1963年度作 ピーター・ブルック版『蠅の王』
やっと見れた!!!!!!
たった今見終わった。
すごいやぁ。あまりに自分のイメージしていた通りの映像でびっくりした…
モノクロ、そう、モノクロなんだよ。
私は漫画はモノクロが基本、って人だからカラーは第一印象に入ってこないんです。
だから余計に恐い。新聞も基本はモノクロでしょ、人生の大半を新聞を白黒で読んできた世代は、白黒映像にやたらリアリティを感じるのではないかしら?
ともかく月並みだけど、私はこの作品への思い入れがものすごーく深い。
っか、ある程度の年齢の本好きの人は一度は読んでいるんではないかっていう、名作。
ただ現代では亜流にすばらしい作品がワンサカあって、本書が逆に忘れ去られている感があるのね。
てか、現実今じゃ本当に古典文学の域だから、スピード感が全然ないです。
集団心理ものの「走り」にして、ノンフィクション風風刺小説(煽りにやたらキングが影響を…とかあるけど、この手の心理サスペンスを描こうとする人にとって皆影響されないはずはない、と思うが…、ヤレヤレ)の元祖みたいな傑作なんだけど、こういう帯を付けないと観てもらえないのかなぁ?
というか、最近の営業はそんな安直なコピーしか考えつかんのかなぁ、こんな名作に。いくら売れそうもないっても、品がないよ。
◆ネタバレ注意◆
大体「殺し合い」ってのがやたら目に付くんだけど、こういう言い方は嫌なんだけどお約束の殺し合いのシーンなんて全然出てきません、本当は。
正味1回、それっぽそうなのがあるだけ。
人を殺しちゃおうぜっていう一線は最後まで越えてなくて、「人を殺してやる」っていうのを考え始めてしまう程の悪意が芽生えてくる瞬間の恐怖であって、もともとバトルなんとかとか、得体のしれない何者かが殺戮していくとかいう恐さじゃないから。
なので、この映画はそういう煽りに駆られて観ると全く面白くないです。
また、原作のテーマに忠実なので、映画ははっきりいってエンタメ度も皆無の、予想通り完璧アートフィルムでした(汗)。
なので、有名だし興味あるけど原作読むのタルイわぁ、って人はまず1990年度版映画の方がエンタメ度もテーマ性もそこそこいい線残した力作なので、そっちをお勧めします。
1990年映画>原作>本DVDってのがお勧めかな…悲しいけど。
しかーし、原作に打ちのめされた方(私の様なアマちゃん)は、絶対これは観ましょう。
もう、さっきまで「うわー、これロジャーかぁ」とか、「パーシバルがいる!?」「こんな重要な人物のサイモンの名前が一回しか呼ばれない…って、すげぇ演出(苦笑)」と、一人で画面にぶつぶつ言ってしまってた。久しぶりに観客目線どっぷり。
しかも60年代のばりばりのイギリス映画ですから、アントニオーニが『欲望』だの、トニー・リチャードソンが『土曜の夜と日曜の朝』とか作ってた時代ですから!!
が、繰り返しますが
ピーター・ブルック版です、前衛です。
もうね、それだけでどんだけ観たかったことか(T_T)。
なんかね、やはり舞台やってる人の演出って好きなんですよ。
普通、無人島でジャングルが舞台っていったら、俯瞰でうっそうとした密林と一点の蔭りも見えない海の向こうの水平線とかドーンと出すじゃん?
