
平昌五輪フィギュアスケート男子シングルで、羽生結弦選手がソチに続いて金メダル、宇野昌磨選手が銀メダルを獲得した。
記事は次のとおり。
羽生がフィギュア男子2大会連続の金、宇野が銀 平昌五輪
2018年2月17日15:19【AFP=時事】
【AFP=時事】平昌冬季五輪は17日、フィギュアスケートの男子シングル・フリースケーティング(FS)が行われ、羽生結弦(Yuzuru Hanyu)が合計317.85点で2大会連続の金メダルを獲得した。
羽生は、1948年大会と1952年大会を制したディック・バトン(Dick Button)氏以来となる連覇を達成し、現代の「氷上のプリンス」としての地位を確固たるものにした。
宇野昌磨(Shoma Uno)が合計306.90点で羽生に続いて銀メダルを獲得し、日本勢がワンツーを飾った。同305.24点でハビエル・フェルナンデス(Javier Fernandez、スペイン)が銅メダルを手にしている。
(記事ここまで)

羽生結弦選手は、昨日のショートプログラムで、大きな怪我から復帰した初戦とは思えない111.68点という世界最高に迫る演技でぶっちぎりのトップ。フリーは4回転サルコウ→4回転トウループをきれいに飛んで、途中のジャンプは着氷に危ない場面もあったが転倒せずに踏ん張り切り、フリー206.17点、トータル317.85点で優勝。
昨年11月のNHK杯練習で、右足首を大きく傷めた。2ヶ月間は氷に乗ることもできず、3回転ジャンプを再開したのが約3週間前、4回転は約2週間前と伝えられている。人間の限界近い技を競い合っているフィギュアスケートのトップ選手が、シーズンのほとんどをスケートしないで過ごしてきたのだから、出てくることはできても優勝に絡むのは難しいのではないかと思っていた。
しかしショートプログラムを滑り始めた羽生結弦選手は、そんな心配を吹き飛ばす4回転サルコウから演技を始め、その後も見事に滑りきった。ショートプログラムで暫定1位になった後、翌日のフリーに向けてのインタビューで「自分にとってはフリーのミスがここまで4年間強くなった1つの原因なので、また明日に向けてリベンジしたいなという気持ちが強いです」と語っていた。
個人的な思い出としては、
4年前のソチオリンピックの羽生結弦選手の金メダルは、長野山梨が大雪で私が上田に閉じ込められている日に、ホテルのテレビで見た。この時は上位陣はみんな無理をしているように見え、体を壊しながら限界を超えていく不健全な競技という印象を持った。でも今回、2か月氷に乗れなくても前回以上の演技をできるのを見て、前回の心配は少なくとも羽生結弦選手にとっては余計なお世話なのかもしれないと思った。表に出さない大変さはもちろんたくさんあるだろうけれど。
男子フィギュアスケートのオリンピック連覇というのは、66年振りだそうだ。ほとんど前人未踏と言ってもいい。競争が激しいことのほかに、トップ選手であり続けられる期間は短いということもあるのではないかと思う。どうか壊れるような怪我、壊れるような無理をしないで、現役選手をかっこよく続けていってほしい。

銀メダルを獲った宇野昌磨選手は、最初に羽生選手が回避した4回転ループを跳んだが尻餅。ちょっと足首に無理がかかる転び方にも見えたので心配したが、そこからは肉体的にも精神的にも全くダメージを感じさせない完璧な演技で、前日ショートで2位につけていたフェルナンデス選手を抜いて銀メダルを獲得した。
インタビューでは、「僕はそれまで全部の演技を見ていたので、自分がどういう演技をすれば優勝できるかわかっていました。完璧な演技をして完璧な点数をとれば良かったんですけど、1個目のループに失敗して笑えてきました。もう、頑張ろうと、笑いが込み上げてきました」と答えている。
オリンピックで金メダルを争うような選手というのは、自分の心の影響でいつもと違う動作になってしまわないように、メンタルコントロールに苦労するものだと勝手に思っていた。実際多くの選手は、動揺しないために人の演技を見ないようにした上で、イヤホンで音も遮っている選手も多いし、インタビューでも「点数は見ませんでした」のようなコメントが多い。しかし宇野昌磨選手の試合に臨む態度は、全く違うようだ。
羽生結弦選手は、インタビューも含めて「人からどう見えているか」を総合プロデュースしている。対戦相手からどう見えるかも、勝負の駆け引きになっている。それに対して宇野昌磨選手は、大会全体を見渡して詳細を把握した上で、どうすれば自分が勝てるかを普通の心境で計算しているようだ。もちろんそれができるのは、ここまでに多くの経験と練習を積んできたからこそだろうが、二人とも「嘘がない」のに、頂点に立つための手法が全く異なっているのが面白い。

今回の表彰式では、それぞれの選手が台に上がるときに、多分オリジナルの音源を流してくれている。羽生結弦選手は自分の番で、太鼓の音に合わせて左・右と腕を広げてキメて見せた。これ、かっこよかったなあ。表彰台の真ん中に立ってこれをやってしまう羽生結弦選手、プロデュース力がずば抜けている。
今大会の日本選手は、銀メダルはたくさん獲れるものの、ここまで誰も金メダルに手が届いていなかった。銀メダルを獲った平野歩夢選手(スノーボードハーフパイプ)も渡部暁斗選手(ノーマルヒル複合)も、頑張ったけど前回の覇者にその上を行かれての銀メダルだった。その中で「絶対王者」とマスメディアに勝手に呼ばれて金メダルを期待されながら、今シーズンの初大会がオリンピックという羽生選手がどうなるのか、期待はするものの半分「駄目でもしょうがないよね」という気持ちで見ていた。
蓋を開けてみたら、ベストスコアに近い演技で、ソチ大会を上回るパフォーマンスを見せての金メダル。こんなすごい人の、たゆまぬ努力の結晶としての美しい演技を見ることができて幸せ。ありがとうございました。おめでとうございます。
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