米国の民間宇宙開発会社「スペースX」社のロケット「ファルコン9」で打ち上げられた補給船「ドラゴン」が、国際宇宙ステーションとのドッキングに成功した。
記事は次のとおり。
民間宇宙船、ステーションにドッキング成功
2012年5月26日 1:19【日経web】
【ヒューストン(米テキサス州)=共同】米宇宙ベンチャー「スペースX」の無人宇宙船ドラゴンが25日午前11時ごろ(日本時間26日午前1時ごろ)、国際宇宙ステーションに民間機として初めてドッキングした。
引退したスペースシャトルの後継として、ステーションへの物資補給を担う民間機の第1弾。宇宙輸送は、商業化という新たな時代に入った。同社はドラゴンを有人宇宙船にも活用する方針。
ドラゴンは25日未明からレーザーなどでステーションとの距離を測定し、衝突の危険がないかを確認しながら徐々に下方から接近。しかし測定や評価に時間がかかり、予定より数時間遅れた。
約10メートルに近づいた段階で停止。ステーションの飛行士が操作するロボットアームが延びて、ドラゴンをつかまえた。その後、接続部同士をつないだ。
日本の無人補給機「こうのとり」のドッキングにも使われている方式で、NASAが安全性などを高く評価し、ドラゴンにも採用した。
ドラゴンは試験機だが、食料など約520キロの物資も搭載。安全性を確認した後、飛行士がハッチを開いてドラゴンの内部に入り、物資を移送する。
ステーションに発着できる補給機の中では唯一、物資を地球に持ち帰ることができるのもドラゴンの特長。ステーションで不要になった実験器具や使用済みの宇宙服などを積み、31日に米西海岸沖の太平洋に帰還する予定。
(記事ここまで)
ようやく米国のロケットが打ち上げた補給船が、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした。日本の宇宙技術の粋を集めたHTV(こうのとり)が
2009年9月と
2011年1月にISSへのドッキングに成功しているが、スペースシャトルが引退した今、人と補給物質の運搬はほぼロシアに頼りっぱなしだった。
ロシアのソユーズロケットは基本設計が古いが、スペースシャトルとは違って使い回しをしないため、常に最新型にバージョンアップして飛び続けており、信頼性の高さは抜群だ。ただし、人を運ぶ場合には3人でいっぱいいっぱい。荷物用の「プログレス」が3か月に1回ずつ補給物資を届けているが、出たゴミは回収できず、プログレスに詰めて空から落として燃え尽きさせている。
スペースシャトルは、危ない橋を渡りながら延命してきたが、2011年7月に最後の飛行を終えた。老朽化が進んで「想定外」の事態にはかなり弱くなっていたから、さらなる大事故を起こさないうちに引退できて本当に良かった。機械の経年変化というのはすべてを把握するのは難しいので、シャトルにしろ原発にしろ、設計時の想定を越えた機械の延命は恐い。
米国の宇宙開発は、アポロ計画やスペースシャトルまでは軍事予算も含む国の予算で賄ってきたが、財政が厳しくなってお金を出せないので、スペースシャトルの後継機はNASAで開発しないことになった(その後、話はいくつか出ている)。しかし民間宇宙開発会社は、計画はかなりたくさん出てきたものの、なかなか計画通りに進んでいなかった。それがようやく、だいぶ進んだことになる。
今回成功したスペースX社は、インターネット上で決済するシステム「PayPal」を作った人が打ち立てた会社だ。PayPalは私も時々使うことがあるが、そういう人が宇宙産業の会社を作ったというのが面白い。このような「今時の事業で成功して財をなした人」の力がなければ、米国の宇宙開発は成り立たないということだろうか。うまく行けばいいけど、うまく行かなかったら国運も沈めてしまうような産業も民間任せというのは、危ないことのように思うけどなあ。
今回の「ドラゴン」は、これまでロシアの「プログレス」でも、日本の「こうのとり」でも、ヨーロッパの「欧州補給機」でもできなかった、ISSからの物資の回収(地上への輸送)ができる仕様になっている。これまでISSから地上への輸送は、ロシアのソユーズで帰ってくる際に一人60kg持って帰れるだけだったので、格段に多くの荷物を持ち帰れるようになる。
米国のロケット開発が頓挫している間は、日本のH2AロケットによるHTVが大きめの荷物を運ぶ、唯一と言っていい手段だった。そのため「NASAが日本のロケットを買うかも」という噂が出たりしていた。米国内で調達できる見通しが立ったことで、米国はほっとしているだろう。ちょっと残念な気もするけど、日本は日本で実績を積み重ねていけばいいや。
↓このメアド欄はセキュリティが低そうなので、書かない方が無難です↓