メキシコや米国で、豚インフルエンザの多数の人への感染が確認されている。豚と人との関係は、豚と鳥に比べてかなり近く、共通の感染症も多いが、いわゆるひとつの新型インフルエンザと考えて良いだろう。
記事は次のとおり。
WHO事務局長、豚インフル「極めて深刻な状況」
4月25日23時20分配信【読売新聞】
【ジュネーブ=金子亨】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は25日午後、電話回線を通じて記者会見し、メキシコや米国で多数の感染者が出ている豚インフルエンザについて、「事態は急速に進んでおり、極めて深刻な状況」との認識を示した。世界的大流行の可能性については、「(メキシコと米国以外の)他地域への感染拡大は見られない」と述べ、「まだ十分な検証がなされていない」として断定は避けた。チャン氏は「あと数日かけないと、全体像は把握できないだろう」と述べた。
WHOでは同日午後4時(日本時間同日午後11時)から日米など各国の専門家による緊急委員会を開催。WHOとしてどのような勧告を加盟国に出すかを討議する。勧告の選択肢としては、渡航自粛やインフルエンザワクチンの増産なども想定されるが、同委員会で慎重に検討することになりそうだ。
チャン氏は、今回のインフルエンザが、〈1〉通常の流行時期ではない4月に発生している〈2〉インフルエンザに弱い若年層や高齢者ではなく、青年・壮年層に感染者が出ている−−の2点に、特に強い懸念を示した。
WHOでは、飛行機を使っての人の移動が激増していることに伴い、感染症の拡大の速度と範囲が増していくことに警戒を強めていた。
(記事ここまで)
このウイルスに関する専門家の意見。
<豚インフル>新たなウイルスに変異の可能性 専門家の見方
4月25日12時56分配信【毎日新聞】
メキシコでの豚インフルエンザの感染者拡大で、人から人への感染力を持つ新たなウイルスに変異している可能性が出てきた。新型インフルエンザの脅威が高まる中、ウイルスの特徴や必要な対応を専門家に聞いた。
今回のウイルスは、H1N1型。現在も冬に流行するAソ連型と同じ型だ。このため、世界中の人がこの型のウイルスに対して免疫を持つ。この点が人が免疫を持たない型(H5N1型)の鳥インフルエンザとは異なる。またH1型のウイルスは、強毒性のH5型に比べ毒性が低い。喜田宏・北海道大教授(ウイルス学)は「Aソ連型によって、ある程度免疫を持つ人は多い。豚インフルエンザだけではなく、他の型のインフルエンザウイルスや細菌などとの同時感染だった可能性もある」と話す。
一方、死亡率の高さから大槻公一・京都産業大鳥インフルエンザ研究センター長(獣医微生物学)は「従来の豚インフルエンザの範ちゅうを超えており、これまでにないウイルスになっている可能性がある。H5N1型に限らず、別の型でも鳥から豚に感染し新型インフルエンザとなって感染が広がる可能性がある」と話す。田代真人・国立感染症研究所ウイルス第3部長は「人と豚のインフルエンザでは重症度や感染力が異なり、感染拡大の可能性はある」と警戒を求める。【関東晋慈、江口一、永山悦子】
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新型インフルエンザは、トリインフルエンザがヒト―ヒト感染を起こすようになって生じる事態が恐れられていたが、今回は豚インフルエンザのウイルスがヒト―ヒト感染を起こしたと見られている。元は豚インフルエンザだが、ウイルスのタイプはヒトのAソ連型と同じH1N1型であり、ヒトのAソ連型はこの冬流行したことやワクチン接種が行き届いていることから、ある程度免疫が有効なのではないかと期待はされている。
今回の流行がパンデミックになるのかどうかは、まだわからない。メキシコでは3月18日頃から流行が始まっており、それから1カ月以上たったが、世界中に爆発的に広がる事態にはなっていない。これは「なんとかなるかも」と期待していいのかなと思う。でも油断は禁物。
これまでの免疫が全く役立たない感染力と毒性の非常に強いウイルスであれば、季節などにもよるが、すでにパンデミックが起こっているくらいの時間は経っている。21世紀最初の新型インフルエンザが豚インフルエンザだった(断定は難しいが)ということは、人類にとってラッキーだったといえる。
日本への流入を水際で食い止めるため、国際空港などではサーモグラフィを用いたスクリーニングが行われ始めた。豚インフルエンザでなくても、帰国時に熱がある人は足止めを食らうことになる。でもそれは日本を守るためにはしかたがないことなので、ゴールデンウイークで海外に行く人も多いと思うが、ご協力下さい。
パンデミック宣言が出たときは、外出を極力控えるように、人が集まるところに行かないように、人が集まる機会をなるべく減らすように、などの通達が出る。これも、日本の命が失われるのを最小限にするために必要なので、ご協力下さい。食糧の備蓄も忘れずにね。
<追加>
WHO(世界保健機関)は、今回の豚インフルエンザ流行は緊急事態、でも感染対策レベルの引き上げは現時点ではおこなわない、と発表した。
記事は次のとおり。
豚インフルは「緊急事態」=米で感染広がる−警戒レベル引き上げは見送り・WHO
4月26日3時24分配信【時事通信】
【ジュネーブ25日時事】メキシコと米国で豚インフルエンザの人への感染が確認されたことを受け、世界保健機関(WHO)は25日、専門家による緊急委員会を開催した。マーガレット・チャン事務局長は緊急委終了後に声明を発表、同委が「現在の状況が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態になっている」とする認識で一致したことを明らかにした。
声明は警戒レベルについて、「さらなる情報が必要」と指摘。6段階の「3」(人から人への感染が全くないか極めて限定的な段階)から「4」(人から人への感染が増加する兆候のある段階)への引き上げは見送った。
一方、米国では感染が拡大し、ロイター通信によると、中西部カンザス州保健当局者は州内で2人が感染したことを確認。カリフォルニア州でも感染者は7人に増え、米国での豚インフルエンザ感染者は11人となった。ニューヨーク市保健当局者は同日、私立学校の生徒8人が感染した可能性があると発表した。
米疾病対策センター(CDC)当局者は、豚インフルエンザの感染拡大を封じ込めるのは困難と述べ、大流行への強い懸念を示した。
チャン事務局長の声明によると、緊急委は「すべての国が、通常とは異なるインフルエンザのような症状や深刻な肺炎に対する監視態勢を強化する」よう勧告。感染拡大を防ぐため、一段と警戒を強めるよう求めた。
(記事ここまで)
事態は楽観は許さない状況。パニックにならずに、でも備えはしておきましょう。