「第12回山梨再生・移植研究会で江藤浩之教授講演」
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11月14日午後7時から、山梨大学医学部臨床大講堂
(写真は臨床講堂入口)にて、「第12回山梨再生・移植研究会」が開かれ、ちょっと遠かったけど聞きに行ってきました。というのも、
去年の12月にもこのブログで書いた、京大iPS細胞研究所 臨床応用研究部門の江藤浩之教授の講演だったから。

今日の講演のタイトルは「iPS細胞と血液再生の為の戦略」。1時間ちょっとの間、学生向けに考えてきたという、質の良い、きれいなスライドの講演を聞かせていただきました。
(いくつか誤字はあったけど。人工→人口、特的→特異的とか)
京大iPS細胞研究所の紹介から始まり、どうして今回のノーベル賞でジョン・ガードン氏とともに山中伸弥教授が選ばれたのか(どうして他の名だたる研究者が選ばれなかったのか)、ES細胞とiPS細胞は何が違うのか、山中先生が研究費を獲得したときのエピソードなどを交えながら、次第に本題に近づいて行きます。
本題に入ってまず最初は、すでに医療に役立ち始めている例。薬の安全性や有効性を確かめるのに、iPS細胞から作った細胞を用いて試験がすでにおこなわれているそうです。たとえば心臓の細胞にダメージを与えないかとか。
続いて話されたのが、iPS細胞がどのように作られるか、どのような細胞ができて、どのような点が難しいかなど。ヒトの血液が2mlあれば、500個ほどのiPS細胞が作れるそうです。ただその500個が、全て同じようにどんな細胞にでも分化できるわけではなくて、1個1個違った癖を持っている。それを選別するのに時間とお金がかかるのが、いろいろな制約を生んでいるらしい。

続いて、実際に人の身体に対してiPS技術を利用する臨床試験が近づいている、いくつかの例。このうちの「血液疾患」のところが、江藤教授の担当です。ちなみにこの5つの中で、日程的に臨床試験が最も近いのは、上から2番目の「網膜疾患」だそうです。
江藤教授のラボでは「血液を創る」ことをしていて、一つは血小板や赤血球などの血液の中にある細胞をiPS細胞経由で作ること、もう一つは抗原特異的なT細胞を量産してがん治療に役立てることが、今進められています。

これは、実際に血小板が骨髄環境で産生される様子を撮影した動画。私も看護学校の授業とかでは、さも見てきたかのように「血小板は巨核球の端っこがちぎれるようにしてできる」と教えていましたが、こんなクリアな動画で見られる日が来るとは思いませんでした(この写真は動きません)。右側の写真は、巨核球が爆発するような形で血小板が産生される動画でした。血小板の8割は左のような形で生まれますが、右のようなでき方もあるそうです。また、作られた血小板が実際に機能する様子も、動画で示されました。

たくさん「いいな」と思うところがあった今日の講演ですが、これもその一つ。自分のラボの若い研究者たちを、写真つきで紹介してくれました。「彼はとっても頑張っている」と紹介していましたが、こんなことを言ってもらうと、モチベーションも上がるだろうな。
(こういうのって、本人にだけ言うよりも誰かがいるところで言う方が効果が高く、でもそれよりさらに効果が高いのは、本人がいないところで高く評価していたことを人づてに聞いた場合だそうです)

2本目の柱を担う「抗原特異的Tリンパ球を増やす戦略」についても、かなり詳しく紹介していました。先月京大iPS細胞研究所に異動してきたばかり(江藤教授が引っ張ってきたのかな)の、有力な研究者のようです。

約1時間の講演は、あっという間に終わってしまいました。会場には150人ぐらいの人が聞きに来ていました。講演後の質疑応答の時間では、学生さんからたくさんの「鋭い質問」が出ました。
・iPS細胞よりも、免疫反応が起こらないような血小板・赤血球を作ったらどうか。
→その研究をしてみたら、抗原になる情報を発現していない細胞は樹状細胞によって敵と見なされてしまうらしく、今のところうまく行かない。
・500個のiPS細胞ができれば少しずつ性質が違うと言われたが、それでは結果にばらつきが出るのでは(1年生からの質問)
→(自分たちが1年の時、こんなこと考えなかったよねと言いながら)たしかにそれは大きな問題。nの数を増やしてばらつきを減らしたり、それぞれの細胞の性質を見極めて切り分けたり。(←そこにお金がかかるんでしょうね)
・研究をしたかったらどうすればいいか
→iPS細胞の良い点は、どこでも研究ができること。基礎研究をやっているラボで、必要だと言われればいつでもiPS細胞を作るための遺伝子を送ります。(特許料とかは?)→研究者がiPS細胞を使う時には、特許料は無料。そのために、山中先生は他の国や企業よりも先に特許を取りたかった。
他にも、どういう経緯で京大iPS細胞研究所の教授になったのかなど、面白い質問が出ていましたが、江藤教授は自分の経歴を話しながら、学生さんにヒントになるようなことやモチベーションの元になるようなことをあちこちにちりばめて、答えていました。
面白いし、とってもためになる講演でした。彼の存在は、同期の誇りです。勝ち負けの問題じゃないけど、負けないように頑張ろうっと。
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facebook経由でやり取りしていたら、講演の前に大学オーケストラの部室でチェロ弾いてるかもとメッセージもらったので行ってみたら、ほんとに弾いてた。手前は現役の学生さん、奥が江藤教授。1年ぐらい弾いてないって言ってたけど、昔よりさらに深みや広がりのある弾き方になっている気がしました。
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