最近のニュースの中に、健康食品の話題を2つ見つけました。一つ目は「緑茶効果、米FDA認めず―伊藤園の表示許可申請」二つ目は「大豆イソフラボン、妊婦や子には推奨できず―食品安全委」。いずれも、健康によいといわれる天然成分を濃縮したものの話題です。
記事はそれぞれ次の通り。
<一つ目の記事>
「緑茶効果、米FDA認めず―伊藤園の表示許可申請」
緑茶飲料メーカー大手「伊藤園」(東京)と同社の米国現地法人が、緑茶成分カテキンによる心血管疾患のリスク減少効果について、商品への表示許可を米食品医薬品局(FDA)に申請、「信頼できる科学的根拠はない」として棄却されたことが11日、分かった。
伊藤園によると、米国で販売する緑茶飲料に「カテキンを含む緑茶を毎日150ミリリットル以上摂取すれば心血管疾患のリスク要因が減少する。FDAも根拠を支持できるとしている」と表示することを求め、動物実験や人を対象にした研究論文など計105件の資料とともに昨年6月、申請した。<記事引用ここまで。共同通信>
<二つ目の記事>
「大豆イソフラボン、妊婦や子には推奨できず―食品安全委」
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や乳がんの予防効果があるとして人気の食品成分「大豆イソフラボン」について、食品安全委員会の専門調査会は8日、特定保健用食品(トクホ)として1日にとる安全な上限量を30ミリグラム(アグリコン量で換算)とする最終評価案をまとめた。過剰摂取するとホルモンバランスを崩す恐れがあり、妊婦や15歳未満の子どもには、推奨できないとしている。11日の安全委で正式に決め、厚生労働省に答申する。
みそ製造大手のマルコメ(長野市)が2年前、同社の商品「イソフラボンみそ」をトクホに申請していたが、1日の摂取量が48ミリグラムになり、上限量を超える。同調査会は「十分な安全性が確保されるとは言いがたい」としている。厚労省はこの商品についてトクホとして認めない見通し。今回の評価には、納豆や豆腐などの通常の大豆食品は含まれない。<記事引用ここまで。Asahi.comより>
<平方コメント>
健康食品の世界は、ほとんど「流行」によって売れ行きが決まってきます。最も影響力が大きいのはテレビ番組です。健康食品業界の人は、非常に巧妙に「流行るための手順」を着実に実行し、売れ行きに結びつけていきます。商品を開発し、発売と前後していくつかの雑誌に取り上げてもらい、多くの人の目に触れたところでテレビの「健康を考えよう」番組(お昼の「なんとかテレビ!」とか夜の「発掘!なんとか大事典」とかその他いろいろ)で取り上げられ、爆発的に売れるようになります。買う人は、「良い健康情報を手に入れた」と思って買うわけですが、爆発的に売れるだけの根拠があって売れているのかは、大きな疑問です。
今回のFDAの判断は賢明だと思います。日本には特定保健用食品(トクホ)という制度があり、健康食品に国がお墨付きを与える形になっています。しかしその中には、人の健康に有用であるという根拠が弱いものや、「良い」という結果と「良くない」という結果が両方出ていて良いかどうかはっきりしないものもあるように見えます。「良い」とする結果だけを集めてきてFDAに申請するのでは、厳しいFDAが許可をするはずがありません。日本のトクホは厚生労働省が表示を許可するものですが、「普段の食生活で食べられる形態をそのままに『体の調子を整える』働きを強化した食品」です。何かを「治してくれる」ものではありません。
今回話題になっている二つは、いずれも「健康によいとされる成分を濃縮したもの」が取り上げられています。
TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」に出た時にも、乳がんになった人は大豆製品を摂りすぎないように注意した方がいいといわれていると発言したら、結構な反響がありました。自然から取ったものは、何でも身体に悪いはずがないという「信仰」が根強いのかなと思います。しかし、人工的に濃縮したものは、その時点で自然ではないと私は思います。「これさえ食べていれば健康」なんてものはないのです。日本人が昔から続けてきたバランスの良い食生活の方が、よほど健康には良いはずだというのは、みんなわかっていることなのではないでしょうか。
さまざまな健康食品が流行しては、消えていきました。5年前にみんなが知っていて、今では薬屋の店頭にないものがたくさんあります。厚生労働省ももう少ししっかりしてほしいな。