自民党の笹川尭総務会長は自民党大分県連の大会で、うつ病に関して全く理解していない発言をした。
記事は次のとおり。
<自民・笹川氏>うつ病巡り、誤解招きかねない発言
3月14日21時6分配信【毎日新聞】
自民党の笹川尭総務会長は14日、大分市であった党大分県連の大会で講演し、「うつ病で休む教員が多いが、国会議員には1人もいない。気が弱ければ務まらない」などと、うつ病に対する誤解を招くような発言をした。
中山成彬・前国土交通相が、日教組や大分県の教育について批判したことに触れる中で述べた。笹川会長は「(教員には)自民党を支持する人ばかり作ってくれと言ってるわけではない。良識ある人を作ってほしいということ。知識だけでなく知恵がないと苦しい時に我慢できず、ばたっと突き当たる」と続けた後、この発言をした。
文部科学省のまとめでは、07年度にうつ病などで休職した公立学校の教員は4995人(前年度比320人増)で過去最高だった。【梅山崇、高橋咲子】
(記事ここまで)
ネット上の見出しは「誤解招きかねない発言」となっているが、明らかに間違った理解に基づく明確な発言で、誤解のしようがない。笹川氏の発言からは、「うつ病で休職している教師」イコール「気が弱い教師」と考えているように読める。それ以外の読み方があるなら教えて欲しい。うつ病に関するその理解のしかたは、根本的に間違っている。
私は自分がうつ病になったことはないし(多分)、本格的なうつ病の人を診る仕事内容ではないので、あまり専門的ではないかもしれないが、うつ病とはどういうものかについて少し書いてみる。
(もし間違いがあったら御指摘下さい。)
うつ病は基本的に、責任感の強い几帳面な人の方がなりやすいといわれている。うつ病を発症した結果、気持ちが弱くなっているとはいえるが、気が弱い人がなるというものではない。
うつ病を発症するきっかけはさまざまなものがある。仕事の大変さもある程度関係あるが、比較するからには国会議員の方が同等あるいはより大変であると証明されなければ、この比較は意味を持たない。
何かをきっかけにうつ病を発症する人が多いが、自力で立ち直れるかうつ病になってしまうかの境目が何なのかは、よくわからない。何か悪い結果が生じた時、自分で責任を感じずにうまく回避できる人はうつ病にはなりにくいとは思う。国会議員がそうだと言っているわけではないが。
うつ病にかかっている人は、自分がうつ病であるという自覚に乏しい。何だかうまくいかない、こんなはずじゃないとは思うけどどうすればいいのかわからない、という状態だ。もっとひどい場合には、こんなはずではないと思う気力さえ出てこない。だからうつ「病」なのだ。
うつ病は誰が何といっても病気である。もしかしたら「うつ病という診断を隠れ蓑にしてサボっている人がいる」という証拠をつかんでいて、そういう人をターゲットに発言したのかもしれないが、それにしても本当のうつ病で苦しんでいる人に対して、あまりにも失礼な発言だ。
別の角度から見てみる。「うつは心の風邪」という表現が、よく使われる。笹川氏の発言もこの理解に基づいたものだと考えれば、無理もないかなと思う。「風邪ぐらいで休むなんて、根性がなっとらん」というわけだ。しかし私の理解は、これとはちょっと違う。
本
(がんになっても、あわてない)にも書いたが、何かがあったときの気持ちの落ち込みが「心の風邪」のようなもので、うつ病はそれをこじらせて自力では治せなくなった「心の肺炎」のようなものだと思う。風邪ならしばらくすれば自然治癒力で治るが、自然治癒力だけではなかなか治癒に持ち込めない状態になってしまったのが「うつ病」だととらえている。
それに対して、根性がしっかりしていれば何とかなるというようなことを公言してしまうのは、あまりにも乱暴だ。理解が足りないというか、理解しようという気持ちが足りないというか。
だいたい、本当に国会議員の中にはうつ病で休む人がいないんだろうか。病気でなくても平気で本会議を休める仕事のようだから、その中にうつ病で休んでいる人がいても気がつかないだけなんじゃないだろうか。
公立学校の教員数約92万人(平成19年)とうつ病などで休職した教員数4995人の比率を、国会議員数722人に当てはめれば4名弱に相当する。それぐらいの人数が国会を休んでいても、同僚国会議員も気に留めないし、選挙前に選挙区でニコニコしながら手を振っていたら地元の有権者も気付かないだろう。「国会議員にはうつ病で休む人は一人もいない」証拠も、是非出してもらいたいものだ。
「病気の人をより苦しめる発言」を平気でしているのを見て、これは理解が足りないと思った。笹川氏をはじめとした影響力のある発言をする人には、「うつ病は病気である」という認識を、正しく持っていただきたいと思う。