10都道府県に出されていた緊急事態宣言は、沖縄県を除く9都道府県で昨日解除。9都道府県のうち岡山と広島は全面解除となったが、残る7都道府県は緊急事態宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に移行した。
記事は次のとおり。
7都道府県、まん延防止等重点措置に 緊急事態宣言から移行、7月11日まで
2021年6月21日(月) 0:09配信【時事通信】
政府は、新型コロナウイルス対策として10都道府県に発令していた緊急事態宣言について、沖縄を除き期限の20日をもって解除した。
このうち、東京や大阪など7都道府県は21日から宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に移行。期限は宣言延長の沖縄を含め7月11日まで。政府は東京五輪・パラリンピック開催を見据え、リバウンド(感染再拡大)阻止に全力を挙げる。
西村康稔経済再生担当相は20日のNHK番組で、宣言解除地域の感染状況に関し、「(新規感染者が)増えてくれば対策を強化するしかない。病床の状況をよく見ながら、ちゅうちょなく緊急事態宣言の発動を考えたい」と述べた。
既に重点措置を適用中の5県のうち、首都圏の埼玉、千葉、神奈川は期限を7月11日まで延長する一方、岐阜、三重は解除。6月21日以降の重点措置の対象地域は計10都道府県となった。
宣言から重点措置への移行は初めて。対象は北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都道府県。飲食店には午後8時までの営業時間短縮を要請。感染対策の徹底を条件に午後7時までの酒類提供を認める。ただ、知事の判断で制限を設けることも可能だ。岡山と広島は移行せず全面解除した。
重点措置の対象地域で、知事は時短を要請・命令できる。従わない事業者には20万円以下の過料を科す。 (記事ここまで)
1日あたりの新規陽性者数は、5月12日に7,000人を超えていたが最近は2,000人を下回るぐらいには減っている。いわゆる第4波がだいぶ落ち着いてきたということではあるだろうが、以前だったらもう少し減るところまで緊急事態宣言を続けていたはず。勝手な推測だが、緊急事態宣言の神通力が落ちてきて自粛しない人が増えていることや、我慢の限界という気分的なものに配慮して、少し早めに解除したのではないかと思っている。
引き続き感染予防のために必要な行動を続ける必要があるのは、言うまでもない。しかしテレビなどを見ると、緊急事態宣言が明けていないうちから酒を提供している居酒屋経営者の「不満の声」を流したり、街に人があふれている様子を流したりしているのが目につく。「すでに自粛してなくても緊急事態宣言解除されるなら、もう自粛は不要なんだね」と、見た人は感じるんじゃないかな。
先週は解除前にもかかわらず、東京ではすでに、その前の週に比べて新規陽性者数が増加傾向にある。緊急事態宣言を続けたからってこれ以上は感染を抑制できないかもしれないが、緩めたらもっと早く大きく感染が拡大するのではないかと心配になる。
期待するのは、
・気をつけるべきことをみんなが続ける
・ワクチン接種の拡大による抑制効果
・湿度や暑さがウイルスを早く失活させること
などだが、どれも「期待」にとどまる。
昨日『臨床の砦』という本を読んだ。作者の夏川草介さんは「神様のカルテ」シリーズなどを書いている作家の医師だが、今回のは「ドキュメント小節」と帯に書かれている。長野県のとある町にあるそんなに大きくない病院が、地域の新型コロナウイルス陽性者の入院を一手に引き受けて、医療崩壊寸前まで行って(一部崩壊して)、波が落ち着いてきたことなどでなんとか完全崩壊は免れたというような話。医療従事者の私から見て、現場の問題や苦悩が的確にリアルに描かれていると感じた。
私のまわりでも、同じ頃に1メートルの距離で私自身が陽性者を診察していたり、いつも当直に行っていた病院や関係の深い病院でクラスターが発生したり、同僚が訪問診療している高齢者施設でクラスターが発生したり、病院職員の子どもが通っている学校でも集団感染が発生したりしていた。「臨床の砦」では高齢者施設の疑い例は病院にかかって必要があれば入院していたが、長野市とその周辺では感染症指定病棟に入院せず施設や療養型病院で看る方針を取らざるを得なかったところも多い。これもある意味、医療崩壊である。
普通に暮らしているところで「ほとんど危険はないだろう」「これぐらいは大丈夫だろう」「自分はかかっても多分重症化しない」「今まで大丈夫だったんだから」「みんなやってるし」でちょっとずつでも流行が拡大すると、入院を引き受けている病院や最前線の医療機関・施設などの「一番弱いところ」では、体も心も持ちこたえるのが難しいぐらいの苦境に追い込まれる。そのあたり、『臨床の砦』を読んでいただけると想像が追いつくのではないかと思う。
高齢者や基礎疾患のある人が重症化しやすく死亡率も高いので、その人たちからワクチンを打っていくというのは作戦として理にかなっている。職域接種も急速に拡大しているようだ。「職域」をかなり柔軟に解釈して、地域に広く接種しようという動きもあちこちで出てきた。ワクチン接種率が上がることが、新規陽性者数を減らすのに最も効果的だと思われるので、私が働いている愛和病院でも職域接種を手伝う方針が示されたが、頑張っていきたい。
ところで、英国では日本よりだいぶワクチン接種が進んでいるのに、新規陽性者数は再び急増していると報道されている。死亡者数は増えていないという楽観的な報道も見られるが、新規陽性者数と重症化や死亡までの日数にはタイムラグがあるので、判断するのはまだ早いだろう。英国では「まず1回接種」を先行させたが、2回接種した人も45%程度まで増えているといわれている。それでも緩めると急増に転じるのだから、日本も緩めすぎたらすぐ第5波と呼ばれる急拡大が来る可能性がある。
日本で接種が進められているファイザー/ビオンテックのワクチンとモデルナ社のワクチンは、2回接種して一定期間(1〜2週間)経過すれば、デルタ株(通称インド株)に対しても十分な防御力が付くといわれている。アストラゼネカ製も2回接種すれば効果があるといわれているが、日本では認可はされたがまだ接種予定がない。前2者はメッセンジャーRNAワクチンで、アストラゼネカはベクターワクチンで、今回の新型コロナウイルスに関してはメッセンジャーRNAワクチンの方が効果的との評価が多い。
人との直接交流はもう少し我慢して、その間にワクチン接種率を上げて、本当に「ここまでくれば安心」と言える状況に、早く持ち込みたい。ワクチン2回打って1〜2週間たった人はちょっと緩めていいけど、それ以外の人はどうか慎重に。「打った人だけずるい」と思ったら、自分が打てない人でなければ、早くワクチン打って楽な人になって下さい。医療従事者はそのためなら頑張ります。
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