日本IBMと東大医科研は、がんの最適な治療法を人工知能を用いて導き出す技術の開発に乗り出すと発表した。
記事は次のとおり。有料配信記事らしいので、無料の部分だけ。
がん最適治療法、人工知能で算出 日本IBMと東大
2015年7月30日【日本経済新聞】
日本IBMと東京大学医科学研究所は最新鋭のコンピューター「ワトソン」を使ったがん治療法を開発する。東大が持つ日本人患者のデータなどを集め人工知能で分析し、遺伝子情報をもとに個別の患者に適した治療方針を最短10分程度で導き出す。がんのかかりやすさには人種や地域の差がある。日本で研究成果を上げればアジア人へのがん治療にも応用が期待できそうだ。
(記事ここまで)
私が見た今日の日本経済新聞には、1面トップでこのニュースが報じられている。日本経済新聞が「注目するに値する」と判断したニュースということだろう。
現在は、がんと診断し、どのような種類のがん細胞がどれくらい広がっているかを可能な範囲で詳しく調べた後、どのような治療方針で行くかは人間の頭で判断している。医学はここ数十年で飛躍的に進歩し、がん治療だけでも数え切れないほどの治療法があり、一人の頭では知識の量も判断能力も限界がある。
そのため“がん診療連携拠点病院”などでは、がん診療に携わる多くの医師をはじめとした医療従事者が集まって「キャンサーボード」という会議をおこない、最適な治療になるように病院全体がチームとして動いているところも多い。また、「現時点の医学では、この状況の人にはこの治療法が最もうまくいく確率が高い」ものが標準治療とされ、各病院で適用されている。この標準治療は、医学の進歩にできるだけ遅れないように、頻繁に改訂がなされている。
しかし最終的には人間の頭で判断する。最善の治療と思って続けても、病気の方が人間よりも一枚も二枚も上手で、歯が立たないことも少なくないが、そんな時には医療従事者も、患者さんや家族も、「これで良かったんだろうか?」「何かを間違ったんじゃないか?」「もっといい方法があったんじゃないか?」という気持ちになりやすい。
今回提示された人工知能による治療方針決定が、今までの「人間の判断」よりもどれくらい優れたものになるのかは、まだ何とも言いようがない。しかしカルテや検査データ、病理を含む画像データなどから適切に判断材料を拾い出し、それを元に判断していくというのは、より客観性の高い判断を示せることが期待される。データの蓄積が進めば、その精度は飛躍的に高まっていくかもしれない。
もちろん「治療をしないのが最適」と判断される人も出てくるだろう。しかし「より侵襲が少なくて効果が期待できる治療」を導き出してくれるかもしれない。コンピュータに振り回されている感じになってしまっては本末転倒だが、最新鋭のコンピュータ技術と医学の進歩が融合して、誰もが納得できる道を示してくれるツールになればいいなと期待する。
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