「ビッグコミック『医者を見たら死神と思え』第8回」
最近思うこと

近藤誠氏が監修しているマンガ「医者を見たら死神と思え」の第8回。今回のサブタイトルは「パイ中間子」。扉には相変わらず、大きな鎌を持った死神。
まずは今回のあらすじ。
前回真道医師の父親の真道総合病院で、ある若い医師から何度も「大丈夫ですよ」と言われていた女性の患者が、別の病院で余命1年の胃がんと診断されて、真道総合病院の医療ミスだとして慰謝料請求すると。
一方“神の手”真道医師に手術された来栖医師はだいぶ体力が落ちている様子だが、1981年に米国でパイ中間子の研究に加わっていた思い出話を、約18ページにわたって真道医師に語る。まあだいたいこんな流れ。
今回は、来栖医師の昔話にページの大半が割かれている。米国のロスアラモス研究所で、パイ中間子による放射線治療の施設にいたということで、当時は珍しかったCTを治療計画に利用していたとか、パイ中間子の治療特性とかも説明している。パイ中間子による治療は、一般的な放射線治療に比べて「突き抜けない」特性があるが、現在は陽子線や重粒子線(炭素イオン線など)の方が多くなっていて、日本にはない。
来栖医師のモデルと思われる近藤誠氏がロスアラモスにいたのは1980年までと、wikipediaに書いてあった。ちょっとだけ時期がずれている。パイ中間子の治療に携わっていたというのは、どちらも同じ。
回想の最後の方で、来栖医師が責任者のコリンズ医師に「どうして抗がん剤を積極的に使わないのか」と尋ね、コリンズ医師から「固形がんに対しての効果は証明されていない」と説明されて、来栖医師が驚くという場面がある。このあたりが、来栖医師が「抗がん剤は効かない」と主張するベースになっているのかもしれない。それから34年も経っているけれど。
ところで、最初の方に出てきた、胃がんを見逃されて別の病院で「余命1年」と宣告された患者さん。近藤理論でいけば、真道総合病院で見つかっても見つからなくても予後は変わらないんだから、近藤理論の正しさを立証するマンガなんだとしたら、真道総合病院は何もミスをしてない展開になるんじゃないのかな。本当にそうなるなら面白いけど。
放射線治療に関しては、近藤誠氏は(元?)放射線科の医師だが、どんな扱いにしていくのだろう。この展開のまま進むと「抗がん剤は効かないんだ。なら自分は放射線治療を究めよう」とかになるのが自然かなと思う。しかし近藤誠氏は「どんながん治療も、意味がないどころか有害」「見つけるための検査や検診も無意味」という方向に行っている。なぜそっちへ行ったのかも、この後明らかになるのだろうか。
ここまでは、あまり筋がすっきりしない展開に感じる。今後、推理小説を読むように、目からウロコの展開が待ち受けていたりするのかな。長期連載を予定しているなら、まとまるのかもしれない。
続く第9回は→
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