自治体病院の経営状況は、どんどん厳しくなっている。たび重なる診療報酬(医療の値段)の強制値下げ、採算はとれないが地域には必要な部門を担っていること、地方自治体の財政も苦しくなり繰り入れが削られていることなどが主な要因だ。
記事は次のとおり。
自治体病院の74%、赤字予想 診療報酬下げなど影響
2007年07月19日 Asahi.comより
自治体病院の74.4%が06年度決算で経常赤字になる見通しであることが、全国自治体病院協議会の調査でわかった。前年同期の63.4%から大幅に増え、年末に確定する決算では、赤字の割合が過去最大だった73年度の70.4%を超える可能性が高いという。06年4月の診療報酬引き下げに加え、医師不足に伴う患者離れが経営悪化に拍車をかけている実態がうかがえる。
調査対象は都道府県立や市町村立など954病院で、503病院(52.7%)から回答を得た。
回答した病院全体では、総収益が前年度決算比1.7%減となり、総費用はほぼ横ばいだったため、収支が悪化。80病院が前年度の黒字から赤字に転落する一方、赤字から黒字になるのは20病院にとどまった。
(記事ここまで)
このような報道が増えてきた。しかし国は、医療費適正化などと言いながら、医療費抑制、医療費削減をどう具体化するかばかりを考えている。良くできた日本の医療制度を存続させつつ医療を充実させようという政策もあることはあるが、基本が医療費削減でありつづけるなら実現不可能なものばかりだ。
国が示すものはほとんど、良いことは書いてあるがその弊害は書いていない。来年4月に始まる「後期高齢者医療制度」という75歳以上の人のための新しい健康保険について、弊害を明言したものを見たことがない。現在出されている資料から見る限り、それはそれはひどい制度だ。
ここまで医療が苦しくなってきた主な原因は、適確な分析をできなかったり「医療費亡国論」などに振り回されて「医療費抑制が国是」という亡霊に取り憑かれたりした、たび重なる失策の結果である。ここで医療のあるべき姿に戻すには、失策を一つ一つ取り戻していかなければならないのだが、今度は構造改革とか経済財政諮問会議などの亡霊に取り憑かれて、失策の尻ぬぐいを圧政によって行おうとしている。
医療については社会主義体制を貫くつもりなら、もっとしっかり正しく未来予測をして、存続可能な統制を布いてもらわないと困る。思いつきや浅い考えに振り回されるようなものであってはならないはずだ。