相手のホワイトソックスは、すでにプレーオフ進出の望みをなくしている。試合前には、ワイルドカードを争っているヤンキースが勝利を収め、地区の優勝争いをしているエンゼルスも、レッドソックスを下した。
勝たなければいけない試合──。それは誰にでも分かっていたことだろう。
初回、ホセ・ギーエンが、レフトに2ラン。「あれで、少しチームに余裕が生まれた」とジョン・マクラーレン監督。2回と3回は、いずれも2死一塁から得点を挙げ、一気に10−2と差を広げた。
両方の得点にイチローが絡む。2回は、2死一塁で打席に立つと、ライト前ヒット。続くホセ・ビドロが四球を選んでつなぐと、初回に本塁打を放ったギーエンが、バットを折りながらもセンター前に運んで、2点を追加。
3回は1点を追加した後、なおも2死二、三塁で打席に立つと、イチローは再び一、二塁間を破って、2人の走者を迎え入れている。
一昨日と昨日は犠打を決め、チームに勝利を呼び込む。この日は、チャンスメークをして、さらに自らも打点を挙げ、チームの勝利に貢献。シリーズを通して見れば、イチローの持ち味が存分に出た。
イチローも悪い気はしていない。「僕は、野球の動きの中で全部できなきゃいけない選手ですから、全部やるつもりですよ。全部、できるしね。実際」と、きっぱり言った。
ただ、そこからの展開が良くない。
先発のフェリックス・ヘルナンデスが4回に2点、5回に1点を奪われて、5点差。その裏、先頭のイチローが三塁打を放ち、1死後、ギーエンの犠牲フライで生還して、相手の流れを断ったものの、ピリッとしないヘルナンデスには、イチローも苦言を呈した。
「まあ、勉強しないことがいっぱいあるわね。34番(ヘルナンデスの背番号)は、まだまだ、そういうところが。まあ、不器用ってところもあるけどね。もう一歩進むには、大事なところだろうね」
さらにイチローは、こう言葉を足している。「何を感じているかじゃないのかな。そこは、センスだね」
9月の戦い。そして、プレーオフ。ここで柱にならなければならないのは、紛れもなくヘルナンデスだが、今の彼では、どこか心もとない。
仮に明日、1試合だけのプレーオフがあるとする。すべての先発投手には、十分な休養がある。もちろん勝てばプレーオフに進み、負ければシーズンが終わる。そのとき、誰がマリナーズの先発投手を務めるべきか?
おそらく、多くがヘルナンデスの名前を挙げるだろう。しかし、今日のピッチングを見た後では、異論も出るはず。全員が声をそろえられる投手に、ヘルナンデスはあと1カ月で成長できるだろうか? 3連勝の陰で、エースの真価が問われる。

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