参院選の争点に、医療崩壊の問題が少しずつ取り上げられるようになってきている。候補者への質問にも、組み込まれることが増えてきた。候補者の回答を見ると問題ととらえているかいないかがすぐわかる。医師数抑制策を改め、医療費を現状より増やさなければダメだとはっきり言っている候補者に入れたいと考えている。
共同通信から、次のような記事が配信された。
医療崩壊を食い止めよ 年金問題より医師確保を 連載企画「1票の意味-参院選インタビュー」権丈善一慶応大教授
共同通信社【2007年7月19日】
-今回の参院選で社会保障分野の課題は。
「医療提供体制の立て直しが最も重要だ。医療現場は崩壊しつつあり、この流れを食い止めるのに残された時間はまったくない。特に地域医療は瀬戸際にあり、緊急に手を打つべきだ。いま大騒ぎしている年金記録の問題は議論が出尽くした。だが、医療問題は政治レベルの判断が手付かずのままだ」
-政治の判断とは。
「医師も看護師も疲れ切っている。医療従事者が自分の仕事を続けることに希望を抱ける政策に転換するべきだ。公的医療費の抑制をやめ、かつ医師を増やして数を確保する必要がある」
「有権者全員に問題の深刻さを理解してもらえるかどうかはともかく、せめて全国約200万人の医療従事者に絞って呼び掛けたい。毎日の生活の中で医療政策の矛盾を肌で感じながら過ごされている皆さんは、各党のマニフェストを冷静に読み比べた上で、医療崩壊の阻止に取り組む政党を選んでほしい、と」
-具体的な選び方は。
「1997年と昨年になされた2つの閣議決定を撤回する姿勢を示せるかどうかだ。97年の決定は医師数は充足しているとして医学部定員を減らす方針を打ち出した。昨年は社会保障費を5年間で1兆6000億円削減するとの内容。これらが生きている限り、医師は増えず、医療費が今後も削られるのは自明だろう」
「何も与党批判をしたいのではない。与党が誤りに気付き、自ら方針を変えるなら評価できよう。日本では医師1人が診ている患者の数は米国の5倍、欧州諸国の3、4倍に及ぶ。医師数を増やさないとどうしようもない。医療費についても、欧州諸国の平均水準まで増やす方向に行かないとダメだ」
-財源は。負担増は経済成長を阻害しないか。
「欧州並みに社会保険料を引き上げる選択肢があってよい。政党は『社会保険料をアップして医療に充てる』と約束すべきだ。個々の企業側は嫌だろうが、経済活動全体から見れば、医療や介護の分野のサービス需要や雇用をつくり出す貢献は大きい。結果的に高齢者が多い地方に所得が再分配され、地方交付税のような役割も果たし得る。ただ、消費税は他に充当すべき政策もあり、医療費を増やすにはまず社会保険料を考える方が実現可能性が高い」
-年金については。
「論議は記録問題から制度論に入ってきた。民主党の年金改革案は年収600万円以上の所得者に給付制限があるなど、現在の支持者もいずれは失望するだろう。メディアがあおる不毛な年金論争に振り回されて投票先を決めては、国民はせっかくの国政選挙を1回無駄にし、取り返しのつかない医療崩壊を受け入れることになるだけだ」
× × ×
けんじょう・よしかず 1962年福岡県生まれ。専門は経済政策・社会保障論。新著に「医療政策は選挙で変える」。
(記事ここまで)
今回の選挙で、メディア戦略に乗せられて与党に投票してしまっては、これまでの失敗続きの医療政策を認めてしまうことになると、個人的には思っている。医療崩壊は最後の砦を守れるかどうかぐらいまで進むのではないかと思っている。
今回の記事は、非常にまともに医療と選挙の関係を考えている。このような前向きな意見を示す政党や候補者がいれば、そこに投票する。そのような候補者がいるかどうか十分探せていないが、良さそうな人はちらほらいそうではある。この記事を各新聞社がどのように載せるか、あるいは載せないかにも注目している。
私の1票で日本の医療が立て直せるとは到底思っていないが、自分の意志は表したいと考えている。
皆さん投票に行きましょう。