諏訪中央病院の研修は充実している。医師として力をつけるための仕掛けが、次々と出てくる。日々のカンファレンス、各分野の知識を深める勉強会や研修会などが、数年前に比べて格段に増えた。今回は初の試みとして「教育回診」というものが行われている。
今回行われる「教育回診」は、研修医教育が充実している市立堺病院(大阪)の川島篤志先生を招いて、今日から27日(日)までの4日間、より良い研修病院となるためのブラッシュアップ(磨き上げ)のためのプログラムがぎっしり詰め込まれている。
朝6時半からのレクチャー、病棟で患者さん(あらかじめ同意を得てある)についての回診、昼のいつものカンファレンス、上級医・指導医向けの講義、川島先生が経験した症例の呈示と検討、全職員向けの講演、日曜日には当院で経験した症例の検討など、実に盛り沢山だ。企画の中心になっている佐藤泰吾医師は「川島先生を休ませない予定です」と紹介。川島先生、帰る時にはボロボロになってないことを祈ります。
諏訪中央病院は久しく研修医を受け入れていなかったが、平成16年4月からの新臨床研修制度施行に向けて準備をし、開始と同時に初期研修医(2年)・後期研修医(3年目以降5年目くらいまで)の受け入れを開始。最初は手探りで研修指導をしていたが、佐藤泰吾医師の赴任などが大きな力となり、研修内容がメキメキと充実している。
新臨床研修制度が始まって、以前は医師の配置に絶対的な権力を持っていた大学医局の医師が不足し、医師の派遣ができなくなると同時に支配力も低下した。しかし厚生労働省は大学医局に代わって「医師の適正配置」を考え行う部局を設定しなかった。現在地方の医療が一部壊滅状態になっていることの背景にはこのような事情がある。
諏訪中央病院は「これからは若い医者が集まってくる病院でなければ存続の危機に陥る」と、ずいぶん前から発言する医者が何人もいた。実際研修が充実してきて若い医師の力が伸びてくると、病院全体が元気になってくるのを感じる。また総合的な実力を持った若い医師が前線で働くことによって、地域の人たちの病院への信頼も高まる。
最近「マグネットホスピタル」という言葉がよく聞かれる。この言葉にはいくつかの意味があるようだが、本質的には「医療従事者も患者も集まる、魅力的な病院」という定義が一般的なようである。病院の魅力というのは、患者さんにとっては「診断・治療が信頼できる」「かかり心地がいい」「満足できる」などが大切で、医療従事者にとっては「実力がつく」「働き甲斐がある」「満足できる」などが重要と言うことになるだろうか。
厚生労働省がいうマグネットホスピタルは「医師が集まり、総合的な実力を持った医師が豊富にいて、近隣の医師不足の地域に医師を派遣できるような病院」が勝手に想定されているような気がする。要するに、今までの医局のかわりに医師を派遣できる「医師の人員に余裕のある病院」ということなのだろう。
日本は医療レベルや医療需要に比べて圧倒的に医師数が少ない。この状況の中での「集まる病院」だから、どこの病院でも「医者が余ってしょうがない」状況にはならないと思うのだが、それでも総合力のある医師が多くいる病院は、実力のある病院として認められる指標の一つにはなるだろう。
このような企画はこれからも毎年さまざまな趣向を凝らして続いていくものと思われる。諏訪中央病院の臨床研修は、各科の研修も重要だがこのような勉強の機会がたくさん用意されていることも大きな魅力だと思う。現在医学部の学生をやっている人、初期研修医をやっていて次の研修先を探している人、諏訪中央病院も悪くない選択肢だと思いますよ。