天皇、皇后両陛下の長女、紀宮さま(36)と東京都職員、黒田慶樹さん(40)の結婚式(11月15日)を行うことが決まった帝国ホテル。宮内庁出身の顧問がいることから、同ホテルは「ロイヤルブランド」を不動のものにしたが、経営基盤は決して磐石ではない。減収減益に加え、大株主の米投資ファンド「サーベラス」の株式転売の危機、外資系高級ホテルの包囲網もある。名門ホテルは、積年の憂鬱(ゆううつ)を拭うことができるのか。
●宮内庁OBの力●
ホテル関係者の間では、紀宮さまと黒田さんの結婚式場は、明治記念館、ホテルオークラ東京、帝国ホテルが有力候補だったという。
だが、「明治記念館は式場の規模が小さいことから消え、結局、警備上の面などから、帝国に決まったようです」(業界関係者)。
帝国ホテルには、強力な“援軍”もいた。顧問3人のうち、2人が宮内庁の有力OBなのだ。
2人は、式部副長として宮中行事を仕切ってきた中島宝城(ほうじよう)氏(70)と、外務省出身で式部官長を務めた苅田吉夫氏(68)。
「つまり宮内庁式部職のナンバー1と2が顧問にいるわけです。宮内庁にとっては、これほど心強く、安心して任せられる相手はいないでしょう」(政府筋)
さらに、帝国ホテルに入る「遠藤波津子美容室」も決め手になったとされる。今年、創業100年を迎えた同美容室は、これまで昭和天皇、皇太子の婚礼行事などを手掛けており、この点も評価されたという。
●不安定な大株主●
結婚式場決定を受け、帝国ホテルの株価はうなぎのぼりだ。
19日は250円高で、20日も前日比250円高の2700円となり、ご祝儀相場が続く。ホームぺージのアクセス数や問い合わせも増え、「従業員にも張りが出る」(幹部)と活気づく。
だが、業績は振るわない。今期は5年ぶりの増収増益を予想するが、平成17年3月期(連結ベース)の売上高は約533億円(前年同期比0・2%減)、経常利益は約32億円(同6・9%減)、当期利益は約18億6000万円(同1・3%減)で、減収減益となった。
大株主が米投資ファンド「サーベラス」というアキレス腱も抱える。
サーベラスは昨年11月、帝国ホテルの筆頭株主の国際興業を買収した。サーベラスは帝国ホテル株の保有を続ける意向だが、「投資ファンドだけに、減益決算が続くようなら、売却することもあるでしょう」(アナリスト)。
ホテル業界に詳しいジャーナリストの桐山秀樹氏は「歴史と伝統のある帝国ホテルだけに、株を買いたいという話は多い。米投資銀行ゴールドマン・サックスは、サーベラスが帝国ホテル株を売らないなら、共同出資させてほしい、と申し入れたという。帝国ホテルは魅力的な投資先なので、常に買収の危機にさらされているのです」と解説する。
●外資系ホテルの攻勢●
経営環境も厳しさを増している。
都心には、グランドハイアット東京、パークハイアットホテルなど外資系高級ホテルが林立。
コンラッド東京、マンダリン・オリエンタル東京も今年、相次いで開業する。平成19年にはザ・リッツ・カールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京なども参戦し、新たに客室数が計1000室以上増える。いわゆる「2007年問題」だ。
こうしたことから、帝国ホテルは170億円をかけ、5年計画で約680の客室、レストランの改装を進め、名門復活策を打ち出している。
今回、「ロイヤルブランド」を“受注”したことで、改めて名門ブランドを高めた帝国ホテルだが、油断はできない。
外資系ホテルの支配人は「すでに一部の外資系ホテルは、学習院コネクションを使って皇室へのパイプ作り始めている。外資系ホテルが今回のような準国家行事を開くことは難しいだろうが、皇室関係の集まりなどを獲得できる可能性は高い」と説明する。
帝国ホテルの内憂外患は当分、続きそうだ。


0