中では空気中の酸素が炭酸ガスに置き換えられます)
Aオーバに吐気を吹き込みます
(オーバの中で炭酸ガスが消滅して酸素が供給されます)
Bオーバ内の空気を吸います
(あなたの肺の中では酸素が炭酸ガスに置き換えられます)
Cオーバに吐気を吹き込みます
(オーバの中で炭酸ガスが消滅して酸素が供給されます)
B、Cが繰り返され、肺とオーバが交互に膨萎する
使用する呼吸気源は、容量50ccの高圧ガスカートリッジが2本。
酸素80%+窒素20%の混合気体が190気圧で充填されていて、一定流量(1分間に1.5リットル程度)でフレキシブルチューブの中に放出されているんだ。
使い捨てのカートリッジとキャニスターは1回分3千円近くした
吐気は、フレキシブルチューブ内にセットされた、炭酸ガスを吸着する薬剤の入った“キャニスター”を通り、供給され続けている富酸素ガスと混じって再度呼吸に利用される。
つまり、肺の中で行われているのとは逆のガス交換がオーバ側で行われていて、チューブ内に酸素が残っているうちは、炭酸ガス吸着剤の能力の範囲内で繰り返し呼吸が出来るという訳。
*計算では、19リットル(50cc×2×190気圧)の富酸素混合気体の供給は、1気圧環境下において10分間位で終わってしまう。
オプションでヘリウム入りのカートリッジなんか出してくれていたら、(効果はともかくとして)話題性が更に上がったのに、惜しいね。
発売は1988年夏。エロかわいい娘を採用したキャンペーンを展開し、南の海で撮られた販促ポスターは、ダイバーの想像力?をかき立てた。
でも、その優雅さとは裏腹に、非常に扱いにくい器材だったよ。
パージベローロック状態(上)
進入した水を下部にあるパージ弁から排出できる
(下)通常使用時のベロー(マニホールド)位置
例えば、キャニスターでの化学変化(ガス吸着)を常に意識して、細くて長い呼吸を心がけなければならない。コレは、ダイビング初心者には絶対にムリ。
マウスピースから口を離す事は許されず、チューブ内浸水の場合の手順も頻著だ。
“第二の肺”と言われるフレキシブルチューブは吐気時に非常に大きく膨らみ、潮流の影響をまともに受けてバタバタと暴れてしまう。
“本来の肺”に“第二の肺”分の自由容積が加算されてしまう訳だから、深度による浮力変化への対応が大変。エントリー時は、吸っても吐いても浮いちゃって(笑)、苦労する。
キャニスターを濡らしてしまう恐れのある“宙返り”や激しい動きは御法度。濡れた薬剤からは劇物が漏出するからね。
酸素分圧、炭酸ガス濃度等、呼気成分は常に変化していて、体調悪化の可能性もあるぞ。
ランニングコストが高く付いてしまうのもキツイな。ホントに。
これらを納得の上であれば、素晴らしい道具として使えるね。
泡が出ないから隠密行動(?)をとれるし、水棲生物への接近にも有利かも。
キャニスターは新型(グリーン色)では容量アップされた
販売終了間際には
潜水可能時間を倍増できるオプション装置も発表されていた
<2011.09.18追記・取説画像>
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