そういうのはセットクラスで十分なのよ、うん、原作信者は。
で、この映画もいきなり藪からピギーがモソモソはい出てくる、しかもアップで状況、設定さっぱり謎(笑)。でもしっかり後の展開を暗楡してるのよ。
ラーフも限りなく普通の子供、決して優等生でもお利口そうでもないの。
もうここでゾクゾクしちゃうのさ、原作で妄想していた人間には。
で、ジャックは1990年版と同じく精悍で賢そうなのね(つい比較してしまうのが悔しいんだけど、もう1ファンだから許して)。
はじめの15分位までで私にはおなか一杯。たった90分も満たない尺で『蠅の王』やるってのがそもそもアレなわけで。
だからバサッとテーマ追求だけ、どんだけミニマムよ。
ただし要所要所は気味悪いほど原作の描写どおりで、ゴールディングのサービス旺盛な原作に忠実でうっとり。特に後半にかけての岸壁でのシーンは涙もの。
読後、夢に出てきたくらい不気味な対立シーンの舞台が、ほんとーによく再現されていた。
このシーンは山場中の山場だからね、実権者とナンバー2の対比、その末路…
ほぼ、自分がこのシーンは入れてくれ!!と思っていたシーンは網羅されていたかな。
欲を言えば、サイモンとラーフとの会話をもう一つぐらい入れてくれてたら、もっと人にお勧め作品にになったかなぁ、って感じ。
「君はおウチに帰れるよ」とかもちっとサイモンの子供っぽさを残しておいてくれればなぁ…と、思った。
そこは『注目すべき人々との出会い』作ったブルックだから(笑)。サイモンを完璧に象徴として描き、クライマックスも変に煽ることなく(っか、よく分かりずらすぎ感も…)原作にあったような禅問答的なところはカットし(キリスト教でこういうのも変だけど、まぁ、タイトルがここで分かるわけだから)、不可知論者然のサイモンと、淡々とそして不気味で忌々しい蠅のうなり声とが、蛮族に成り下がった子供たちのシーンにカットインされる。
ここがやっぱり原作ファンとしては、一番観たいシーンなんだ「この作者はここをどう描くか」って。
映画化は2回されているが、両作とも描写はほぼ同じだけど、
そこまでの過程でこのシーンに観客がハッとするか(できるか?)、分かれるシーンだ。
そもそも、ガッツリキリスト教圏の作品だし、タイトル然りだし、B.ラッセルやD.ヒューム、エリオットの国の作家だし、なんてったってグレアム・グリーンと同世代なのだから私的にどストライクな作品。
その他、『尖塔』や『ピンチャーマーティン』(すっごい好きだぁ…シックス…ウグッ)なんかもとにかく読み漁ったがこれに総てが集約されてるから、映画はもちろんだけど、原作もぜひぜひ機会があったら読んでみてください。
原作は普通にサスペンス小説として読めます。
◆ネタバレ終了◆
さて、私が原作(翻訳版)を読んだのは学生の頃。現在の装丁大抵(集英社刊)は1990年版の映画のスチールが使われているが、私の持っているバイブル(笑)的なボロボロの1冊は新潮社刊池田満寿男氏のものだ。ここには、いっぱい書き込みやら棒線ひいてたりする。
ラスト数ページは汗で紙がふやけてたりもする(笑)。
余談だが、私はよほどなことがない限り本は捨てないし(ばらけたら自炊する)、売らない。
必要ない本は必要な人にあげる。
話戻して、ここに象徴されるよう現在集英社版書籍のジャケットは1990年版の映画のスチール、または原作の1シーンをイラストで配したものとがある。
して今回、めでたく日本初DVD化(初公開?)された伝説の映画の初回ジャケットは、なんと楳図先生の激インパクトあり過ぎ(笑)書き下ろし盤になっているので、楳図先生ファンは買っとけ。
私ももちろん楳図バージョンです(^_^)。
っつかさ、ある意味楳図先生で蠅の王はベタ過ぎじゃね?
要は蠅の王って、そういう立ち位置のモンなのね、世間的に。
私的には楳図先生のこのジャケ絵は、楳図解釈の蠅の王で先生の描く作品の本質は確かに本作と同じテーマが多いけど、ジャケ買いしたら大失敗、酷評されそうで
個人的にはすげー心配してるんだわ…
どっちかっていえば、こちらのDVDの作風は、池田先生のジャケに近い作風なんだよね、楳図先生ファンとしては微妙なんだが。
長々書いたけど、実はこれを(ブルック版)観たら漫画化しようかなぁ…と、ひっそり思っていたんだ(赤面)。
なんか世間的に蠅の王って勘違いされてね?と、ずーっと思っていて、私ごときでアレだけど、私解釈の蠅の王を思い描いていたので、興が乗ってきたらちびちび着手していこうかなと、画策してます。
その前に上手い人が漫画化しないとありがたいけどね(汗)。
まとまり悪いですが、今日はこの辺で。
只今安く手に入れた中華タブレットにて、フリーの電子版(原書)をダウンロードしたので、読み返しちゅぅ〜
ではでは
PS 原書読んでて思い出したのが、U2の曲で本作の章のタイトルからとったのがあって、「ボノって青いぜぇ」と、思ったのを思い出した(笑)。
ちなみに Load of the flies,第7章 Shadows and tall treesっての。
日本版は翻訳がベタ過ぎて評判悪いけど、私は結構「ラーフ」版好きです。
てか、さらにゴールディングの作風に模して古典的に「レイフ」にしたい…とか妄想してたりもするんだけど(笑)、舞台が一応SFだからね。
原作は英語ですが、実は冒険小説の体をなしているので、案外中学英語で読めちゃったりします、マジで。
それに洋書はタダだからお・す・す・め

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