久しぶりの【営業活動】に行って参りました。
皆さん、私が“優秀な”営業マンだったってこと、知っていますか?
まぁ知らないでしょうね。いえ、知らなくていいんですけど。
コメントの常連、惣右衛門を営業部長と仰ぎ、本業もそこそこに、大阪府下はもちろんのこと、遠く九州四国地方への遠征も辞さないタフネス軍団の一員だったのです。
まぁ、商品パンフレット片手に、飛び込み営業に近いこともやりました。
担当者に三分で追い返される苦い経験を積み重ねました。
で、そんな私が最も特異としていた“技”は、それはもう、本業の出張実演であります。スーパーの特売コーナーでやっているあれといっしょです。見てくださいこの包丁、無意味にまな板も切っちゃいます……ばりの勢いで、実演商品説明です。
私の商品、そして其の実演ということになれば、つまりは模擬授業なわけです。進路に悩む高校生諸君に、自分の進路を具体的にイメージさせるための出張模擬授業が、今週の私に課せられた“営業活動”でありました。実に、四年ぶりの「復活」であります。
復帰戦第一弾は……タフな相手でした。私立高校。理工系大学を上に持つ総合学園。体育系クラブに実績もある。私の演目は、教員養成系大学、小、中、高……となりの部屋では、女子高校生を相手に60代の教員が、折り紙で壁面構成なんぞを作るワークショップしている……いいなぁ幼児教育。わしもあっちがいい。
集まった三十人弱、一人だけ女子。後は体育系男子と斜に構えたやんちゃ坊主二名。いい聞かせられているのか、授業妨害はしないけれど、集中力があっという間に切れてしまう。高校生はちゃんと寝てくれるからいいなぁ……とか言っている場合ではない。営業マンの意地がある!燃えるぜわし。久々に燃えるぜ。
だいたい、2時間の企画ってどうよ。こっちとら、1時間半で話しきるようにプログラムされとるっちゅうねん。4月最初の一発目の授業でやるネタを噛み砕きながら、ゆっくりと話し始める。意識が混濁するものが指数関数的に増えていく〜〜〜。くそ〜〜負けるな自分。
こないだ見た授業なんだけどさぁ……とか話しながら、全力で意識をこっちに向けようとする。板書、ばんばん図式を書いていきながら、埋めていく。なんとか、何とか後半のワークシートを使ったセッションまで保たせるんだ。
熟睡者を10名以下に保つ。うあ。あいつ、痰を吐きやがった。しばらくあいつの顔見ながら話したるわ。体育系やる気男子たちは、実は熱心に板書を書き留めている。聞いてくれる人が入る教室ではひるまない。よっしゃ、定番技に持ち込むぞ、「おさるがふねをかきました」。
このあたりから、すっかり私のペースになってくる。やってくれることやらない子はいる。其の数を増やすのがねらいさ。最初指名しても応えてもらえなかった教室が、だんだん挙手が生まれてくる。最後の5分。総まとめのつもりで、それこそ昨日見た授業なんだけど……、教室が社会の縮図なんだって、子どもの生活に全部凝縮されてるんだって、教師が出来ること、ほんま少ないなぁ……、でも、ええ仕事やで。としゃべりまくったけど、最後まで寝ていた一人をのぞいたら、聞かせることができたかな。
体育会系少年たちが、さわやかな声で、「ありがとうございます!」といって部屋を出て行く姿を眺めながら、わしは業者の作ったアンケートの1枚目の個人シートを切り離している。ありがとう、長い時間おつかれさま〜〜っとかいいながら。また縁があったら会いましょう。
厳密に言うと、これは私の商品を買ってもらう営業活動ではない。
子どもたちのための進路指導プログラムである。
売らんかなの宣伝文句ではなく、二時間の大学の授業を模したものによって、彼らの将来の進路をイメージ豊かに切り開くのがねらいである。かろうじて手に出来る営業成果は、このアンケートの個人情報だけ。
本気で、彼らの進路選択のために尽力する気持ちがないと、二時間は保たない。営業であってこれは営業ではない。進路指導という教育活動に他ならない。教育活動である以上、やるからにはほんちゃんの授業でなければならない。断片でも本物を見せないと。という気分で力技の二時間。へとへとに疲れたけど、面白かったです。そして懐かしい気分でした。こんな濃密な営業活動の時間をかつてずっと持っていたことを、久しぶりに思い出したのでした。