夜の街を歩いていると道端に人の列。ラーメン屋か法律相談所かと思って列の先頭に目をやると、なんとそこはラブホテルだった−。こんなウソのような超人気ラブホが、東京・南池袋に実在する。
池袋駅東口から徒歩10分。大通りから1本入ったところに“行列ができるラブホテル”こと「ホテルミント」はある。
付近住民(52)は「(行列は)もう何年も前から。恥ずかしくないのかねぇ、若い人は」とあきれ顔。近所の飲食店員(27)は「お泊まりタイムの1時間くらい前から並んでる。週末の風物詩みたいなもの」と話す。
ある1月の土曜。アドバイス通り宿泊タイムの1時間前、午後10時に同ホテルを訪れた。早くも2組のカップルが、摂氏6度の中で地べたに座り、携帯電話や雑誌で時間をつぶしている。
声をひそめるでもなく、互いに目を伏せるでもなく、不気味なほど健全な雰囲気だ。
列に加わり、20代前半とおぼしき男性に話しかけると「いつも使ってる。やっぱ安いでしょ」と語った。全室1泊6300円均一は確かに安いが、通行人の奇異の視線はやはり気になる。
列はどんどん長くなり、自分たちを含めて14組28人もの“やる気マンマン”カップルがスタンバイ。客層は見た目から察するに20代が中心か。
午後10時半。ホテル内から従業員が出てきて、列の人数を数え始めた。そして最後尾の2組に「時間が来ても入れないので」とわび、他のホテルを紹介。「マジかよー」という言葉を残し、4人の男女が“愛の流刑地”行きとなった。
午後10時50分。ようやくお帰り組とお泊まり組が入れ替わる時間だ。ぞろぞろ行列がホテル内に入り、空き部屋のボタンが次々に押されていく。休憩からの延長組が多かったせいか、瞬く間に満室になってしまった。
フロントの男性に行列について水を向けると、「そうなんだよねー」と相好を崩し、「ヨソ(のホテル)はお客に感謝の気持ちが足らないんじゃないの? ウチより安い値段を出してても、安い部屋は少しだったり、週末だけ高くしたりね」と人気の理由を語った。
ホテルは全体的にムードより清潔感が勝る、行列でも感じたカジュアルな雰囲気だ。部屋の設備も、泡風呂やケーブルテレビ、女性のスキンケア用品やローション、入浴剤までそろい、そこらのビジネスホテルをしのぐ充実ぶりだった。
後日、支配人に行列の経緯を聞いた。当初はロビーで待たせてくれ、という客の要望を「休憩のお客もいるから」と断っていたが、5−6年前のある日、常連客に「外、並んでるよ」と教えられて気づいたという。
「全室同じ値段だが、和室の部屋はふた間あって広いので、そこに入りたい人が並ぶのかも」と分析するが、「並ぶ感覚が分からなかった。ラーメン屋に並ぶのと同じなのかな」と本音も。
とはいえ時には20組も並ぶ日もあって、「なんで週末だけ並ばなきゃいけないの?」という常連の意見もあるという。
支配人は整理券などの解決策も考えたが、無断キャンセルの可能性など問題も多く、「いろんな方にアイデアを伺ってるんです」とのこと。
今夜も男と女が「MINT」の香りに吸い寄せられていく。
[ 2005年2月14日18時0分 ]

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