
5月20日(日)午後3時半から、全国医師連盟(全医連)のやわらか企画、「医療+ハーブ」セミナーが開かれました。1月29日に開かれた
第二弾「医療+色」に続く、第三回目です。

昼過ぎに茅野駅から中央線特急「あずさ」に乗って、行ってきました。片道3時間弱。

会場は1月と同じ、有楽町電気ビル南館2階の「リエイ」でした。

「有楽町電気ビル」と表記してあることが多いビルですが、近寄るといつも気になるのが「有楽町電気ビルヂング」の文字。多分こちらが正式名称なのでしょうが、“ビルヂング”とは相当歴史のある建物なのかなと思ったり。

今日のチラシです。講師は日本メディカルハーブ協会理事の、入谷栄一先生です。

まずはじめに、今回の企画の主催者である「全国医師連盟」の代表理事、中島恒夫先生からご挨拶。中島先生は、私が働いている病院からすぐ近くの病院の副院長です。

今日の講師の入谷先生です。暗い会場で逆光だったので、後ろにピントが合ってしまいました。すみません。
今日来る前には、どのような先生なのか、ちょっと不安でした。医学部で医学を学んだ医師だということはわかったものの、西洋医学をちゃんとやらずにハーブに傾倒していったとか、お金儲けが目的で普通の医療と違うことに手を出してみたとかいう「話が通じないニセモノだったらどうしよう」という不安でした。でもそのような心配は、全くの杞憂でした。
在宅医療をやっているという情報も得ていましたが、それも「なんちゃって在宅医」だったらどうしようなんて失礼なことを思っていました。これも全くの見当外れな心配で、とても真っ当で勤勉でバランス能力があってちゃんと働いていて、しかも柔軟な頭を持っているお医者さんでした。聞きに行って良かった。
講演では、まず最初に自己紹介をされました。女子医大でがんと免疫の関係の研究をしたり、日本初のハーブ専門外来を開いたり、日扇会第一病院で在宅医療を担ったりしているということでした。今の仕事の中心はこの在宅医療で、講演の後の懇親会で話を伺ったら、24時間365日いつでも呼ばれる可能性があって、在宅患者さん90人を受け持っているということで、以前の私みたい。今の私よりよっぽど働き者の先生でした。
在宅医療では、病院医療で使える手段だけでは追いつかないところがあり、使えるもので良さそうなものは何でも使う。その一つとしてハーブを使っているが、エビデンス(学術的な証拠)がしっかりしていて、即効性よりも長期的に期待した効果が得られそうで、安全性の高いものを選択して使用しているということでした。
以前は「鍼」もやっていたそうですが、専門家ではないので、今は刺さないで鍼と同じような効果が出る道具を使っているとのことでした。私も祖父や父が鍼の名人で、回りに鍼師がたくさんいたので、鍼の効果は実感でわかります。
西洋医学一辺倒の医師の中には、補完代替医療は全部思い込み(プラシーボ効果)だと決めつける人もいますが、西洋医学が治療に適している病気はたくさんありますが、西洋医学では治療満足度が低かったり薬貢献度が低かったりする病気もあります。そのような部分に対して上手にハーブを使っていくことで、楽に過ごしていただけたり、満足度を高めたりすることができる。そのためにハーブを使用しているという考えは、私の診療スタイルに近いものを感じました。
私が専門としている「緩和ケア」ですが、緩和ケアというと「積極的なことはしてくれないところ」というイメージが、患者さんやご家族だけでなく、医療従事者の中にもまだあったりします。昔はそういうことを言われると「こんなに一所懸命やってるのに何故そういうことを」と思ったりしましたが、最近は「そういうイメージを持たれる方が多いんですが、私は逆に『良さそうなことは積極的に何でもやる』姿勢で緩和ケアをしています」と説明するようにしています。
その後、具体的なハーブの使い方に話は進みました。全部はとても書けないので、内容を箇条書き。
・ハーブというのは「生活に役立つ香りのある植物」
・トマトのリコピンとか、二次代謝産物(フィトケミカル)の研究が進んでいる
・免疫力を高めることが重要なのではなくて、バランスを整えることが重要
(自己免疫疾患や花粉症などは、免疫の過剰反応で起きる)
・ハーブティーの淹れ方のコツ
・チンキ剤(エキス)、カプセルもある
・風邪−エキナセア
→効果がないという報告が出たが、詳しく見ると有意差は出なかったが差はある
→使わないよりは使った方がいい場合もあると考える
・パッションフラワーとバレリアン−眠れない時に使えることがある
・高血圧−薬で取り除きにくいストレスなどを和らげて改善した例
→これにはリンデン(菩提樹)が効果があった
・膀胱炎−クランベリー
→(これは、特に管で尿を取っていて詰まりやすい人に有効と聞いたことがある)
100%ジュース3mlぐらいを薄めて1回に飲む
・うつの初期−セントジョーンズワート
→エビデンスレベルA(信頼できるデータが多くある)
・微量元素の不足−ネトル
・認知症−イチョウ
→加工が必要なので、そのへんのイチョウの葉を拾ってきてもだめ
日本では認可されていないが、世界35カ国では薬として認可(EGb761)
このような知識を駆使して、西洋医学では弱いところに適したハーブがあればそれを使っていくことで、患者さんやご家族の満足が増えるのであれば、その方が良いと思うというお話でした。
話を聞いていて、入谷先生は「納得できる」ことを大事にしていそうな先生だなと思いました。それは患者さんやご家族が納得できるということだけでなく、入谷先生自身が納得できるという意味合いもありそうに思いました。そのための手段や、説明の仕方をたくさん持っている先生でした。

会場には20名ほどの人が集まって、熱心に話を聞き、終わった後は質問が次から次へと続きました。入谷先生は、正確に答えられないところはそのようにことわりながら、真摯にわかりやすく質問に答えて下さいました。

会が終わった後は、すぐ近くのお店に移動して懇親会。10名ほどが残って参加しました。隣の席には5年ぶりぐらいに会った山梨大学(私がいた頃は山梨医科大学)の後輩、その周囲に楽しい人がいっぱいで、斜め前に入谷先生が座っているという配置。
入谷先生と話をしてみると、冒頭に書いたように24時間365日体制で在宅を担っていること、その中で「良さそうなことは何でもやる」という姿勢に基づいてハーブを使っていること、その他にも(科学的には証明できなくても)良い結果が得られるものは否定しないで利用する柔軟性を持つことなど、共感できる診療姿勢をたくさん持っている先生だということがわかりました。在宅ケア、特に在宅終末期ケアの大変さなど、共通の話題もたくさんあって、楽しい時間を過ごさせていただきました。
だいたい2か月に1回ぐらい、このようなイベントを全国医師連盟は続けて行く予定です。興味のある方は、どなたでも参加できます。次回は7月に「子育て+医療」というテーマで開催予定です。詳しいことは
全国医師連盟のホームページで告知されると思います。このブログでも、忘れてなければ告知したいと思います。
行って良かった。
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