m3.com(医療関係者向けの情報提供サービス)が開業医を対象におこなったアンケートによると、診療報酬改定後の4月の収入は、軒並み減少しているようだ。
記事は次のとおり。
Vol.20◆改定影響調査結果(3)
「4月の医業収入減少」は74%に達する
「外来管理加算」「検体・検査関連点数」「薬価差益」が影響大
村山みのり(m3.com編集部)
Q.1 早朝・夜間等診療加算(新設)の算定要件となる時間*を診療(開業)時間としているか

※(1)平日夜間(18〜22時)、早朝(6〜8時)
(2)土曜夜間等(12〜22時)、早朝(6〜8時)
(3)日曜、祝日の深夜以外(6〜22時) |
「診療報酬改定を機に診療時間を拡大した」または「拡大の検討をしている」診療所は、5%にとどまっている。残りは「3月以前から診療時間としている」「当該時間帯を診療時間とする予定はない」がほぼ同率となっている。自由意見からも、早朝・夜間等診療加算の新設は診療時間拡大へのインセンティブというより、従来からの診療に対して「評価されてよかった」との位置付けで捉えられていることがうかがえる。
とはいえ、加算が付く時間帯の直前に駆け込んでくる患者が増えるなど、対患者面では診療所によって影響が異なっているようだ。
【自由意見(抜粋)】
「時間内ぎりぎりの患者が減少した点では良かった」
「算定開始時刻直前に受付に滑り込む患者が増えただけで、実質的に算定の恩恵を受けられていない」
「18時前後で点数が変わるので、来院のたびに点数が異なり、患者さんへの説明が大変」
「予約制なので、予約段階でそのことには触れているため、大きな混乱はない」
「点数は妥当であるが、時間設定に問題あり」
「必ずしも18時以降の来院でなくても受診できそうな患者が多い。早朝・夜間等加算の本来の意味をなさない」
Q.2 2008年度診療報酬改定により、4月の医業収益は前年同月に比べてどう変わったか
Q.3 2008年度診療報酬改定内容のうち、医業収益に最も影響を与えているものは何か

「その他」として具体的に挙がった点数は、早朝・夜間等診療加算、レントゲンのデジタル加算、在宅関連点数など。また、薬価差益がなくなったこと、「後期高齢者診療科」の創設などをはじめとする制度改正による受診抑制などを指摘する声も多かった。
目下、「医療崩壊」は病院についての問題として語られているが、今回の調査結果か らは、開業医についても厳しい実態が明らかになった。
【自由意見(抜粋)】
「本当にプラス改定だったのか?信じられない」
「厚労省は医療現場を全く理解せず医療改革を推し進めている」
「説明時間、保険点数の減少、減収がこれほどきついとは思わなかった」
「このまま削減ばかりしていると医業継続が困難になる」
「診療意欲が低下」
「馬鹿馬鹿しくてやってられません」
「算定が複雑でますます分かりにくい。患者に算定内容を理解してもらうことは明細書を発行しても、もはや不可能」
「患者医師関係を悪化させるような悪法はなくしてほしい」
「医師会もっとがんばれ!」
「なるようにしかならない。じたばたするのなら、施行前にすべき」
「勤務医のみならず開業医も疲弊し、診療時間に多くを割かねばならないため、事実上のボランティア活動としての医師会活動、例えば急病診療所勤務、地域看護学校の講師、学校医、介護保険審査委員等々の活動をとりやめている。今後それらの影響が深刻になるだろう」
「次世代がこの診療報酬では開業できないし、今いるドクターも早期に辞めてしまう。実際65歳で健康ながら3月末で廃業した方が身近におられる」
(記事ここまで)
2008年4月の診療報酬改定では、苦しい状況に陥っている病院勤務医を助けたり、産科・小児科・救急などの労働条件を改善するという名目で、開業医の診療報酬が実質値下げされた。その影響がどれくらいになるかは「どんぶり勘定」であったが、予想を上回る減収となっているようだ。
ここまでの世論操作の結果、一般の人たちから見れば「開業医は、それでもまだたっぷり儲けてるんでしょ」と思われているだろう。しかし現実は非常に厳しくなっている。私のまわりの医師100人ぐらいの中でお金持ちといえるのはは、もともとお金持ちの家に生まれた人だけだ。小金持ちはいるけどそれも少ない。
開業医はおしなべて高い収入を得ていると信じて疑わない人のために、次のデータを
Yosyan先生のところから拝借して置いておきます。
>赤字診療所が136件、約13%ある。
>平均収支差の1/4である50万円以下の診療所が283件、約27%ある。
>平均収支差の半分である100万円以下の診療所が454件、約43%ある。
>平均収支差の200万円以下の診療所が658件、約65%ある。
(引用ここまで)
ガンガン規模を大きくして収入を増やしている開業医もあるので、そういう医師に引っ張られて月間収支差平均は200万円であるが、開業医の4分の1は月間収支差50万円以下、8分の1は赤字経営である。
そしてこれは、2008年4月の診療報酬改定前の調査結果である。この時よりも収入が減った診療所が74%ということだから、記事の最後の方のコメント
「65歳で健康ながら3月末で廃業した方が身近におられる」のも無理はないだろう。
医師不足だといいながら、医師が「それなりの仕事」をしていても赤字になって辞めざるを得ない報酬設定をするのは、どうにも理解ができない。このような状況になってまで「社会保障費削減」=「善」という思考にしがみつく人たちは、現実をきちんと見てほしい。